32.守るもの
――各階層の主を難なく倒し、ついに最終層へ繋がる最後のエリアボスの部屋前へと到着。
ここまでかかった時間は予定の半月を大幅に上回る、3日と3時間。
「いやバカつええ! お前、ひくわぁ〜! なんで3日でここまでこれんの!? ありえんじゃろ」
ジト目でレイの顔を覗き込むノルン。
「いや、弟子をそんな目で見ないでよ......むしろ誇ってよ」
ノルンがそう引き気味の感想を述べたが、口元は緩んでいて嬉しそうなのがレイには伝わっていた。
しかし、それよりもレイはどちらかというとリアナとアトラの体力が心配だった。
(やっぱり、結構辛そうだな......最下層なら魔力の影響も少なくなるけれど。 二人、それまで体力が保つか? ......急いだほうが良いかもしれないな)
ノルンにはリアナとアトラの二人を魔力濃度になれさせるとは言ったが、実はダンジョンの環境は魔界レベルの瘴気で本来ならば人の歩ける場所ではない。
数年という月日を過ごしたレイは完全に克服したが、二人の体にかかる負担は計り知れないものだった。
下手をすれば倒れ、そのまま死に至る可能性もある。
しかし――
「はあ、はあっ......大丈夫、大丈夫です」
「進もう、レイ」
二人の眼差しは、死んでいない。まるでレイの意図を理解しているかのように、その目は助けを拒否していた。
(できるだけ、早く......)
本来であればこの状況はリアナとアトラに力をつけてもらう絶好のチャンスだった。
魔物との戦いも経験させれば、二人の力を伸ばすことができる。
しかし、今の二人の体力と、それに加えてアーゴンも死なれては困るので、全てレイが葬ってきた。
ノルンがにやにやしながらレイの腰に肘を当てる。
「さーて、レイ......前は一年かかったこの部屋の主、今度はどのくらいで倒せるかのう? へへっ」
「大丈夫、今度はノルンの魔力防壁もいらない」
「え、マジ? 死ぬよ?」
このダンジョンで最も強いとされる、SSSレート魔獣『アースガルズ』
魔法の一切を使わない、純粋なオーラのみで戦う幻竜。
その強さは、魔界の『王界種』を超えるといわれてる。※ノルンに。
事実、ノルンの防壁があっても死線をくぐったのは一度や二度ではなく、逆に防壁がなければ65回は死んでいた。
倒すまでにかかった時間は一年八ヶ月。
「れ、レイ......大丈夫ですか?」
不安そうにこちらを見るリアナ。その頭を優しくなでる。
「うん、大丈夫。 行ってくるね」
巨大な門を押し開けた。
――扉から流れ出るオーラ。それに触れたリアナとアトラの体は途端に体の震えがとまらなくなる。
「な、ん......この不気味なオーラはっ、なんだ!?」
自身のからだを腕に抱き、カチカチと歯を鳴らすリアナ。
「ほぉ」
と、ノルンが腕を組み、目を見開いた。
「やつを目の前にしてオーラに一切の動揺が見えないとは。 本当に強くなったのう......レイ」
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