17.嘘つき
幾度となく繰り出される攻撃に、次々と対応していくスサノオ。この場にレイを留めておきたい彼女は、更にレイへと言葉を投げかける。
「あなたの動きは全て読めていますよ? あなたには勝ち目など無いのに、それでもまだ続けるのですか? ......ふふっ」
――?......ここで先程と打って変わって余力をアピール。僕のが不利だと思わせ退かせようとしている?
......余程この監獄から出ていって欲しいみたいだな。
まだ様子見をしている状況。互いの実力の底など3割も見えないこの攻防に、スサノオの発言の意味を考える。
(.......いや、違う)
レイは更に思考を巡らせる。
――これは、罠だ。彼女の最初に言った事を思い出せ......彼女はこの監獄を破壊してほしくないから見逃すと言った。
けれど、今の彼女からは戦う意志を強く感じる。
監獄から見逃すという発言......しかし、僕の退路を断つような立ち回り。
――なるほど......彼女は僕を此処に縛っておきたいのか。
何を狙っている......他の騎士の増援?それとも何かしらの強力な魔法の発動を狙っているのか?
いずれにせよ、さっさと逃げた方が良いか。
「アトラ、危ないからもっと離れてて」
「仲間想いなのですね。 まあ、でなければこのような場所に命懸けで来ないでしょうけれど......」
「まあ、ね」
レイがマナをダガーへと凝縮。まるで雷の如き空の割れるような音が鳴る。
「......なんと凄まじい、オーラの量」
再度、スサノオもオーラの巨大な盾を発現しレイの攻撃を迎え撃とうと構える。
「僕は」
「?」
ゆっくりとダガーを振りかぶり、構える。
「僕はもう、何も失いたくない......だから、君とは戦わない」
「!!」
レイの構えたダガーは放たれる事は無かった、が、スサノオの足元から無数の木の根が地面から噴き出すように出てきてその体を絡め取り壁へと縛り付ける。
「しまっ、」
(――ダガーはフェイク!?)
「じゃあね」
――僕は良いとして......せっかく助けに来たアトラと教徒に何かがあったら嫌だ。だからここは退く。
教徒幹部の部屋は......あそこか!
レイが結界を破壊する音が響く。それと同時にスサノオの叫びにも似た声がする。
「――レイ! 待って、待ちなさい!」
それを無視し、教徒幹部を独房から出す。
「はじめまして、僕はレイ......ある人に頼まれて君を助けに来た。 怪く思うかもしれないけれど、時間が無い、今はただ僕についてきてほしい......良いかな」
白いローブで覆われている教徒が小さく頷いた。
(ずいぶん素直だな......でも、助かった)
スサノオが体に巻き付く輝く樹の根を外そうともがく。しかし、びくともしない。
「......ッ!!」
(あと少しで......私の能力が発動し、聖騎士も到着した......のに、読まれた......ッ!!)
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