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73.さきゆき

 


「王都が近いのに、このレベルの魔族が普通にいるんですね」

「そだね。 まあ、【黒の騎士団】が定期的に魔物を間引いているみたいだけど、全然足りてないかな〜」


「その【黒の騎士団】というと、王都が魔物に襲撃された時あらわれたっていう」


「うん。 それそれ」


 魔獣に襲われる市民をまるで救世主のように救った騎士団団。聖騎士とは対照的な漆黒の鎧を身に纏い、その実力は上級聖騎士に匹敵するといわれている。


「けど、タイミングが良すぎるよね。 まるで魔獣が現れるのを知っていたみたい」


 ヒメノさんが頭の後ろに手を組みながら言う。彼女はレイの元パーティメンバーらしい。レイを置き去りにした事は許せないけど、今は彼の為に命がけで動いてくれている。


(全然そんな事をするようには見えないけど、人は追い詰められれば抗えない負の力に屈する。 あの日、私が奴隷の仲間を殺されるのをただ見ていたように......)


 なんだか複雑だ。


「どうかしたのか?」


 アトラが心配そうに私に声をかけた。


「ううん。 大丈夫だよ、なんでもない」


「......心配なのはわかるが、レイだからな。 そう簡単にはくたばらないさ。 大丈夫だ」


「まー、ユグドラシルで置き去りにしても生き延びた奴だしね。 どこにいたって死なないでしょ」

「お、お前がそれをいうのか......」

「ん? あっ!! ご、ごめん。 このジョークはちょっとブラック過ぎたわ......あはは」


 ごめんごめん、と手を合わせるヒメノさん。なんだろう、すっごくもやもやする。

 ......お化粧、綺麗だなぁ。


「さて、あるきながら情報交換でもしよっか。 まずはあたしから、王都の内情ね」

「はい、お願いします!」「ああ、頼む」



 ......レイ、ヒメノさんのこと





 好きだったり、しないよね?



 ◆♢◆♢◆♢




 〜王都、王城内〜



 場内を歩く黒い着物の男。満月と紅い花の刺繍が施されたそれは見るものの目を引く。


「早いものだね。 あれからもう二年かぁ」

「そう、ですね」


 男の問いかけに頷く白の着物を纏う女。彼女の心にはあれからずっと答えの出ない疑問が残っていた。


 ――なぜ彼は私を殺さなかったのか。


 力の差は歴然。例えるならば、獅子と兎。猫と鼠。

 彼が躊躇った理由が欠片もわからない。


 あの、悲しそうな瞳には何が映っていたのか。


 ――上の空のまま、王の間に辿り着いた。


 コンコン。


「......ツクヨミとスサノオか。 入れ」


「「失礼します」」


 開かれた扉の向こう。


 新たに王の名を冠する男がいた。


 名をシュンメイ。


 十一歳の人の子。










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