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ジップロック

作者: 羽生河四ノ

知り合いの町丸智子が、後方死角から突然自分めがけてぶつかってきた。

「ぐああ!」

本当に突然の事でこっちはその場に無様に倒れそうになった。ダンプでも突っ込んできたのかと思った。ダンプは言い過ぎとしても軽自動車か何かが突っ込んできたのかとは思った。アクセルとブレーキ間違えたのかと。私はコンビニとか調剤薬局じゃないぞって思った。困惑を感じた。

しかし、

「ねえ」

と、その声音を聞いた瞬間、町丸このやろう。って困惑は憤りに変化した。


「なんだ何してんだお前」

ぶっ●すぞ!町●この野郎!ぶっ●すぞ!ぶっ●すぞ!


「ねえ、そんな事よりも」

そんな事ってなんだよ。そんな事じゃねえよ。こっちは転ぶところだったんだぞ。ふざけたことをやめろ。大人としての行動をとれよ。ぶっ殺すぞ!あ、ぶっ●すぞ!


「そんな事よりさあ!」

町●は若干ションテンの高い声でこちらの気勢を削ぐと、急に顔面をぐぐっと寄せてきて、

「流れ星持ってるんだけど見たくない?」

と言った。


ああ、町●さん頭がおかしくなったんだろうか。そう言えば寒いと寒いで鬱になるというニュースをヤフーか何かで見たことあるなあ。それかな?夏は夏の暑さで鬱になる。冬は冬の寒さで鬱になる。季節の変わり目に鬱になる。頑張りすぎたら鬱になる。仕事が忙しすぎたら鬱になる。やりたくない事を延々とやってたら鬱になる。普通に生活してても鬱になる。不幸でも鬱になるし、幸福でも鬱になる時は鬱になる。町●さんもそれかな?


なんかそんな事を考えていると、


「ほら、こないだふたご座流星群だったじゃん。で、あの時私の住んでる家の裏の公園に一個落ちてきてさ。で、お前には特別に今見せてやるよ」

と言って、運動部の高校生がしょってる様なノースフェイスのカバンを背中から前にしょい直してジッパー開けてごそごそしだした。


で、こっちは見るつもりなかったんだけど、町●が目の前でカバンを開けてごそごそしだすもんだから、自分にもそのノースフェイスのカバンの中が覗き見れてしまって、で、つい、

「お前、カバンの中身ジップロックばっかりだな!」

ってなった。つい言ってしまった。つい。


「あ、ば、見るなよお前!」

町●はその時初めて気が付いたのか、急に女子面みたいになった。で、体をそらせてカバンを隠そうとした。


いやもう遅いよ。


見ちゃったもんもう。


町●のカバンの中はジップロックで小分けされた色々が所狭しと収納されていた。


今流行りの(今流行りかどうか知らない。前からかもしれない)ジップロック女子だ。


化粧品とか、財布とか、スマホとか、下着とかさ、着替えとか、折り畳み傘とかも全部小分けにしてジップロックに入れてるんだろ?


「お前、この野郎!」

町●が怒ったみたいな顔をした。いやでもさ、


「こっちはむしろありがとう」

「あ?」

「いや、前にネットで見たんだけどジップロック女子。本当に居るんだって思って。ジップロック女子って。だからありがとう。いいもん見れた。ありがとう。ホントありがとう愛してる」

ホントに。


「な・・・」

その後町●が無言で殴ってきた。


ノースフェイスのジッパー開けたまんまで激しく殴ってきたもんだから、町●のカバンからジップロックに入った化粧品の類が飛び出してた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い!  町丸智子ね。丸が●伏せ字になっているのが謎。主人公も智ちゃんも好きなキャラクターな予感しかないです。 『流れ星を持ってる』なんてロマンチックで詩人。智ちん、双子座流星群の欠…
[一言] ジップロック流行ってるんですかね〜。
2021/12/21 14:56 退会済み
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