77.決断
――ミシッ
僅かな空間の亀裂。
「リアナ!? なにそれ!?」「!?」
目の前の空間がガラスのように割れ、その隙間から視線を感じる。
「ああ、やっと見つけた......国中捜し回ったけど、どこにも居なかったからさぁ、レイを追いかけて魔界にでも行ったかと思ったぜ」
――私は剣を抜いた。それと同時に、皆も武器を構える。
特定の花と魔石を使い、扉と定めた場所からしか出入り出来ない神域。それなのに、空間を割ることで道を作るなんて......。
「誰?」
「ん? ああ、そうか......面識はないんだった。 よっと」
バキィッン!!
空間の破れ目から出てきたのは、黒い着物をきた一人の男。
「俺の名はツクヨミ。 よろしく」
「なっ!?」「!!?」「え......」
ツクヨミって、王直属の......?
「ははっ、まあそう警戒するなよ。 これは幻影だ......俺の意識を投影しているに過ぎないし、戦う力もない。 その証拠に俺からはたいしたオーラを感じないだろう?」
確かに、一見すると一般人が纏うオーラ量。おそらくは幻影を作っている魔力しか保有していないんだろう。
けれどなぜ......ここに。
その疑問はフェイルが先に問いかけた。
「......なぜあなたがここにいるの......?」
「んー? そりゃ決まってるさ」
彼が不敵に笑みを浮かべる。
「リアナ、君に頼みがあってきたんだよ」
「......頼み?」
「そう。 頼み」
にこにこと微笑むツクヨミ。この雰囲気、以前どこかで。
「その頼みっていうのは、具体的になんですか?」
「うん。 この場で全てを話すことは出来ないんだけれど、レイの居場所についての頼みだ」
レイの!?
「魔界にいるんだろ?」
アトラの言葉にツクヨミはうなずいた。
「そう、魔界にいる。 しかし君らは彼が魔界のどこにいるかを知っているかい?」
「いや。 しかしその口ぶりだとおまえは知っているということか」
「ああ、そうさ。 我々は彼の居場所を突き止めた。 お察しの通り、今はまだ教えることはできないがね」
私はきいた。
「頼みというのはなんですか? それがレイの居場所を教えてくれる条件なんですよね?」
「話が早くて助かるね。 そう。 そしてその条件は......なに、簡単な事さ。 王城へ来てもらってある男と話をしてもらうだけだ」
ある男......カノンさん?
「話を? 私と?」
「詳しいことは知らないが、彼は君に興味があるらしい。 だから、少しだけでもいい。 会ってみてくれないか?」
その会って欲しいという人がカノンさんだとすれば、話を聞きにいく価値はあるかもしれない。
ただ、この場では踏み込めない......相手が黒の騎士団の長であるカノンさんだとすれば、アトラやフェイルさん、ヒメノさんに止められるだろう。
だからこそ、ツクヨミは誰かを明かさない。
――罠であり、チャンスかもしれない。
行けば確実に、何かしらのレイの情報が得られる。けれど、罠である確率も濃厚。
(......どうする)
目を閉じると、レイの顔が思い浮かぶ。
(......あなたは、一人で魔界を彷徨っているの?)
......ごめん、ノルン。
何もできないのは、やっぱり嫌だ。
「わかりました......私、王城に行きます」
【書籍情報】
KADOKAWA電撃の新文芸様より書籍が発売されました!
眠介先生が描くレイとリアナのカバーイラストが目印です!
電子書籍版、ブックウォーカー様、アニメイト様、ゲーマーズ様で描き下ろしの特典SSがそれぞれ付きます!是非ともご購入くださいー!!
皆様、よろしくお願いします!!




