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魔王

「やはり、おまえさんは魔王だったか」

 ダラが誓いをたて、明日のために眠りに戻ると、ロクザン翁が待ってましたと食いつくようにそう言った。

「ただの邪霊だよ」

「うそつけ。台地の魔王の同類だろうが。あれと違って話が通じるからずいぶんましだが」

 ロクザン翁は魔物の王と話をしようとしたことがあるのだろうか。

「直接はないな。うっかり近づくと食われそうだったしな。何度か幽霊をいじった使いを出しただけだ。全部食われて帰ってこなかったがな」

 それはともかく、台地の彼女は魔王枠なんだな。確かに駄女神がそのために呼んで、怪物化してたので無責任に放ってしまったけど。

「それはともかく、ロクザンは魔王にくわしいのか」

「まあのう。わしの先達たちは魔王の死人使いに対処するために研究を始めておるからの。準公爵領、いやいまは侯爵領か。あそこの連中が台地の魔王の配下に致命傷を受けた仲間にどうするか知っとるかね? 知っとるよな。あれもその学びの一つじゃ」

 ロクザン翁はそこから逸脱してその力そのものの研究に走ったということかな。やっぱりいかれた人だ。

 だが、駄女神の説明はこの辺が足りてない。たぶん、いきなり強い勢はどうやってかわからないが最初から知ってるんだろう。だから省いた。だが、最初は弱いから始めた俺はそんなこと知りようもなかった。

「もしかして、魂の付与も魔王ならできるのか」

「魔王のくせにしらんのか」

「恥ずかしいことに。その辺教えてくれると助かる」

「なら、おぬし、わしの弟子になるか」

 弟子ってあの三匹の邪精霊みたいな?

「あれは助手でもあるからの。わしの提案は共同研究者としてじゃ。おぬしはわしの研究に協力する。わしはおぬしに教えられることを教える。わしなら侯爵領の中も歩き回れるし、書物の取り寄せもできる」

「え、ロクザン、死んでるんじゃ」

「死んではおらんぞ。肉体はいきとる。死にかけの老人ということで寝たっきりにして世話は人任せになっているがの」

 つまり、今目の前にいるのは生霊というやつらしい。

「こっちが本体なのは本当だが、生きた体と身分はやっぱり便利でな」

 余裕があるとは思えない侯爵領でそんな待遇が許されるということは、というか、いま身分っていったな。

「もしかして、ロクザンって結構エライひと? 」

「まあのう。島流しの身ではあるがな」

 そのへんの事情もちょっと気になるが、今はおいておこう。

「弟子になった場合、何を変えるのかね」

「わしがちょくちょくお主のとこに来るが拒まんでくれよってくらいだね。やってほしいことを整理してからになるが、助手のどれかを使いに出すのでいきなりはないと思ってくれてよい。成果は共有しよよう。それと、調べものの依頼も受け付けよう。時間はもらうがな」

 悪い話しじゃないな。

「魔法かなにかで拘束はしないんだな」

「そんな便利な魔法はなかったと思うぞ。あっても面倒になるだけじゃな。あくまでお互いの利のための約束よ」

 そういうことなら。

「わかった。魔王タケトは死霊術師ロクザンの弟子となろう」

「歓迎するぞ、わが弟子よ。魔王を弟子にする日がくるとは実におもしろいわい」


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