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邪霊

「あれ、オラ…」

 戸惑いの言葉が彼女の第一声だった。

「夢でも見ていたような気がする。オラ、死んだと思った。けど」

 家の中を見回して言葉がまた途切れる。

「夢じゃ、なかっただか」

 彼女は俺に問うている。

「夢ではない。ダラ、君を呼び出したのは俺だ。これまでのことを覚えているんだね」

「あの人間を呼び出したのもおまえさまかい。言葉を話せる人間さん」

「そうだ」

「なら、おまえさまは人間ではない。兄さを手にかけた台地の邪霊の仲間だ」

「そうだな。樫鬼は邪霊と呼び、小鬼は魔王と呼ぶものだと思う」

「そこのふわふわ浮いてる人間もおまえさまが? 」

 ロクザン翁のことだ。

「いや、これはダラに魂を与えてくれたなんとかの探究者、死霊術師のロクザン翁だ。彼も人間はやめているけどね」

「人間がおおくって落ち着かね」

 なんかご挨拶もらってるが、彼女の集落がどんな目にあったのか考えれば無理もないことではある。

「ほほう、急にいろいろ言うようになったのう」

 そのロクザン翁は目を輝かせている。

「言っちゃわるいだべか」

「さっきまで、あんたはずいぶん無口だった。うまくいったようでわしもうれしいぞ」

 ダラはじとっと爺さんをにらんだ。

「なんか気味悪いだ」

「それで、あんたはこれからどうするのかね。いままではここにいるタケトの世話なんどさせられていたわけだがね」

「そうだなあ」

 彼女は自分のこめかみを軽くたたいた。思案のしぐさなのか、癖なのか。

「タケトさま。あんた、うちの村の人間を兄さみたいに呼び出せるのかい」

 まあ、何人か廃村の幽霊の名前をあげて、二人までだというと、彼女ははーっと大きく息を吐いた。

「邪霊って何百も眷属呼び出して使役するって聞いてたけどたったそんだけかね」

「今のとこ、すごく弱いんだよ。いきなり強いとおかしくなって台地のやつみたいなことをおっぱじめたかもしれないしな」

「で、強くなる予定かい」

「うむ」

 じっくり、のつもりだったがそんな余裕はないかもしれない。

「だば、こうしようかいね。いつか、村の連中を同じように生き返してくれろ。その約束で今まで通りお前様の下働きでもなんでもやっだ」

 それはまぁ願ってもないことだ。

「オラ、コケモモ村のダラはその約束の上で邪霊タクトさまに忠誠を誓うだ。そしておまえさまがいつかただの邪霊ではなく、自然の王となることを願うだよ」

 それは期待されたものだな。

 ただ、駄女神にたのまれたときより責任の重さを感じる言葉だった。

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