二十九話
十万記念。
いつの間にか水曜だったので焦りました。予約忘れた。
二十九話
「は」
朽木は、その報せを遠征先のフィリピンの現場で聞いた。
「…ああえ…?」
辛うじて喉を動かそうとするが、声とも言えない聞くに堪えない音が出ただけだった。
「ん…」
隣に座るマユも、朽木を宥める余裕はない。捻りだした台詞が、
「…合成か?」
「馬鹿な…。本部からの映像ですよ…」
タブレット端末を前に凝り固まってしまった朽木と、声をかけあぐねるマユ。数秒逡巡した後、「リーさんに知らせてきます!」とその場を逃げた。
朽木は残されてもなお、目の前の映像に乗せられた情報を咀嚼するために立ち止まり続けた。
「これが、東京…?」
「はぁ…」
美誠は、父親不在の香坂家にて深い溜息をついた。
「怜於…お父さん…」
この一週間で、美誠の置かれた状況は大きく変わった。
まさに十年近く会っていなかった怜於との、奇跡の邂逅。
大黒柱たる父親と“橘”との関係が分かった翌日から、彼とは音信不通。
そして液晶越しに映る惨状。
「お母さん、これからどうしようね?田舎に引っ越す?」
「…だめよ、ここはわたしのおうちだから」
「うーん…」
主要都市、要衝の悉くが攻撃を受けていることを考えると、ここ中京地域も危ないだろう。今日明日、この家に爆撃があったとしても決して不思議ではないのだ。
「ほらお母さん、テレビ見て。この家もこんな風になっちゃうかもしれないんだよ…」
「…誰のいんぼう?」
「陰謀って…それは“橘”…」
皆まで言ってしまうと、同時に自分の父を貶すことになりそうだった。
「ふーん…」
「…どうしようかなぁ…」
父との連絡が取れなくなった今、頼れるのは己の身のみ。
通帳を取り出し、思索に耽る。
「…ん、ここは?」
「お目覚めですか」
「ぅわ⁉」
文字通り飛び起きた。神田は人生で初めて“飛び起きる”ことを経験した。
「なんでいるの月島…?」
普段と違う天井、寝た時の記憶と違うベッド、いつもは寝室に一人なのに月島の声が聞こえる。
「ここはどこ…?」
「陸奥です」
「は?」
月島はレンジの操作をしながら、のんびりと説明する。「倫成様が寝ている間に寝台車でお送りしました。暫く学校は休みですね」
「いや学校はいいんだけど…なんで?」
急いで窓の外を見る。
…いつもと違う、ということしか分からない。
あと、田舎っぽいことだけ。
急いでテレビをつける。
ニュースの内容は例の襲撃で固定されているが、いつもとスタジオの雰囲気が違う。
「紛れもなく、秋田別邸でございます」
「え、秋田にも別邸があったの…?」
「ええ、隠密にですが」
隠密に、と言われた方がしっくり来る。
神田家別邸と言うには、かなり狭い。
「…じゃ、暫くここに滞在っていう認識で合ってる?」
「当たらずとも遠からず、でしょうね」
歌うように月島は答えた。周到なことで、早朝食の支度を済ませたらしい。
「所長、ここに来てから。ずっと顔見せないんですよ」
「え、来てたのか…」
日本にある“S”の大規模研究拠点の一つ。施錠された一室の前で外国人研究員が話している。
「五、六時間はこの部屋に引きこもってますよ。証言は揃ってます」
「しょーもな。仕事しろよ」
「あの人、折角大阪から脱出してきたのにまだ日本に留まってるんですよ。早く安全な海外に脱出すればいいのに」
「…無理だろ、大体の空港が“タチバナ”に目をつけられているらしいし」
「“S”の飛行機を使えば…」
「馬鹿。それこそ目をつけられて墜とされる」
「そうか…」
「でも、だとしたら何たって部屋に籠ってるんだ?大阪で群衆にあてられたのか?」
「そんな馬鹿な。所長に限ってそんなことあり得ないだろ」
