44.四二噛味
――交錯するレイとグンダリの視線。
(ッ!? や、ヤバい)
「ま、まて、おまっ――」
直後、グンダリの足元から光の根が出現し、その腹部を貫く。
「ぐぶふあっ!?」
その根がみるみる成長し、あっというまに大樹へと成長。グンダリの体は無惨にも無数の肉片へと姿をかえ、彼は絶命した。
大樹となったセフィロトの枝が残った騎士へと襲いかかる。あるものは逃げ惑い、あるものは剣と盾で応戦、しかしその全てを枝の圧倒的な力が圧し潰しもろとも飲み込む。
(......ごめん、リアナ......でも、必ず望む未来へと繋ぐから)
――ここで、壊す。
暗躍するどころか魔により創生された国。であれば最早全てを破壊して作り直してしまう方が良い。
深く根ざしたそれを取り除かねばまた同じことが繰り返される。
――罪のない犠牲者も生まれるだろう......けれど、その全ての罪は僕が被り、償おう。
また一人また一人と、人の命を奪う。返り血に塗れた全身は月の光に照らされ、黒々と。
まるで死神のような姿となったレイは、逆手に持つナイフが命を刈り取る鎌のようだった。
一方で、突然の交戦となった戦場に佇むフェイルはレイを静かに見据え――
(......レイ、そう......私は、貴方が行く道へ......共にするだけ......)
――覚悟を決めた。
「フェイル、行こう」
あらかたその場にいた騎士を始末したレイが、彼女のもとへと戻り言う。
「......うん」
――ピシッ、ピシ
その場を去ろうとしたその時、レイは足元にとてつもない冷気を感じた。
「「!!」」
見ればレイの右足は凍り付きその場に固定されていた。そしてみるみる脚を登り侵食し始める、が。
(......落とすしかない)
氷に込められた莫大な魔力。それにより侵食を食い止めるより切り離した方が早いと判断し、躊躇いもなくその脚を切り落とした。
――目の端で捉えた術師。魔力の痕跡。
(あの紅か)
創造魔法で脚を修復し、そのまま氷使いの聖騎士を追い始めた。
「!」
しかし、一歩踏み出した直後その異変に気がつく。
(......あの紅、生命力を感じない......!?)
投げつけたナイフがヒットし、その紅の聖騎士はどろどろと地面へ溶け消えた。
魔力の残滓すらもきれいサッパリと跡形もなく。
(これは......そうか)
ふと空を見上げれば月が欠けていた。
王都に到着した時と同じ。レイはこの力は精巧な幻を見せる幻影の能力だと判断。
(幻影はグンダリの能力では無かった......いや、それはそうだろう。 あの規模での魔法を使うとなると王直属騎士クラスの魔力が必要だ......と、なればこの能力の主は必然的に。 とにかく、この能力者を始末しなければ後々厄介に......)
基本的、レイに幻影は効かない。人とは作りの違う体、そこには脳の奥底を揺さぶる音も、視界の全てを塗りつぶす絵も無意味。
だからこそ、そのレイにかけられるレベルの幻術の危険性を考慮し、術者を始末することを最優先とした。
「フェイル」
「......はい」
「これから王城に乗り込む。 サポート頼む」
「......王城に?」
「この幻術をかけている奴が王城にいる。 こいつを殺さなければ、多分僕らは逃げられない。 幻術の恐ろしさは君も知っているだろ」
その昔、冒険者時代。レイが所属していたパーティーが壊滅の危機に陥ったエピソードの一つに、一人の幻術師に追い詰められたと言うモノがある。
彼はファントムと呼ばれ、半魔の魔術師。人の世界に居場所を得られず旅人や冒険者を手当り次第手にかけ、なかば盗賊のような生活をしていた。
そいつの討伐依頼を受けた自信満々のロキはすぐに達成できると、まるでピクニックにでもいくような感じで一人仕掛けにいった。しかし結果、敵の幻影に囚われ捜しにいったレイ達も芋づる式に捕獲される。
収容された牢には無数の人骨。結局はその討伐にSSランク冒険者パーティーが駆り出され、ファントムは討伐された。
しかしあのまま助けが来なければレイ達は間違いなくファントムに殺されていたのだ。
「この術師は、あの時のファントムと同様に何度も幻を刷り込み幻影を強化している。 捕らえられるのか殺されるのかはわからないが......このまま幻術をかけ続けられれば、僕らはもう助からない」
「......でも王城......あそこには......」
