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29.ふりだし

 



 馬車に揺られ半日。2つの村を経由し、たどり着いた巨大な樹の下

 その根本は大きな洞穴のようになっていて、入口こそ明るいが奥は闇に飲まれていて見えない。

 レイ一行はユグドラシルの入口前に立っていた。


「ここが、ユグドラシル......」


「......凄い大きな洞窟ですね」



 アトラとリアナが深淵を覗き、驚く。



「ここまでありがとう、カンナ」


「いいえ、こちらこそありがとうございます。 あなたには感謝してもしきれません......お気をつけて」


「カンナも帰り、気をつけて」


「カンナさん、たのしかったです! ま、またねっ!」


「はい、リアナもお元気で」



 リアナは馬車を運転するカンナと、ずっと仲良く話していた。それこそまるで姉妹のように。


 少し寂しそうなリアナだったが、カンナも同じ気持ちなのかもしれない。


 アトラはアトラで、少し恥ずかしそうに手を小さくヒラヒラさせカンナに別れをつげていた。なにそれカワイイか。




 ――洞窟内は入口付近こそ暗いが、進んでいくと岩壁に埋もれている魔石の光が辺をてらしている。


 魔石一個の光は淡く弱いが、とてつもない量の魔石が至るところに埋まっている為、かなりの明るさである。






 〜ユグドラシルの迷宮~


 世界に7つあるSSSレートに分類される最難度、最大級の巨大なダンジョン。

 未だかつて踏破したものはおらず、踏み込んで生きて帰ったものは少ない。


 しかし、それは表向きの話。踏破者は存在する。







 ――コツ、コツ......洞窟内に響きわたる靴の音。



「......噂には聞いたことがあるが、凄い魔力濃度だな......」


 アトラの言葉にレイが答える。


「ここに来た人はまずこの魔力瘴気にあてられる。 第一の試練ってやつかな......ある程度の魔力耐性がなければ進むことが出来ないんだ」


「はあ、はあ......っ」


「リアナ、大丈夫? 辛いだろうけど......時間が経てば慣れてくるはずだから」


「だ、大丈夫......わ、私、がんばります」



 ふらふらしながら歩みを進めるリアナ。レイはここで手を貸してしまえば彼女の頑張りを否定してしまうような気がした。


(少しの間辛いだろうけど、ここである程度の魔力耐性を身につけることができれば、リアナはもっと強くなれる)



 オーラを使う戦闘では、殆どが魔力による攻撃。


 それ故に魔力耐性があるのと無いのでは、ダメージの負い方が全く違い、生死を分かつ要因ともなる。



 レイはリアナを強く育てようと考えていた。自分がいなくなっても生きられるよう、強く。 





「――おい、お前!」




 最初の下り階段を見つけたその時、洞窟内に幼い子供のような声が響いた。



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