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還魂

 彼はあの墓場から離れないと思っていた。

 とんだ思い込みだったのかもしれない。

「樫鬼の廃村にいったら、人間どもが何やら調べておってな。討伐されてしまったかと思ったぞ」

 やっぱり人間たちはあそこまできたのか。危ないところだった。

「それで、わざわざおいでになったのはなぜ? 」

「ちょっとした実験につきあってくれというたであろうが。なかなか返事しにこんからわしのほうから出向いたのじゃ」

 ああ、そんなこと言ってたかもな。でもあれからそんなに……あ、四十日くらいたってる。

「そいつはご足労かけました。廃村で見た通り、侯爵領の手が伸びそうなのでここに逃げてきたので」

「あの時の男の樫鬼はどこにいるかね。彼で試したいことがあったのだが」

 もうこの爺さん実験のことしか頭にない。俺、まだ返事してないぞ。

 ダイが台地の魔物の王の手先にやられてしまったことを正直に教えると、爺さん少しがっかりしたがすぐに立ち直った。

「ではそこの女の樫鬼でよい。実験してよいか」

「どんな実験を? 」

 爺さん、この質問をしてほしかったのかにんやり笑いやがった。

「魂をな、いれてみようと思うのじゃよ」

「魂? 」

 俺の生まれたとこでは伝説の存在だよな。末期の人の体重の微妙な変化をして魂の重量なんていってたんだっけ。

「専門用語でいうと長いうえにさっぱりわからんと思うから俗説で使う名前を使っただけじゃ。おまえさんのこのしもべたちは実にびっくりするほどよく死者を再現しておる。だが、足らないものがある。だから習い覚えたことは繰り返せても、自主的に工夫したり考えることはないし、おそらく維持にはおぬしの魔力を少しばかり食い続けておるだろう。魔王どもの中には、あやつりやすいということでこういう死者の軍団を作ったものもおった。昨日までの友人、家族が襲ってくるのはなかなかの恐怖だでな」

 それは確かに悪趣味だな。

「それで、魂をいれるとどうなるんだ」

「精神の自律性が回復する。言われたまま、習い覚えたことだけするのではなく学習することができるようになる。まあ、つまり意志が宿るわけだな。わしは強い幽霊をいじって魂をいれ、手下を作ることができる。できるが、所詮は幽霊だ。強いができぬことも多い。しかしおぬしのしもべには体がある。面白いことになると思わぬか」

「それはつまり、死者が蘇生することになると? 」

「魂の働きが生前と同じになる保証はないから、同一人物とは少し違う。おそらく人が変わったようになるであろう。それと、自由意志を持つようになれば逆らうようになる恐れもある。ただ、維持コストはもういらなくなるであろうて」

 今の、命令をもくもくとこなすだけではなくなるという意味では、ダラがどうなるかは心配だ。しかし、兵士のほうは強い分それはちょっと避けるべきだろうな。

 だが、ダラには世話になった。もし彼女が好きなようにしたいことがあるなら、そうさせてやってもいいと思う。

「人が変わるといったが、どうなるかは調整できないのかい」

「無理じゃな。正直こればかりは賽の目次第じゃで」

 ううん、心配だな。たぶん、あんまりいい結果にはならないんだろう。

 だが、この実験にはロクザン翁ではないが興味がわいてきた。

「やってくれ」

 最悪の結果になると決めつけておけば、悪くはならないさ。


 

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