74.見えない冠
「どうしましたか、王」
「うん」
儚げな表情を浮かべ、右下へ視線をおとす。
この少年は特に魔族でも、神力を宿すものでもない。
その血統にすら名も無いただの子供。
そんな彼がなぜここへ連れてこられ望まぬ冠をあてがわれたのか......。
「二人はカノンが来る前からの城の守護者だったんだよね」
「ええ、そうです」「はい」
「僕はもう逃げも隠れもしない。 だから、本当の事を教えて欲しい......なんで僕が王様にされたの?」
「......それは、わかりかねます。 私達もそれを聞かされたのは、王が来たばかりの時でしたので」
「そっか。 ツクヨミは?」
「そうですね。 何かしら理由はあるのでしょうけど、私もわかりかねますね。 カノンには?」
「聞いたけど、君が王様を演じてくれれば皆幸せになれる、って」
「皆、ですか」
「あ......でも、そっか。 確かにそうかも......僕を王様に迎えたいと言われたお母様は今までにないくらい笑顔だったし」
彼の肉親は母親が一人。カノンは彼に言ってないようだが、金銭をチラつかせると差し出すように我が子を売ったそうだ。
「王」
「ん、なに? スサノオ」
「貴方様にとって異国であるこの地......もう慣れましたか? 王が元々住んでおられた場所からこちらまではかなりの距離と伺いました......ともすれば生活環境も大きくかわりましょう」
「うん、大丈夫。 皆が良くしてくれるから」
気丈に、気強く振る舞う彼だが、心には負の感情が渦巻いていた。
その負を塞き止めているのは、僅かながらの母親の愛情の記憶。
(日に日に増していく不安定と......今はまだ小さな憎しみ。 カノンは何をしようとしているのでしょう)
私は、このままで良いのだろうか。
カノンが言う平和にこの子は含まれるのか。
あの日、王城が落とされた時、彼は私達三騎士との約束、『市民に危害が及ばぬよう事を運ぶ』というものを簡単に反故にした。
ツクヨミと私は、カノンの力により無事ではあったけれど......彼を信じていても良いのだろうか。
「ツクヨミ」
「はい」
「遊んで!」
「わかりました。 何にいたしましょうかね......」
「この間のやつは?」
「......この間? ああ、幻影鬼ごっこですか。 良いですよ」
「やった! スサノオもやろう」
「すみません、見回りがありますので」
「あ、そっか。 わかった」
微笑み一つが儚く映る。
ツクヨミとアマテラスは......どう、思っているのだろう。
この不安を感じているのは私だけなの?
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