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エンゼルランプ

 




「――全く、なんでこんな先のない娘の面倒を観なければならないのかしら」


 毎日のように幾度も聞かされるそれは


「あのヴィドラドールのいる冒険者パーティーだから今まで好きにさせてあげていたのに、大怪我して戻ってきて......こんなに醜い姿では嫁にも出せない」


 目を失い、左手、左脚を失い、絶望の底


「そのまま死ねば良かったのに......ねえ、ヒメノ?」


 死を選ぶには十分な理由だったと、私は思う。



 私が冒険者を目指した理由は、このクロノス家から出ることが目的だった。


 女の身で『剣聖』を宿してしまった私は、皆口には出さなかったけれど死を望まれていた。


 その理由は簡単で単純。クロノス家は代々、剣の才能が最も色濃く、剣聖に選ばれた男を当主とし家を継がせてきた。


 なので女の私が剣聖を宿している事が問題であった。

 しかしそれを解決する方法もあり、ある意味簡単なのだ。


 剣聖を宿すものを殺せば良い。


 剣聖は選ばれた一人しか宿せない、だがそれが命を落とせばその次に才あるものへ移るという性質がある。


 だから、母はこう言ってるがきっと冒険者として死ぬことを望んでいたのだと、そう思う。



(私は......私だって、こんな力......)




 こんな目にあうならいらなかった。



 冒険者は常に命がけ、仲間はよくわからないやつばっか。




 自尊心の塊のリーダー。



 暴力性の塊の戦士。



 口数少ない何考えてんのかわからん黒魔術師。



 自己犠牲しようとするわけわからん白魔道士。



 私は誰も理解できず、誰にも理解されない。



 そしてそのストレスで散財する毎日。



 死ぬ気で行った修業、鍛錬も......女という理由だけで、価値を失う。



(私の人生は......)



『......だから! いつまであの子を生かしておくんですか!? 食費だってただじゃないんですよ!』


『うるさいな、わかっとる! だが下手に殺してそんな事が明るみに出てしまえば、クロノス家自体が終わりを迎えることになるんだぞ!』


『そんな事を言っても、はやく剣聖を移さなければ......』



 ......剣聖の力。



 それのせいで私は人よりも遥かに五感が優れている。


 今まではコントロールしていたが、目を失った今は余計に聴力が強まっているみたいで、聞きたくもない遠く離れた部屋での親の話し合いが聞こえてくる。



(......いずれ殺される。 それはわかっていた)



 でも、死に方は、私が決める



 明日、窓から飛び降りよう。



 頭から落ちれば



 いくら剣聖の力が護ろうと、死ねるはずだ




 ――そうして、この屋敷での最後の夜を迎えた。




















 夢を見た。




 あの日の夢。




 レイが泣きそうな目で、こちらを見て懇願する。


 助けて、置いていかないで、と。



 あの時、私は私を守るためにレイにそれらしい難癖をつけて見捨てた。



 今では分かる。



 死ぬことを意識した、今なら



 不安と恐怖、絶望に苛まれ、そこから生まれる怒り。なぜ、私なのか......今までの努力と苦しみながら積み重ねた物は。


 全て無意味にされ、簡単に壊された......この痛みは。






「......ごめ、ね」






 後悔が溢れ、こぼれた。







 ――もし






 ――もしも、叶うのなら......私は......














 ー翌日、ヒメノが失踪。クロノス家の者数人がその行方を追い捜索を始めるー




 クロノス家の居間。


 集められた血筋の剣士達。


 当主とその妻が彼らへ命じる。



「ヒメノはまだ死んでいない......剣聖が弟のシュウウに移らないのが証拠です。 さっさと見つけてください、そして」


「ああ、場所とその状況によるが......殺せるなら殺しても構わない。 暴漢か野盗の仕業にみせかけるのも忘れるな」



 ――クロノス家による剣聖狩りが始まった。







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