57.暗躍
人間界から魔界へ通じる扉は、公にされているもので世界で八つ。
しかし実際のところはこの国で確認されているだけで、十四もの数がある。
ここ【禍魂の扉】はその内のひとつ。そして、王とその側近しか知り得ない禁足域であり、秘密裏の処刑場としても使われていた。
「......すごい。 今の不意打ちでも無事だなんて」
レイは咆哮が直撃する瞬間、賭けに出た。
【迎撃回復】
ダメージを受けると同時に破壊された部分をマナで覆い、瞬時に体を創り出した。
しかし、一つ間違えればオーラ操作ミスにより逆に体が吹き飛ぶ両刃の剣。
その時、ミミラの意識が消える。
「!」
雷魔法を得意とするミミラ。全身から放電し、レイを巻き込もうとしたが、レイは素早くその場から離脱。
「ルーナ、君は人を操れるのか......」
(しかし、僕を操る事が出来ていない......この状態にするには条件があるな)
「ええ。 神力が巡っている者であれば、誰でも操れますよ」
条件を開示した......どうして?
「なので、聖騎士全ては私の意のまま......この意味わかりますか?」
全て?まさか。
「アトラの事を言っているのか?」
「ええ。 まあ、どちらかといえば、リアナの事ですかね?」
ルーナの瞳に深い闇が宿る。
「それで脅しているつもりか? 悪いがアトラを操ったところで意味はないよ。 簡単に無力化できる奴がリアナの側についているからね......僕は止まらない」
「ふむ、そうですか。 ならば戦闘続行ですね。 私もどの道負けるつもりはありません」
彼女は指を真上にあげ、ニコリと笑う。
教徒六人が集合し、それぞれ武器を構えた。
「しかし、この子たちを殺されてしまえば私の負けですが」
僕が彼女ら教徒を殺せないと思ってるのか。
そこでふと気がつく。
(ミミラ、フレイ、カンナ......そういう事か)
「君は、僕とリアナを匿った時からこのシナリオを考えていたのか......」
「ふふっ。 あなたとまともにやり合えば負けますからね」
「......趣味の悪いやつだな」
「私は、私の使命のため、手段を選びません」
「使命?」
「魔族の駆逐。 遥か昔からの、私の願い」
「遥か昔......」
「私の中には一番最初、初代大聖女の記憶があるのです」
「初代、だと......?」
神命教会が大聖女によって作られたのが約三百年前。魔界と人間界を隔てた戦いにも大聖女は参加していたと記されている......それが約五百年前。
「有り得ないな。 それが本当だとしたら、それだけ人らしい振る舞いなんてできない。 知識の海にのまれ廃人になるか、死に至るだろ」
「確かに。 この膨大な記憶と知識は精神を破壊してしまうでしょう。 ですが、初代聖女はそれを防ぐために聖女ひとりひとり個別に保管するという魔法を生み出したのです」
そうか、セフィロトを通して世界樹から知識を引き出し利用している僕と同じか。
けれど、大雑把に考えても五百年前からも戦い続けてきたって事だろ......なんて執念なんだ。
「......けれど、その負荷はどこかしらに必ずあるはずだ。 僕が人ならざる体に自身を変えたように......君は、君たち聖女はそこまでして」
「はい。 それが私達の正義。 悪しき魔族を殲滅し、清浄な世界を構築する......ただそれだけです。 ......あなたもそれが望みではなかったのですか? 魔族に支配された国を浄化したい。 そのために王を討とうとした......なら、私にその命を預けてみませんか? 私が必ず王も魔族も全て駆除しましょう。 如何ですか」
「それは僕がやる」
「出来ませんよ。 あなたは優しすぎる......だから、私があなたに代わり力を使うんです」
ルーナが唇に人差し指を触れ、怪しげな笑みを浮かべる。
「私、ずっとみてたんですよ? ネネモアに会いたくて旅を始めたのに、困っていた村の為に魔族と戦ってみたり、王都へついたと思えばリアナの為に時間を作ったり。 あげく、ネネモアを助けられず殺された......」
おかしい。ルーナには話していないはずなのに、なぜ......。
リアナ?彼女が話したのか?
「違いますよ」
表情に現れていたのか、考えていることを読まれた。
「これも私の力のひとつ......神力を宿した者と視覚や聴覚等の感覚を共有することができる【神知同調】 これにより私はずっとあなたのことを見ていたのです」
「......な」
「それを踏まえて、どうです? あなたに魔族をこの世界から消し去る事ができるんですか? もし、幼子の魔族があらわれたとして、あなたはその命を奪えますか?」
「......僕は」
――ピチャン、と水滴の落ちる音。
「私は、ずっとレイを見てきました。 あなたは優しい......あなたには、出来ません。 けれど」
スッとルーナが手を差し向けた。
「私には出来ます。 ......その体、私が貰います」
――六人が一斉に向かってくる。
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