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人の魔物

 人間たちがこの廃村にくる心配はない。

 まず俺が思ったのはそのことだ。

 なぜなら、人間たちは何人かのけが人を出していたから。手当のためなら、人里にもどったほうが早いし確実だ。仲間の命を大事にするなら絶対こないだろう。

 人間たちは全部で十人。リーダーらしいかざり羽根つきの兜の一人の他は似たような革製のプロテクターを身に着け、槍や斧、剣に盾で武装している。

 けが人が出ている通り、彼らは戦った後だった。彼らの前には真っ黒い毛皮をまきつけ、硬そうな木に石の刃を埋めた原始的な武器をもった「人間」が四人倒れている。ぴくりとも動かないし、首などがおかしな向きになってる者もいるのでおそらく死んでいる。

 身なりが身なりなので、人間に似た異種族かとも思ったが、一人の毛皮がひんむかれ、顔がさらけだされているのを見ると人間としか思えない。首実検をしている人間はなにやら嘆いているようで、おそらく知ってる人間なのだろう。

 何がおきたかわからないが、それ以上は何もわかりそうになかったので偵察はそこまでにした。

 その日は後片付けに専心しよう。そして明日にでも出発しよう。

 ダイとダラは黙々と働いている。時折、生前の習慣通りに兄妹で軽口をたたいている。彼らを見ていて、俺は一つ思い至った。

 魔物の王も俺とおなじ権能をもっている。ダイもダラも召喚したときは下着だけの姿だった。このへんは心理に基づく何かがあるのだろうけど、人間でもきっと同じだろう。それでは戦力にならないから、用意できるものを与えるしかない。黒い毛皮をまとって石器で武装したあの連中は、魔物の王が取り込み、召喚した人間なのだ。もともとは準公爵領の住人だったなら、知り合いくらい討伐隊にいてもおかしくはない。

「きついだろうな」

 取り込んだ一人、兵士はあのような再会がないように仲間にとどめをさされた。死んで魔物の王の手先になるのはきっと本人にもつらいことだ。兵士も自分の番になるまでそう思ってた節がある。かつての友が死んだ目でおそってくるのは恐怖だろう。

 ダイやダラの知り合いが生きていたなら、俺のやってることも同じに思われるのは間違いない。

 彼らにはお面でもかぶせるようにしたほうがいいかもしれないな。

 その夜は、それでも不安で葉擦れの音にさえびくびくしながらあまり寝られない夜をすごした。

 眠い目をこすって、俺は最初の居心地のいいささやかな魔王城を放棄した。


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