19.成功
大監獄が破られた。その情報は国王軍本部へと通達され、瞬く間に朱雀地区には騎士、聖騎士が溢れかえった。
レイ達は路地裏を縫うよう、隠れながら逃走をはかる。
「ははっ、今更遅えよな! もう捕まらねえっつーの!」
――......しまった。足止めしてくれていたとはいえ、この人敵だった。なんで連れてきちゃったんだよ、僕。
深刻な状況をものともせず、けらけらと笑うイオリ。それを見て一筋の汗を垂らしながら、アトラがレイへと問いかける。
「レイ、この人は......まさか」
「ああ、うん。 朱雀隊隊長の人だよ」
「まじか、なんで一緒にいるんだよ......しかも監獄破りの共犯だと。 わけがわからない、どうしてこうなった」
イオリがアトラの顔をみてハッとし、口を挟む。
「ああ、お前......そうか、聖騎士のアトラか! 村落としで収監されたんだっけか。 なるほどなぁ、レイが救出しに来たのはお前だったって訳ね」
「お、俺の事を知っているんですか。 隊も違うのに」
「ああ、知ってるぜ。 お前には、前々からかなりの素質を感じていたからなぁ!」
「そ、素質ですか?」
「強くなる素質だよ、強者の匂いだな! だから記憶している......俺、戦うの好きなんだよ」
「そう、なんですか」
(え、戦う獲物の候補として覚えてたって事......?)
アトラが複雑そうな面持ちでいたが、そんな事も気にせず、イオリは監獄では教えてもらえなかったレイの名を聞き、ニヤリと笑う。
「つーかお前、名前レイって言うんだな?」
――あ、そういや......名乗ってなかったな。まあ、こんなことになるなんて思って無かったし。
「うん、そう」
「いい名だな! それはそうと、お前監獄で王直属騎士と遭遇しなかったか?」
「うん、いたけど。 ......殺してはいないよ」
「殺してはないって......お前勝ったのか? 王直属の騎士に......ははっ、やっぱお前は」
クククッと笑うイオリに対し、頭上に「?」を浮かべるレイ。
「――っと、そろそろ俺は別行動するわ。 またな、レイ!」
「え、戦うんじゃないのか?」
「おいおい、この状況で満足にやれるかよ! また今度だ! じゃあな!」
「あ......」
「ん?」
「ありがとう、助かったよ」
「へっ、ああ! またな、レイ!」
イオリと別れ、レイたちは大聖堂へとかえる為花を探した。
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