14.止まれない
中で衣擦れの音がし、数秒の後に返答が来た。
「......お前、その声......本当にレイ、なのか? なぜ、ここんな所に......!?」
――アトラの、声。
「良かった、覚えててくれて......訳は後で話す。 とりあえず、ここから出よう」
「は!? で、出る? な、なぜ?」
「質問は後でだ。 危ないから扉から離れていて......こい、『セフィロト』」
床を割り、光り輝く樹が現れる。セフィロトはユグドラシルから伸びる枝。これによりマナの供給速度が増す上、更にオーラの保有限界を増幅させる事ができる。
セフィロトを顕現させている状態のレイは、アルフィルクのオーラ保有量の約12倍。
「いくよ」
レイの右拳に小さな太陽と見紛う程の熱量が宿る。
そのオーラ量は拳に纏うモノだけでも、ゆうにアルフィルクが保有していた全ての魔力量を超えていた。
「――シッ!!」
レイがその拳で、独房を覆っていた結界をいとも簡単に扉ごと撃ち抜いてしまう。
「!!? ......な、何だと......」
呆気にとられるアトラにレイは急ぐよう促す。
「......いこう、早くしないと追手が」
しかし、レイの思いとは裏腹にアトラは険しい面持ちだった。
「いや......レイ、俺は行けない......わかっているだろ? 俺はあの村での罪を償わなければならないんだ、沢山の命を......身勝手な理由で奪ったんだから。 その償いをしなければならない」
過去にアトラがおこした過ち。仲間への裏切りと、村人の犠牲。
アトラの身にかかるその重圧は計り知れない。
「うん......でも、アトラ。 それは償いにはならない。 アトラは知っている? ......この国の裏で暗躍し、支配している魔族の存在を」
「......魔族が、国を?」
普通ならこんな馬鹿げた話なんて信用しないだろう。しかし、レイは覚悟を決めている。
「突然そんな事をいわれても困惑するばかりだと思う......だけど、」
――息を挟んだ瞬間。「それは言うべきではない」と、誰かに囁かれた気がした。
「......君の家族が悲運な死を遂げたのも、もしかすると彼らの差金かもしれない。 だから、僕と来て......この国を正すために、新たな悲劇を生ませないために。 君の力が必要なんだ」
「俺の......力」
家族を引き合いに出す。これが最低なやり方だということはレイは理解している。
だが、アトラには理由を作ってやらなければ、彼をここに縛り付けている呪縛からは逃れられない。
「......そうか、わかった。 ......元々はお前に拾われた命だ、お前の好きにしろ......詳しい話は後で聞かせてくれ」
胸の奥を指先で引っ掻かれる。そんな痛みが走った気がした。
「ありがとう。 行こう」
「――ダメよ、レイ。 あなたはどこにも行かせない」
花の綻ぶような、美しい女性の声が二人の動きを制止した。
◆◇◆◇◆◇
――ギィンッ!!
結界と刃の撃ち合う音がフロアに響く。
独房に収監されている罪人達が侵入者のいることに気が付き、騒ぎ出している。
『頼む、出してくれー!』
『あけろー! あけてくれー!!』
『なんでもする! ここから出られればなんでもするぜ!』
アリオトは辟易したようで、溜息をつく。
「ちっ、まったく......五月蝿くて敵わんなッ!」
イオリは彼の意識が囚人へと割かれた、一瞬の隙きを見逃さない。
――先ずは、眼!視界を奪う!
横一閃に振り抜く刃、ロキ父親の眼を斬り裂いた
ように見えた、が。
「! 斬れてねえ......ッ!?」
驚くイオリを「フン」と笑い捨てる、アリオト。その目は侮蔑を色濃く映す。
「......当然だ。 私達、結界師一族のオーラはそのオーラ自体に拒絶の力を持つ......貴様の攻撃はどこまでいっても私に届くことは無いんだよ」
――攻撃が......届かない!?つーことはアリオトはオーラを纏っている限り、無敵って事かい!?
「そーかよ、だったら......!」
――だったら?だったらどうする?
......あれ、もしかしてこれ、勝ち目ねえのか?
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