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39.契約

 


 場の雰囲気に居づらくなったレイは席を立った。口論なんてしている場合じゃないのはわかっている。しかし、それ以外に取る手立ての無いことも確か。


 迷い始めたレイ。その息苦しさをどうにかしようと、出口へと向かった。


「少し頭を冷やしてくる」


 扉を開け、外へ出るレイ。その後を追いフェイルが席を立った。

 伝えなければならない、想いを携えて。


「......レイ、待って......」



「フェイル」



「あの、あの......わたし」


「待って。 君の話の前に言っておく」



 レイは自分を見失わないよう、あの時の気持ちを思い出すように息を吸い込む。


「なにを言われても僕は君を許さない。 それでも良いなら、続きを喋って」



 フェイルは両手を前に胸の前で握り、まるで祈りのようなポーズをとる。



「うん、わかってる......私は、許されない事をした......許されようとも思ってないよ」


 悲しげな視線を地面に落とし、うつむくフェイル。



「じゃあなに?」



「うん、これは......私の自己満足」




「?」




「私を貴方の奴隷にしてほしい」




「......は?」


 さっきとは違い、強い眼差しでレイを見据えるフェイル。ゆっくりと言葉を紡ぎだしはじめた。


「いままで、レイはずっと......私達、パーティーの為に......見えないところで努力して、頑張って、支えてくれていた......それなのに、私は最後の最後であなたを置いていってしまった」




 俯くフェイル。




「......私はずっと、それを後悔してる。 だから、こんどは私が、レイの為に......何かを......させて欲しい」




「......どうして、それで奴隷なんだ?」




「さっき、レイは言った......この国を変えるために魔族達と戦うと。 私も戦いたい......レイの役にたちたいの」



「ああ......なるほど」



 ――嘘は無い。今の話は全て本当の事か。......思えば、彼女はあのパーティーで一番僕を気にかけてくれていた。




「私にはもう魂のみで肉体が無いから......ユグドラシルからでられない......だから、体を作ってもらうことにはなるけれど、奴隷の契約をすれば、また戦えるし、レイに逆らう事も出来なくなる」




 フェイルはその綺麗に輝く、潤んだ瞳をレイへと向けた。



「私のこの魂は、レイの物だよ」



 彼女の力強く見据えるその瞳を、僕は知らない。



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