お嬢様が天才的にかわいすぎて侍女は惚れました
今日は私の初出勤の日です。
空はどんよりとした灰色の雲に覆われ、大粒の雨が額を打ちます。雷が鳴り響き、持っている傘は今にも飛ばされそうです。
そんな中、私は元気に今日から職場となる「呪姫」の屋敷へと向かいます。
今日から私がつかえるのは国王と王妃の間に生まれた第一王女です。黒髪黒眼の呪いを得意とする方らしいです。現在は5歳のようです。
私も噂でしか姫様の存在を知らず、実際に存在するのかすら怪しいと言われている方です。
今日から謎多き麗し(仮)の姫様にお仕えできるなんと私はなんて幸運なのでしょう。
そうこうしているうちに屋敷が見えてきました。
元気なツタが巻き付いたとてもお洒落な門を潜るとそこだけ晴れていて、黒一色の美しい花畑の中、とりわけ美しい黒の髪を持つ幼女がいました。きっと姫様です。
姫様は茶色の髪を箱から取り出すとその髪を壺の中に入れ、その後腐った土、卵などを壺の中に入れると壺に蓋をし、呪文を唱えました。
すると姫様は辺りを見まわし、私の方を睨んできます。
きっと私がきたことに気づき、挨拶をしろということでしょう。
初めの印象は大事とお母様もおっしゃっていたのでできるだけ人当たりの良さそうな笑みを作り、姫様の方へと歩み始めます。
「ねえ。あなたはだあれ?
なんで私の屋敷に入れたの?」
ああ近くで見ると尚愛くるしいです。そしてお美しい。私は思わず
「姫様!愛しております‼︎」
と言ってしまいました。そうする予定はなかったのですが口が勝手に動いたのです。
姫様もびっくりしたのか可愛らしいお口をあんぐりと開けて固まっていらっしゃいます。
しばらくすると硬直状態がとけ、先ほどのあんぐりとした可愛らしい顔からいつもの可愛らしい顔に戻りました。
「まず、私の質問に答えてくれるかしら?」
ああどこまでも美しい姫様です。声もまた美しい!
ですが2度も失敗するのはいけないので私は頭をフル回転して話さなければ。
「私の名はメリーと申します。
今日から姫様におつかえするよう国王からのご達しで死ぬまで姫様と共に地獄へも地の果てへも共にに参りましょう。」
とてもまともな挨拶です。最後少しテンションが上がってしまいましたが許容範囲ないでしょう。
「あなたはどうして私の屋敷へ入れたの?」
鍵がかかっていたのでしょうか?
それは大変です。私、少しばかり他の人より力が強いのです。だから今までも備品を壊してしまい、よくクビにされていました。今回もでしょうか。
「私の力で鍵を壊してしまったかもしれないです。ど、どうしましょう。働き始めて早々姫様のものを壊してしまいました…」
「鍵などかかっていないわ。
この屋敷の門を潜るとその人が呪われるはずなのだけど…。
あなたなんで死んでないの?」
「ええっ⁉︎
そんな危険な呪いがあの門についてるのですか?
危ないです。早くこの屋敷から逃げなければ!姫様!体に異常はありませんか?」
「私が聞きたいわ。あなた体に異常はない?
私は私がかけた呪いだから呪われることはないから大丈夫よ。」
「姫様はそんなすごいことができるのですね!尊敬します!」
「私の質問に答えなさい。
あなた体に異常はない?」
「大丈夫です。」
姫様に心配されるなんてもう感激です。
「ふぅん。」
姫様何か考え込んでいらっしゃいます。
そんな姫様も好き!
