64.さくら
――レイのマナはセフィロトを通して世界樹から供給される。
セフィロトの力は余りに強大で、まともにやり合えば勝ち目は無い。
なので、ルーナはその力を削ぐために一人の教徒をこの場に立たせた。
ヴィドラドール一族から結界の能力が無いとされ、排除された女性。
アノニマート・ヴィドラドール。
十数年前、まだ赤ん坊だった彼女はヴィドラドールの執事により神命教会へ連れてきた。
教会では孤児を引き取る事を神の導きとし、広く受け入れる。
それを利用し、半ば口減らしのように預けていくものも絶えない。
『......大聖女様』
『どうしましたか、アノ』
ある日、それは唐突に現れた。
『それは......結界の能力』
無能力者であると思われていたアノニマートの力が発現したのだ。
彼女の能力はある要因で発現できなかっただけで、確かに内に秘められていた。
『金色の結界......これは神力の一種、神威』
【神威】
自然発生した神力。これを発現させた者は神に選ばれたとされ、数百年に一人の神徒と言われている。
皮肉なことに、この力はヴィドラドール家が喉から手がでる程欲しかった力だった。
この力が発現したことを嗅ぎつけると、アリオトは何度も取り戻そうと神命教会に訴えかけ、あの手この手で奪おうとしたのだ。
しかし、教会本部へ匿われているアノニマートを奪うことは出来なった。
(神威を用いた結界は、セフィロトから世界樹へ伸びる根を阻害しマナの供給を軽減することができる......)
とはいえ半減程度だが、これがなければ戦いにすらならなかっただろう。
――レイのダガーがカンナの武器をいなし、彼女の首に刃が当たる。
(......この場にいる教徒を使えば、レイ、あなたなら世界を......)
――私とカンナの分まで、お願いしますね。
その時、レイの脳裏に過るリアナの顔。
楽しそうにカンナと会話をしている彼女。
「――ッッ!!」
レイはそのダガーを振り抜く事が出来なかった。
――ドウッッ!!
そしてその僅かな隙、フレイの魔法がレイの横腹にヒット。
地べたを転がった。
(......あれほどの殺気......あそこから刃を止めた......なぜ?)
けれど、これは。
「......残念です。 私の勝ちで......、ッ!?」
気がつくと、セフィロトの根が全身を覆い、身動きの取れない状態になっていた。
それはルーナだけではなく、教徒全てに施され全員が動けなくなっていた。
(......戦いの中で拘束するためのマナを少しづつ溜めていたのか......全員を同時に動けなくし反撃をさせないために)
......私以外、皆、口と四肢を根により封じられている。
よろよろとレイが起き上がる。
「......殺す覚悟は、必要だ......でも、僕は君と話がしたい」
「話すことなんて無いですよ。 殺すか殺されるかです」
「違うよ......君たちは敵じゃないから」
「綺麗事はもう良いです」
「......でも、ここで君たちを殺せば......魔族と同じになる。 それは嫌だ」
「フン、あれだけの人間を殺しておいてまだ人として生きたいと? あなたはあの時、人として在るのは捨てたと言ったでしょう?」
ルーナの瞳が失望と怒りに染まった頃。
――ズズズズ
「「!!」」
唐突に天井が歪んだ。それは黒いブラックホールのような歪み。
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【書籍情報】
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目印は眠介先生のレイとリアナが描かれたカバーイラスト!
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