7.水面の光、水底の暗
ルーナが少し頷き、話し始める。
「はい、実は......ご協力して頂きたい事があります」
「協力? それは、なに?」
彼女は少し頷き、僕の目を見据える。
「単刀直入にいうと、神命教会幹部が王家の監獄へ幽閉されているのです。 彼女を助けたいのですが、我々は表立って救出に行くわけにもいかず」
王家の監獄......大監獄『冥暗乃禁』か。
アトラの収監されている所。
......けど、有名な噂ではあったが。本当だったんだな、水面下では『国王』と『大聖女』は対立していたというのは。
しかし、今は都合が良い。
「その監獄は......難攻不落の城とも称される程の物だ。 話の流れから察するに、そこに乗り込めということか? というか捕まったのは『神命教徒の幹部』なんだろう? 表立って動けないと言っていたが、状況的にはもう『国王と神命教徒の対立』になってるだろ」
「いいえ。 あくまで幹部は神命教徒と無関係の罪状で捕らえられました。 あくまで幹部個人の罪......なので、王と神命教徒との対立にはなっていないのです」
ルーナは悲しげな顔で続ける。
「このまま幹部をみすてれば何事も無くこの件は終息します。 しかし、私達には彼女がどうしても必要なのです......まあ、だからこそ国王軍も幹部を捕えたのでしょうけれど。 なので神命教徒としては動けませんが、どうしても彼女を取り戻したい!」
両サイドの教徒も、ウンウンと頷く。
「......あなたの力であれば、かの難攻不落の城も容易に攻略することが出来るはずです。 それに......あなた方も見たでしょう? アーゴン邸でおこなわれている醜悪の所業を」
人の魔族化。アーゴンは王族の血筋、それに王都であれ程の大規模な実験を繰り返していて王サイドが知らないわけがない。
つまり......。
「王は魔族と通じているのです。 ......我々、神命教徒の目的は『世界の清浄化』この国を正常なモノに戻したい......大切な人を魔族に奪われてしまった、あなたも同じでしょう? 世界の清浄化には、大監獄にとらわれている教徒の力が必要なのです、だから」
「なぜそう言い切れるんだ? 王が魔族側に脅されているのかもしれないだろ」
「それは、私がこれまでの歴史において記憶している事実と照らし合わせた結果でそういう結論となりました。 しかしながら証拠がありませんので、あなたが信用されるかどうかはあなた次第です......ですが」
じっと瞳をみつめるルーナ。なるほど、この子は......人の心の動きを読んで話を進めているのか。
眼の動きをみて、その些細な変化を捉え続けている。
「ですが、これはあなたにもメリットがある話ではあります」
「メリット?」
「ええ、あなたはかつてヴォーダンという村で心を救った聖騎士がいた」
......!?
「名をアトラ。 彼も監獄へ収監されているのでしょう? 私の教徒を助け出していただけるのなら、彼のいる独房もお教えしましょう」
「いや、まて......なんで君がアトラと僕の関係を」
「私の能力、『全知』によるものです。 どういった能力かはお教えできません」
しーっ、と人差し指を口元へあて片目を閉じるルーナ。
――『全知』?全てを知る?そんな強力な能力が有り得るのか?
いや、違う......こいつはおそらく、僕をずっと監視していたんだ。
......しかし、それが本当なら。アトラを救える。
「あなたも知っているでしょう、あの監獄は巨大なオーラの集積機。 一度投獄されたものは二度と出されることなく、その生涯を終える......悲しいですよね、国の策略により家族を殺され、復讐鬼になりあのような囚われの身に落とされたのに」
「......国の、策略? 何を言っている?」
「彼の家族が命を落としたのは必然です。 何故ならそこに派遣された聖騎士の役割は実験用の人間の集荷......あの町の住民は正しくは殺されたのではなく、魔族化に使われたのです」
......嘘だ。そんな悲劇があってたまるか。
「れ、レイ? 大丈夫、ですか?」
リアナが心配そうにこちらを見る。
「うん、大丈夫......」
「どうしますか? 信じるのも信じないのもあなた次第ですし、協力いただけなくとも、お好きなだけこの教会本部に居ていただいて大丈夫です。 この件、リスクの比重で言えば貴方の負う危険性の方が遥かに大きいのも事実ですから......けれど」
ルーナはジッとレイの目をみつめる。
「アトラをあのままにしておけますか?」
僕は......
「あなたにしか出来ませんよ、あの監獄を打ち破れるのは」
僕にしか、アトラは救えない。
「......場所を教えろ、アトラの独房番号もだ」
ルーナは嬉しそうに微笑んだ。
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