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20.帰還

 



 ――光が散り、神域へと転移されたレイ、アトラ、教徒幹部。



「レイ! お帰りなさい、無事で良かった!」


 そこにはリアナ、ルーナ、教徒二人が待っており、レイが救出に神域外へと出て結構な時間が経っていたはずだったが、皆揃っていた。


「ただいま、リアナ」


 レイが戻ってきた事で、安堵したのかリアナの瞳は潤んでいる。


 魔族により一度全てを失ったトラウマと、今までずっと一緒だった事により、リアナは彼にいつの間にかレイへと依存していた。

 だが、リアナはそこに他の気持ちが紛れている事を微かに感じていた。

 失いたくない気持ちは、彼女もまた同じだと言うことをレイはまだ知らない。


「アトラさんも、お久しぶりです......お元気そうで、良かった!」


「ああ、久しぶりリアナ、ありがとう......ん?」


 不思議そうに見てくるアトラにリアナは首を傾げる。


「レイ、リアナに何かしたのか?」


「え?」


「強くなったな......リアナ。 オーラの流れが淀みなく、力強い」


 リアナには普段からオーラの流れを意識するよう言ってある。それの効果か......とはいえ、普通はその訓練の成果がでるのは数年とかかるんだが。

 これは才能か、努力か......おそらくその両方だろう。


「ありがとうございます、レイのおかげなんです」


 ふふっ、と可愛らしく微笑むリアナ。


 その時、今まで一言も話さずもしかして口がきけないのか?と思っていた彼女が口を開いた。


「レイ様......」


 監獄へと幽閉されていた教徒。彼女はフードつきの全身を覆っていた黒いローブを脱ぎ捨てた。



 あらわれたのは、額に角の生えた銀髪の少女。




「助けていただき、ありがとうございます。 この御恩は忘れません」




 所々に白く美しい鱗と、腰のあたりから伸びる尾。




 どうみても魔族である竜族のその体にレイ、リアナ、アトラの三人は驚きを隠せない


 リアナが思わず問う。



「ま、魔族......だったんですか?」



「......いえ、元々はヒトです」



 幹部がそう答えた所で、ルーナが口をはさむ。



「彼女は魔族化の実験施設へ潜入していただいた教徒です。 アーゴンとは別の実験施設ですが」


「なぜそんな危険な真似を」


「彼らの罪を見定める為です。 どのような行為が行われているかを正確に知る必要がある......世界を清浄化するためには必要な事でしょう? その為に神命教徒の中でも最も戦闘力の高い彼女に潜入して貰ったのです」


「しかしその結果、彼女は魔族化の実験体に......なるほど」


「彼らは......成功体となった彼女を逃したくはなかったのでしょうね。 彼女に配合された魔族、わかりますか?」



「見た感じは竜族に見えるが。 白い竜族もいるんだな」



「ええ、地域によっては魔界にも白い竜族はいるみたいです。 けれど、彼女は違う......彼女が配合されたのは魔族ではなく魔獣の類です」



「魔獣?」




「そう、結論からいうと『龍神属』のニルヴァーナ」




「ニルヴァーナって、魔界にいる王界種の!?」

 ※『王界種』SSSレートに分類されるが、その中でも最上位の強さを持つ。


 ルーナがこくりと頷く。


「そうです。 そのニルヴァーナの遺伝子を配合され、唯一の成功体となったのが彼女なのです」


 アトラはどう飲み込めば良いのかわからず、ただただ唖然とするばかり。


(魔族とだけじゃなく、魔獣とヒトの配合......しかも龍神属だと......! 理解が追いつかん。この、おぞましい実験は......これはなんの目的で行われているんだ? 一体この黒幕は......誰なんだ!? と言うか、あれ......この人もしかして大聖女?)



「......し、信じられない......」



 アトラの口から漏れ出た言葉は、様々な意味合いを含んでいた。



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