***
皆様ごきげんよう。
呪姫です。
前世では歴史だけが長い国の第三王女でした。
私は前世では同じ世界線の「忘れられし精霊の住む国」の第三王女としてこの世に生まれました。
子供に甘い父と躾には厳しかったけど慈悲深い母、負けん気の強く、しかし聡明な第一王女の姉、無邪気で国一番の精霊使いの第二王女の姉、弱虫で臆病だけど誰よりも優しい第一王子の弟がいるとても暖かい家族のもとで私はのびのびと成長しました。
私の生まれた国は国外との接触をできるだけ無くしたいわゆる鎖国状態の謎に包まれた国でした。
それは精霊の力と並外れた頭の良さがあったからこそできたことです。
しかしある日、魔王国軍が我が国に攻めてきました。
このようなことは過去にもたくさんあったのですが精霊の力と頭の良さで追い払っておりました。
しかしなぜ今まで一度も攻めてくることのなかった魔王国は今攻めてきたのだろうと思いました。とにかくまたいつものように追い払えばいいと皆考えていました。
しかし我が国は呆気なく魔王国に敗れてしまいました。
そして、国はいらないから代わりにありったけの食料と、捕虜として私、それから私の父、国王の首を求めました。
最初、家族は私を捕虜として連れて行くことに猛反対してくれました。
しかし魔王は「子供一人なだけありがたいと思え」と言いました。
私の一番目姉は将来の女王ですし、二番目の姉は精霊使いでこの国になくてはならない存在です。弟はまだ幼いので私が行くしか道はありません。
私は魔王国で捕虜として生きることを決めました。
私は魔王に「私が行くからどうか父の命だけは助けてくれないだろうか」と懇願しました。その甲斐あって私の父は右手と左足を切り落とすだけで済みました。
そして戦争が終わってちょうど10ヶ月後私は魔王国に旅立ちました。
私はそこで捕虜としてでは受けることのない高待遇をうけました。
それもそのはずです。私は魔王の4人目の側室として迎えられたのですから。
魔王がまだハイスペックイケメンだと許せたのですが魔王はもう直ぐ寿命が来るヨボヨボのエロジジイでした。王妃様ももう200は超えていてそろそろ寿命です。(魔族の寿命は長く、人間の倍以上生きるのです)
そのエロじじ…ではなく、魔王は側室になるのを嫌がる幼女(8歳)に心惹かれ、もうすぐ死ぬヨボヨボじじいはまさかの幼女趣味に目覚めました。
元々魔王はイヤイヤする人が好きで側室の4人のうち私を入れて2人が人間です。(人間は寿命が短いので今残ってる人間が一人だけっていうだけですが)
魔族は圧倒的力の前にはひれ伏すので人間はとても愉快な生き物だとでも思ったのでしょう。
しかし無理矢理される側からしたらたまったもんじゃありません。
とにかく私は、13で妊娠しました。
その頃私は寵妃でした。すると私の前に寵妃だった人に毒を盛られました。
このまま行くと元寵妃の息子が王位を手にしますが今、寵妃なのは私です。もしそれで私の子が無事に産まれて無事に育って、魔王に可愛がられたら何があるかわかりません。もしかしら自分の息子が王位を手にすることもないかもしれないのです。
元寵妃は手段を選ばないくらい追い詰められていたのです。
私は毒の盛られたスープを飲みました。
銀の器が変色していましたが私は特に気にすることもなく完食してしまいました。
そして気がついたら悲しそうな顔をした女の人と男の人がいました。それが今のお母様とお父様です。
私はまず目を抉られかけました。お母様が止めてくれてどうにか私は今も花を愛でることができます。そして髪は全て剃られました。
それからお母様がやっぱり無理と言って私は殺されかけましたが今度はお父様が止めてくれました。
その後私は呪いの勉強しか教えてもらえませんでした。
そして呪いの勉強が終わった3歳の時に私の人生が180度変わりました。
妹が産まれたのです。そのことにより私は完全に必要のない存在になりました。
そして私は3歳までは王城で過ごしていましたが4歳の誕生日に今も住んでいる郊外の屋敷に移り住みました。
そこでは使用人は一人も居ず、2週間に一度食材などや日用品を持ってきてくれる喋らない黒い人が来るだけでした。何を聞いても答えてくれないし、人形みたいな毎回違う人が来るのです。そしてその人たちは私の呪いの門を通っても平気なようで不思議です。何回か不法侵入者が居たので正常に作動してるのは間違いないのでおかしな話です。
5歳になった時、今まで一度もなかったお父様からの手紙がありました。
呪姫へ
明日侍女を送る。好きに使え。
酷い内容ですね。
でも私は侍女という言葉にすごくワクワクしました。
何せ1年ぶりにまともに話せる人が来るかもしれないからです。
実際に来た侍女は想像以上にワクワクさせてくれました。
一部の人しか持つことが許されない白い髪を一つに束ねた彼女はとても綺麗でした。
そして面白いことに私の呪いが全くもって効かないのです。
私の呪いが効かないのは私に食べ物を持ってくるしゃべらない黒い人だけです。
黒い人に実験するわけにはいかないので困っていたのです。
でも好きに使えということなので遠慮なくバラバラにします。
***
姫様はその後あなたの部屋をまだ用意できていないからとりあえず屋敷の2階の部屋を適当に使ってちょうだい。
姫様好き
姫様イケボで最高