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 アリオトは思考する。


 ――イオリは私のオーラの流れを観察しているな......やつは戦闘狂だ。魔族に限らず国の紛争にも出ていた経歴がある。


 実戦経験、踏んだ場数は相当なものだろう。


 だが、それは私も同じ......私はヴィドラドール一族。王を守る事を使命とした至高の守り手。


 一族の男子は齢10になる頃から実戦の場に駆り出され、12ではその手を血に染める。


(若造......貴様に引けは取らん)


 ――良いだろう、あえて......隙きを、攻撃のタイミングを作ってやる、こい!その上で貴様を破ってやろう!!


 アリオトはあえて間合いに入るようにイオリへとゆっくり接近する。と、同時にわざとオーラの揺らぎが激しくなったように見せかけ、イオリの攻撃が通る場所を意図的に見せ、誘った。


 ――こい、イオリ......ここだぞ。


 イオリはその意図を察知する。――アリオトの明らかな、挑発。


 そのタイミングを間違えれば死ぬかもしれない、このヒリつくギリギリの死闘......今の彼の頭には足止めなどという言葉は存在していなかった。


 アリオトも間違いなく強者。おそらくは形勢逆転の大技を潜ませている事もイオリは理解している......その戦いに血が沸く。


(アリオト......いいぜ、乗ってやる)


 あきらかに誘っているオーラの偏り、それを目の端で捉えた。


 その瞬間、イオリの刀に魔力が迸り――黒い刀身が霧散した。


 アリオトが「ヤツの攻撃が来る......!」とカウンターを狙い、感覚、全神経を集中し研ぎ澄ませる。







 が、しかし......それが撃たれることは無かった。


(――!?)


 そして、更に驚くべき事態。


 イオリの視線の先、そこには居るはずのない、戻ってこられるはずのない男の姿が。


「――目的は達した! 逃げるぞ!」


 レイが戻ってきた。


「!? な、あり得ない! 下には......」


(王直属の......ど、どういうことだ!?)


 監獄長では対処しきれない事態が発生した場合において、連絡室の副長から王城へと連絡が入るようになっている。


 救援として来るのは王直属の騎士。



 驚きのあまり固まり立ち尽くすアリオト。


「ははっ、マジか!! ......ま、んな訳で、じゃあな監獄長殿!!」


「な......な、ん」



 逃げ去る四人の背を追うことも出来ずに、呆然としていた。



 ――レイが......無事に戻ってきたということは、王直属騎士が負けた、のか?......あの、下等な奴隷に......?



(......あ、あり得ない、プラチナが束になったとしても敵わないとされているんだぞ、王直属騎士は......ッ!!?)



 天地が引っくり返ったかのような衝撃を受けたアリオト。理解不能の状況に、ただただその場から動けずにいた。







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