王直属の三騎士がいる。レイはこの時点で誘われていることに気がついていた。
基本的に幻術師は物を媒介に能力を発動する。それはひと目につくものであればあるほど、注目を集めるものほど多くに能力をかけることができるメリットがあるからだ。
しかし、デメリットもあり媒介が大きなモノでありより強力な幻を見せようとすれば相応のオーラを必要とする。
――だからこそ、だ。
(一度目は気が付かなかったが、さっきの幻が発動した際に王城からあの月へとオーラが流れていた。 おそらくは、この術者は王直属の三騎士である可能性がかなり高い)
レイの脳裏にスサノオの顔が蘇る。
僕の存在はもう彼女らに知られている。そして国王軍をつかい殺しに来た。
(だったらもう......奇襲したほうが良い)
人は強い。それは多くの戦を重ね、それでも人という種が繁栄している事からわかる。
魔族や魔獣、あらゆる脅威がありながらも、国を作り創造し進化してきた。
だから。
「今日、王の首をとる」
「......え?」
「僕は今日......この国を潰す」
その後の国の事はルーナが何とかするだろう。そのために裏で画策していたんだろうし。国から魔族という邪魔な不純物が消えれば、きっと何とかなる。
そうだ、僕は僕の居る意味だけを考えればいい。
このユグドラシルの力は、リアナやアトラたちがこれからを生きる世界を創造する為にある。
覆そう、この偽りの国を。今がその時だ。
創りなおそう――
脳裏に浮かぶ、彼女の柔らかな瞳と、あがる広角。
最後の願い。
――立てた誓いが墓標となろうとも、必ず。
◆◇◆◇◆◇
「? なんだ、騒がしいな......」
東区、青龍にある議事堂。そこで会議をおこなっていたタラゼドとその隊員達が、魔力のゆらぎを感じる。
西区の端にて、秘密裏に行われている作戦はタラゼドや各門を守護している隊長たちには知らされてはいない。
しかし、遥か対岸にあるその場所からも届くほどの異様なオーラ。
「......これは、我々も向かった方がよいのでは?」
タラゼドが目を向けるその騎士はあの日、アーゴン邸の一件からつけられた白銀の騎士。
「事前にいただいている情報では、特に問題もないとおもわれます。 さ、お気になさらず会議をお続けになってください」
(あからさまに適当な事を言うな、この女は)
あの日の惨劇の内容から、強襲してきたレイという危険性の高い人物に今後も狙われるかもしれないという理由で要請された女騎士だ。
(......しかし隊長で紅の騎士である私に数人しか居ない白銀をつけるとは、私の信用は地に落ちたな。 この女は見張り......私が妙な動きをしないように制している)
神命教徒に聞いたレイからの言伝。約束の一ヶ月にはまだ遠いが、この白銀がついている状況では私は動けない。
白銀を倒すことも出来ないし、仮に倒せたとしても私は処分されるだろう。......つまりは八方塞がり。
――こいつは、いつまで私を監視しする気なんだ?
◆◇◆◇◆◇
――ドゴォ!!!
とてつもない轟音、地鳴り、揺れ。
雲を穿つかのようにそびえ立つ王城の入り口には、城を護るように城壁があり、そのさらに外には神門が展開されている。
レイはその神門と城壁を、オーラを込めた拳を撃ち抜きまとめて破壊した。
「......え......」
その表情からフェイルがドン引きしていることがわかる。どれほどの力を持ってしても破壊することが出来ないとされる神門をたやすく吹き飛ばすそのオーラ。
しかしフェイルが驚愕してのは門を破壊した事よりもその拳に込められたオーラの量だった。
それはフェイルの見てきたどの魔術師や魔族、魔獣が有する魔力量を遥かに上回っていたこと。
普通、生きていられるはずのない程のオーラ量を纏っていたことであった。
(......ああ、そっか......レイ、本当に人では無くなってしまったんだ......)
――でも、それは......私もだ。
人ではなく、魔族でもない。その苦悩を背負ってきたフェイルは思う。彼を支えられるのは自分だけだと。
――私は......レイをもう、一人にはしない。
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【告知】
現代恋愛を近々投稿させていただきます。ご興味あれば、是非読んでみてください。
おそらく6/12になるかと思われます。




