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21.名

 


 アトラは一人腕を組み考え込んでいると、それにレイが気がつく。


 ――......この国で行われている魔族による暗躍。確かに唐突にこんな話をされても、わけがわからないだろう。僕だってアーゴン邸での事がなければ信じられないと思うし。

 アトラには後でゆっくりと説明しよう。



「しかし......人の魔族化。国を乗っ取ると同時に魔族の人口を増やす。魔界からこちらへこられないとなると、彼らにとっては、それが一番良い手なのか」


 レイがそう言うとルーナがそれに答えた。


「......そう、なのでしょうね。 彼ら魔族からすると」



 その時、話が途切れたタイミングを見計らって半龍の教徒が口を開く。



「......あの、大聖女。 私を助けてくれたこの方々に名を名乗ってもよろしいですか?」



 神命教徒は機密保持のため、教徒以外の者に個人情報を出すことを基本的には禁じられている。



「ええ、レイやリアナ、アトラは私達の仲間です。 名を名乗りなさい」



「ありがとうございます。 名乗らせていただきますね......私はカンナ・カムイと申し上げます。 よろしくおねがいします、皆様」



 すると僕らをここへ案内してくれた二人の教徒もルーナへ名を名乗ることを求めた。



「仲間であれば、我々も名乗ってよろしいでしょうか?」



 ルーナは頷く。



「どうぞ、名前をおぼえてもらってください」


「ありがとうございます!」「ありがとうございます」



 まずは、この神域の町並みについてドヤってた彼女が名乗る。


「私の名はミミラ・セーナと申します! よろしくおねがいしますね、皆様! 趣味はお裁縫です!」



 次にルーナへの心象を良くしようとし、ミミラの罰を消し飛ばした彼女。


「私の名は、フレイ・ルルカと言います。 よろしくおねがいします、皆様......カフェ巡りが趣味です」


 ミミラにつられたのか、フレイも趣味をいう。ちょっと面白い。

 そんな事を考えながら、隣のリアナをみるとにこにこと笑みを浮かべている。


「私はリアナです、よろしくおねがいします! 趣味は甘いお菓子を食べることです!」


 ドヤっと満足気にリアナが胸を張る。何この子かわいい。


「えっと、僕はレイ。 三人ともよろしく......アトラもこの流れで自己紹介したら?」


 後ろに隠れていたアトラに声をかけると、ギクリとした表情をみせた。こういうの苦手なんだろうなとレイはその表情から気がついた。


「よし、ここは僕が。 えっと、この人はアトラ、聖騎士だった人で僕の友人です......よろしくおねがいします」


「よ、よろしく......」



 ――アトラは本当に戦闘中と普段で性格が変わるな。



 アトラがレイに続き挨拶をすると、ルーナや教徒の皆が受けいれるかのように挨拶を返す。


 ......さて、これからの話をしなければ。アーゴンから情報を引き出せずに殺しでもしたら、なんのためのアーゴン邸の犠牲だったかわからない。......その為の犠牲だったなんて言いたくもないけど。


「さて、ルーナ。 アーゴン邸の一件を観ていた君なら知っていると思うけれど......僕はアーゴンを捕らえている。 だが、この場所には出せない。 それもわかるよね」



「拐われたアーゴン公爵が万一この場所、聖域で発見されれば言い逃れが出来ない。 それと同時に様々な理由をつけられ神命教徒は解体......とまではいかずともペナルティがかせられますね」



(え、解体されない?公爵の拉致だぞ?......かなりの重罪だろ、それだけでは済まないと思うんだけど)


 レイが不思議に思っていると、ルーナが続けて話を進める。



「わかりました。 ではレイ、どうしますか? 彼の扱いは」





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