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10.強者

 


 ――ギィイインッ!!



「ふっ、シッ!」


 イオリの刀をダガーでさばき続けるレイ。


「......!」


 レイの幾度も過ぎるその太刀筋は、今までみた誰よりも美しい弧を描いていた。


 ――この人、凄く強い。


 レイには相手の攻撃を観る癖がある。


 戦闘による経験値の蓄積、ダンジョン内外の幾重にも重ねてきたそれが彼の強さの根底。


 と、同時にそれは悪癖でもあった。


 ――美しい太刀筋......見惚れてしまうな、だが。


 心奪われるその斬撃。しかし、時間の無いことを思い出し反撃に移ろうとした――その時。


「お前、クソつええな......斬れるイメージがわかねえ!

 んな相手は初めてだぜ! はははっ」


 嵐のような斬撃が、ピタリと止んだ。


「なあ、お前。 名前はなんつーんだ?」


「......君に名乗る名前なんて無いよ」


「つれねーこと言うなよ。 俺は嬉しいんだ、お前のような強者と出会えたことが! まだ数分の斬り結び......しかし、だからこそわかる。 お前は俺が今までに出会った事の無い最上の強者だと言うことがな!!」


 饒舌に鳴らす言音に興奮が伝わってくる。


「そう......それで?」


 ――邪魔者は、誰であろうと......


「ああ、それでなんだけどよ......」


 ――殺す。




「俺と友達(ダチ)になろうぜ」






「......は?」



 レイの思考が停止した。



 ――な、何を......え、なんて言ったんだ?今?



「お前のような奴はそうそう居ない! 俺はお前が気に入った! だから俺とダチになってくれ!!」


「意味がわからない、僕らは今殺し合いをしていただろ? なぜ急に......友達」


 遮るように彼が口を挟む。


「いや、まあな、ここで全力で殺し合ってもいずれ邪魔が入るだろうからさあ......そうなれば俺とお前の最高の戦いが不完全燃焼することは確実だよな、満足に楽しめねえだろ。 だからよ、この場は俺がお前に協力する! さっさと用事を済ませてきな!」



 ――は......え、え?


 戸惑いを奥底へ隠し、ポーカーフェイスのレイ。


 ――こいつ、もしかして会話が出来ないタイプか?......い、いや、諦めるか!


「......朱雀隊長、きみは聖騎士の隊長だろう、何が目的なんだ?」


「俺の目的はお前との至高のバトル!! 聖騎士の隊長なんざ押し付けられてイヤイヤやってるだけだからなァ、別にどうでもいい!」


 ......聞いていたけど本当に戦闘狂なんだな。


「しかし良いのかよ、ここでのんびりお話しして。 そろそろ奴等が駆けつけてくると思うぞ? ......多分、お前でも苦戦するんじゃねえか、結界師と王直属騎士は」


 確かに、時間をかけている暇は無い。


 ......この感じ、今の話に嘘は無い。


 で、あれば。使うだけ使って、適当なところで殺そうか。


「少しでも妙な動きを見せれば、殺す」


「オーケー......だが此処から出たら改めてバトルだ。 まあ、場所は整えてだがな」


 満足そうにウンウンと頷く。


「それで、お前の目的はなんだ? こんな所にいるんだ誰かを解放しに来たのか?」


「まあ、そんな所。 地下200階まで行きたい」


「ああ、わかった、行こうか」


 二人駆け出し、彼と教徒の居る独房へ急ぐ。


「そう言えば、お前、独房には結界師が個別に結界を張っているが、それはどうする気だ? 収監されている奴にはSSレート魔族だっているが、そいつらが破壊できないクラスの強度だぞ」


 この監獄の独房は複数人の結界師が、交代で結界を張り続けている。

 その結界は並大抵の攻撃ではびくともせず、また結界が二重に張られている為、隙間から脱走という方法も叶わない。


「うん......それは多分、大丈夫」


 ――ガキィン!!


「「!!?」」


 横に並んで走っていた朱雀隊長が突然、半透明の球体に閉じ込められた。

 レイにもそれは襲いかかったが、超人的な反射速度で回避し、距離をとる。


 監獄の奥の奥、影の奥、闇の中に待ち構えるよう――


「朱雀隊長、貴様は一体いつまで遊んでいるんだ?」



 ――彼は居た。



 彼と同じ、金色の頭髪。


 長身と結界師一族の白の戦闘服である白の袴。


 ――彼は、ロキ・ヴィドラドールの父親、つまりこの監獄の最高責任者であり、ヴィドラドール家の公爵。



『アリオト・ヴィドラドール』だ。




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