65.思惑
レイ、ルーナの視線が集まる次元の歪み。そこから落ちてきたのは――
王、だった。
「......ここは、魔界の扉の前か」
着地と同時に周囲を見渡す王。
(レイ......大聖女。 やはりカノンは神命教会側だったか)
レイは驚く。王が現れた事には勿論、彼と一緒にいるカノン。そして彼の纏っている莫大な量の闇のオーラに。
――カノン......ヒメノの兄。 どういうことだ?
レイの視線に気が付き、カノンはニコリと笑う。
「お久しぶりです。 ヒメノ、治してくれたんですね。 レイくんは優しいから、あんな事言っていてもちゃんと治してくれると思ってましたよ。 ありがとうございます」
レイは混乱する。以前会ったカノンとは違い、どこか不気味な雰囲気があることに。
「......君、本当にカノンなのか?」
「ですです♪ もう忘れられちゃったんですかぁ? 冷たいなあ〜」
飄々とした態度。以前の彼とは性格も違うように感じる。
「カノン、あなたが何故ここへ?」
ルーナがカノンに言う。
「え、何故って.......計画の仕上げですけど」
僅かにルーナが動揺したように見えた。
「あなたが此処へ来るという予定は無かったでしょう。 しかも......王を此処へ転移させたのはなぜです?」
「なぜ、なぜ、なぜって......少しは御自分で考えられたら如何です? 大聖女の記憶があるとはいえ、やはり子供か」
「......なにを、言っているの」
「普通はもう察しがつくんだよ」
――その瞬間、カノンの影が伸びレイ、ルーナ、王の影へと結びついた。
「......!!」
「これは」
「うごけぬ......!」
「はいはい、皆さん出てきてくださーぃ」
洞窟の入口からぞろぞろと、黒い着物の男達が現れた。
その特徴的な衣服、あしらわれている刺繍でヴィドラドールの結界師だとすぐにわかった。
「まさか、あなたはっ......魔界との結界を」
ルーナが声を荒げる。
「おっ、今度は察しがいいね! そうだよ、あんたの想像したとおりだ」
王が口を開く。
「わしら三人を......魔界へ飛ばすつもりか」
「正解!! 結界を解除するのに少しばかり時間が必要でね。 ちょーっと待っててちょうだな」
レイには何が起きているのか分からなかった。神命教会、国王、どちらにも裏切りを働いたかのようなこの状況に、彼の目的が見えない。
「カノン、お前はいったい......」
にこり、と微笑むカノン。
「レイくん。 実はあなたには期待してたんですよ。この大聖女と王を殺す事を。 事実、世界樹を扱えるあなたにはそれほどの力があった......だから、人の心を捨てさせたというのに。 あなたの心は、まだ! 怪物になり切れていなかった!! せっかく根回し画策、労力を割いたのにッ!」
カノンの物言いに、背筋が寒くなる。
「......レイくんは、察しが良いですよねえ?」
「まさか、アルフィルクは」
カノンはおぞましいと言えるほどの、歪んだ笑みを向けこういった。
「あなたに必要な犠牲は......ネネモアだけじゃあ、足りなかったみたいですね?」
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