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12.不敵

 


 ――ドガァ!!


 レイの一撃に、吹き飛ばされるアリオト。


 その光景にイオリがニヤリと笑みを見せる。


 ――良いな!やはりレイの力は底知れねえ!!俺の命はコイツとの戦いに使う!!


 思いもよらない展開。アリオトは素早く上体を起こし、レイへ向き直るが、片膝をつき動けずにいた。


 思いもよらない状況に青ざめ、目を見開く。


 ――わ、私の......結界を、砕いた!?あ、有り得ん......今の結界はこの監獄に......それこそSSレートの魔族に使用しているレベルの強度だったんだぞ!?


 レイは突き出した拳をヒラヒラとさせ、アリオトを見下ろす。


「......貴方が僕の事をどう思おうと勝手だ、けど」


 レイのドス黒い殺気が、じわりと辺りに広がる。


「これ以上、僕の邪魔をすれば......殺す」


 アリオトは自身の心臓が大きく跳ねたのを感じた。


 ――その殺気は脅しでも虚勢でもなく、「威嚇」の意。一度だけは見逃すという、レイの癖であり根底にある優しさだった。


 ――そして、イオリはレイを分析する。


(......おそらくは、レイがアリオトを殺すことなど容易く、例えるならば、そこらに生える草花をむしるような感覚だろう。 あの緋色の眼......)


 レイの瞳に映る暗冥とした虚無の色は、アリオトを命として見てない。


 そしてさらに、防御に用いた強固であるはずの結界を、容易く破壊した事実。レイとアリオトには天と地ほどの実力差があることがわかる。


 そして一方、死の恐怖に苛まれるアリオト。だが......監獄長たる責任感から、かろうじて冷静さを取り戻した。


 ――お、落ち着け......そうだ、いくら奴が強くとも私を殺すことなどできない。


「......殺すか、フッ......奴隷の分際でよくいう。 その足りない頭でも、それが無理な事は理解しているだろう?」


 ゆっくり立ち上がるアリオト。


「ここの監獄は私から放たれるオーラが基盤となっている......その私を殺せば、一部の独房からは魔族や凶悪な囚人が解放される事になる、そうなれば――」


「いや、関係ない」


「は?」


「それでも僕は構わないよ。 邪魔な奴は全部殺せば良いだけだ......そして、僕にはそれが出来る」


「......な、なにを......言って」


 ――こいつ、何を言っている?この監獄にはSSレートを超える魔族や罪人が100体以上収監されているんだぞ?

 それを......全て、殺す?


 イオリは二人のやり取りを聞きながら、レイならばそれが可能だと確信する。


 ――だが、それをしてしまえばレイは国への反逆の罪で追われる事になる。そうなれば俺がレイと戦うことが難しくなるのは必然......で、あれば。

 ※イオリはレイが既に罪人として追われていることを知りません。


 バキィン!!


 イオリを覆う結界が破壊された。


「......!」「ッ!?」


 レイとアリオト、二人の視線がイオリへと向く。


「レイ、先に行け。 アリオトは俺が足止めしといてやる」



 ――そう言うと、イオリは不敵に微笑んだ。







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