わるい王さま(伝説) 5
ナーシャの邪魔をしないために何も考えないように、何も考えないために何も聞かないようにしていたけど、でもこれは結局ナーシャ一人に全てを任せることになってしまうんじゃ。またナーシャに全てを任せることになってしまうんじゃ。ナーシャが内緒も話してくれようとしているのに、新たな疑問を俺が遠ざけてしまってていいのか。
「向き合おうとするところは素晴らしいと思うわ。あなたが変わってきていることが、私の力によることなのではないかと期待してしまうわ」
「それで、何があったの? 彼女はだれだったの?」
たぶんナーシャにわからないことは俺にもわからない。俺は天才だけれど、所詮は俺は存在している人間だから、俺が創り出したナーシャの天才ぶりにはだれも勝てない。いくら俺でも勝てない。
俺の質問に、ナーシャは答えてくれなかった。ちっとも彼女は口を開かなかった。この流れでそんなことあるか? と思っていたところで、迷っている様子ながらやっとナーシャが答えをくれた。
「それがね、わからないのよ。こっちは動けないものだから、取り逃がしてしまったわ。何も起こりはしなかった。何もわからなかった。彼女がだれなのか、会話にもならないもので、さっぱりわかりはしなかった。あの様子ならすぐにまた私たちの前に姿を現すでしょう。そのときになったら自分で話してくれるんじゃないかしら。構ってほしくて仕方がなさそうだもの」
言われてみれば、本当に俺たちに何もわからせないようにするのなら、わざわざ俺たちの前に姿を現す必要なんてない。つまり構ってちゃんってことだ。それだったら、こっちが気にしていないような感じをしていれば、可愛く可愛く可愛い感じでまた来てくれるだろう。今度は顔も見せてくれるかな。ナーシャと二人で俺の取り合いになっちゃったら大変だな、困っちゃうな。
「あなた、なんかキャラ変わった?」
「え?」
「成長してくれてるのは嬉しいんだけど、それ以外にも、なんか変わって来てるわよね。あなたなんか、その、明るくなったというのかしら。あ、褒めてるわよ」
「ナーシャは俺の理想の美少女なわけだし、ナーシャが本当に会いに来てくれたらと思っていたから、最初っから俺はナーシャのことが好き。だけどだんだんもっともっと好きになって来てて、だからだと思うよ」
何を言っても暗い牢屋の中ではちっともロマンティックにはならない。それでもいつもナーシャのことは可愛い大好き好き好き言っているけど、こうやって本気で言うとちょっとかっこつけてるみたいだし、照れるというか恥ずかしいところもあった。いつも言っているナーシャへの想いも嘘じゃないんだけど、今のは言い方が自分でもキザみたいでなんか恥ずかしかった。




