76.大切な
〜神命教会本部内〜
「フェイルさん!」
「......やあ、久しぶり......」
数年ぶりに会う彼女に、安堵の笑みが浮かぶ。
「......リアナ、元気そうだね......」
「うん! なんとかユグドラシルからも出てこられたし、この通りアトラも元気だよ!」
「ああ、元気だ」
フェイルさんはにこっと微笑んだ。
「......ふふっ、それは良かった......」
その様子を眺めていたヒメノさんが「うん」と頷き、口を開く。
「それじゃあそろそろ会議を始めよーか。 これまでに調査した結果、そこからあたしたちのこれからの行動を決める。 いいかな?」
「はい!」「ああ」「......だね」
――これまでの戦い。レイとフェイルの動きが読まれ、王城へ誘い込まれた。そこでレイ、大聖女、王の三人が消え、魔獣が王都の町に溢れ、黒の騎士団が現れる。
「ノルンの話ではレイが魔界へ飛ばされたらしいが......もしや他の二人も一緒なのか」
アトラが聞く。それにヒメノが答えた。
「いんや、わからんねえ。 ただ同時期に消えたってだけで皆魔界へ封じられたとは限らない。 ってか、裏切り者の王様は殺したって黒の騎士団のカノンが言ってたけど?」
「......奴の言うことは鵜呑みには出来ないだろう」
「む?」
「考えても見ろ。 例え王が国民を裏切り、それを討ち取ったとして、あのタイミングで公表するか?」
「あー、まあ、確かに......余計な混乱を与えちゃうよね。 って、もしかして」
フェイルは、「はっ」とする。
「......あえて人々に不安を抱かせ、混乱させ、まともな思考ができなくした......そして、黒の騎士団という救世主にすがるよう......先導した?」
「可能性は高くないか?」
「まあ、タイミングが色々よすぎるしねえ。 特にあの黒の騎士団にとっては。 魔獣の出現、王都の聖騎士の減少、王の死......これは黒で確定かな」
裏切り者として王を排除、そしておそらくは国の要人や上層部の人間をも抱き込んでいる。
黒の騎士団の目的は国を手中に納めることだった?
......まだ、わからない。
考えこんでいると不意に鼻をくすぐる紅茶の香りが。みれば教徒さんの一人がお茶を運んできてくれていた。
「ありがとうございます」
「いえ」
にこりと微笑む教徒さん。彼女は手際よくみんなに紅茶をさしだす。
「あの、教徒さん」
「はい?」
「ミミラさんやフレイさん、カンナさんはお出かけ中ですか?」
「......あ、いえ」
「私、友達なんです。 三人にお会いする事はできますか?」
せっかくここに来たんだ。皆の顔をみてお話がしたい。
きっと大聖女様がいなくなって不安になっているはず。私もレイがいなくなってその気持ちは痛いくらいわかる。
「友達......そうだったんですか」
「?」
「実は、ミミラ、フレイ、カンナはあの日、大聖女ルーナが消えた日から行方不明なのです」
「......え?」
「それとあと二人が大聖女と一緒だったはずなのですが、皆一向に帰っては来ません」
「そんな......」
ぐらりと心が重くなるような感覚がした。ルーナさんと共に消えたということは、この件に巻き込まれている可能性が高い。
......レイ。ルーナさん......フレイさん、ミミラさん、そしてカンナさん。
捜さなきゃ。
皆、大切な私の人たちだから。
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