プロローグ 2
前作『ニートの俺が異世界転生で史上最強になって、ラブコメ青春を謳歌して人生勝ち組な件』は、「パクリ」だの「小学生なみ」だの言われて削除することにした。社会は俺の名作ラノベの価値がわからないのか、面白いと思っているから嫉妬して文句を言っているに違いない。が、これ以上の誹謗中傷には耐えられないので消した。
やはり同じく小説をネットで投稿している人は俺の才能を理解できるのか、ツイッターで相互感想を希望したときには、みんな俺の小説は「面白い」や「才能がある」というように言ってくれる。「新しい設定だ」と相互レビューで紹介してくれた人もいたのだから、パクリだなんて感想を書いてくる人はやはり急上昇で一日だけとはいえランキングに乗った俺の作品を見て、嫉妬したに違いない。
それなりに人気だった前作を削除してしまった俺は、国語の授業中に、新作の第一話をノートに書き進めていた。タイトルは『普通の高校生だった俺に突然美少女すぎる妹ができて、妹のために異世界で無双することになった件』だ。
俺は高校二年生で、小説家だ。まだ書籍化というところまではいっていないが、そのうち人気が出て書籍化の誘いが来るのは間違いないだろうと思われる。今は一時的に一作も投降していない状態になっているけれど、今日家に帰ってから新作を投降したら、また人気が跳ね上がってランキングに入ることは確かだろう。今度こそ、誹謗中傷をしたいだけのアンチに負けるわけにはいかない。
いきなり妹ができるという設定は新しいだろう。この斬新さでもパクリだといわれるようなことがあるんだとしたら、その人の読解力を疑うか、やはり俺に嫉妬しているだけのことなのだろうから無視しよう。そもそもああいった誹謗中傷は、読者の声を取り入れようと思ってきちんと感想を読んでいる読者想いな俺の気持ちを踏みなじることであって、どうしてそういうことができるのかその神経を疑う。相互評価を募集しているツイッターの方にも、相互の誘いを入れてくれる人とは別に、それに対して文句を言ってくるような人がいる。自分がどういうことをしているか、わかっていないのだろうか。
授業終了のチャイムが響く。
それを合図にリア充は立ち上がり群れ出す。本当に死ねばいいのに、いつも通りな光景に苛立ちながらリア充たちを見ていると、急にひどい頭痛が俺を襲った。世界が歪む。全てが歪んで見える。
「ダリの『記憶の固執』のように、とか言えないわけ? なんでもいいけど、仮にも作家を目指しているっていうんなら、比喩くらいは使えるようにならないとだめね」
隣から萌え声が聞こえて来た。突然の眩しさの後、目を開くとそこは知らない世界だった。目の前に立っているのはロリ、俺が想像していたナーシャそのままだった。
「私はアナスタシアよ。ま、ナーシャと呼んでくれて構わないわ。あなたの才能とやら、私が見極めてあげる。いいえ、それは少し違うかしら。……あなたの才能とやら、私が思い知らせてあげる。余計なお世話だと感謝することね」
それからナーシャは笑顔で付け足した、「そういえば、萌え声って表現は論外よ」。