コソコソ話していると、その部屋が突如として開いた。
「ん!」
「何してんだお前ら」
「は、早く仕事に戻ります!」
「ちょい待てよ」
部屋から出てきたアルバートは肩を回し、手首を回してポキポキ音を立てた。
「ここの電話持ってこい。んで、実行部の連中と連絡ルートを確保しておけ」
「…もう腕大丈夫なの?」
怜於はさり気なく訊いた。が、かえって上ずった声になったことに自分では気付かない。晴海は笑って、
「私はもう大丈夫。包帯も傷口塞いでただけだし」
「部活は?」
「腕が使えない間は走り込みに集中してたし。お陰で足は鍛えられたよ」
「…なら良かった」
「私より廻の方が心配だけど。廻はどうしたの?…あ、ごめん。言いたくなかったら良いけど」
怜於は慌てて表情を解した。思わず表情が凍り付いてしまっていたのか。
「いや、言うよ。…大阪でさ」
皆まで言わせぬままに、晴海が怜於を遮った。何か悪いこと言ったか、と一瞬慌てたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
耳を澄ます。までもない、腹の底に響いてきた轟音。耳の奥が殴りつけられたような衝撃。心なしか、地面が揺らいだような。
「…怜於、これ何?」
「…こんな昼間から花火大会かな」
「そんな…だとしたら凄く近い場所だけど」
晴海は足を止め、周りを見回す。怜於もそれに追随する。
「…あれ」
「ま、まさか」
見覚えのある光景。
だが、“ここ”では起きていてはならない光景だ。
見慣れた光景は崩れ落ち、瓦礫の海と化していた。ところどころ残った建物の残骸が痛々しい。
「…これは」
「攻撃、かな」
晴海はまだ状況を理解できていないようで、立ち尽くしている。
「に、逃げよう!」
晴海の手を取り、とりあえず瓦礫の山から離れる。
「頑丈な建物…!」
周りを見回すが、そう都合よく頑丈な建物が見つかる筈がない。そもそも、ここはさして大きくない駅前。地下室を持つ建物など少数派だろう。
「あ、あそこの建物…地下あるよ」
ここに来て自我を取り戻した晴海が、空いている左手で指差す。
怜於は、今更ながら自分がやった事に気付いた。慌てて手を離す。自分は反射でなんということをしていたのだろう。手を取って走るとか、気障にも程があるよな…。
「ご、ごめん」
唐突な謝罪に晴海は一瞬キョトンとした表情を見せたが、またすぐに走り始めた。
「ほら、あそこ!確か地下フロアがあったはず!」
爆撃の音色をBGMに逃げる。あぁ、良い画になってるだろうなと馬鹿なことを考えながら辿り着いたのは小さな建物。一階建ての、つまらなそうな建物だ。
「え、ここ?」
思わず真顔になって訊いた。
「そう!地下に繋がってるの、見たことある」
「詳しい…ね」
シャッターを無遠慮に開ける晴海に戸惑うが、背後で聞こえる悲鳴に、腹が据わった。
「ほら!早く行こう!」
シャッターの中は薄暗い。が、晴海が扉を開けると、微かな明かりがそこから差し込んできた。が、扉の先も薄暗く、周りに生した苔と不気味に反響する足音に、怜於の足は竦む。
「ここから下るの」
「え…」
駆け足で階段を下っていく音だけが遠ざかっていき、怜於も慌てて後を追った。轟音は遠ざかっていった。
中途半端な話数で十万いったのは置いておいて。
序盤のレベルなんだよなぁ…まだ。どしよ。
これと大学受験、どっちが早く終わるかな。という感じ。どしよ。
いつか時間できたら最初の方の話、改善していきたい。という願望はある。なお、時間が出来る見込みは無し。
投稿頻度も上げようかな…どうしようかな…。
でも、千文字くらいで話を切る技量は無いんだよなぁ…。どしよ。




