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祥と翔~友達発親友経由xx行き~  作者: 桐生夏樹
第八幕 ライブデビュー
37/66

第一曲 ライブ当日(前編)


 --ピピピピピピ

 --ポチッ


 ふあああ……


 布団の中から手探りで目覚まし時計のアラームを止める。

 やっぱり、あまり眠れなかったな。ライブのことを考えるとドキドキワクワク、そして、ちょっぴり、いや、だいぶ不安もあって中々寝付くことができなかった。ライブの度に、こんな気持ちになるのかなあ……勘弁してほしい。


 うわあ……いよいよ今日か。数時間後にはライブ会場のステージに立っていると思うとドキドキが止まらない。


「かけるたーん! おっはよー!」


「ぐほっ!」


 姉さんが僕の布団にダイブしてきた。そして、僕の布団をめくり、一緒に中に入る。


「翔ちゃん。あったかーい。おはようのキスは? 大好きなお姉さんに、おはようのキスは?」


「しねーよっ! ほら、起きるぞ!」


 姉さんに抱き着かれそうになって、慌てて布団から起き上がる。まったく朝から欲情しないで欲しいよな。なにが『アイスドール』だ。昨日の弘子さんからの発言を思い出したが、今の姿からは想像もつかないな。


「まったくー翔たんは、つれないんだからー」


 布団に寝そべりながら、半身を起こし僕の方を恨めしそうに見ている。キャミソールの片側の肩ひもが、ずり落ちて今にも胸があらわになりそうだ。


「ほら、おっぱい見えそうだからちゃんとして!」


「んー? 全部脱いでもいいのだよーみたい? いいよ。てへ」


「脱がなくていいから! ハウス!」


「ちぇー……でもそんな翔たんも好きだよ」


「出ていけー!」


 ただでさえ胸の谷間が見えているだけでも、いやらしい感じになっているのに全部脱ぐとか、からかうのも程々《ほどほど》にしてほしいな。いや、本気の方が困るけれど。この姿を写真に収めて弘子さんに見て欲しいくらいだ。


「じゃあ今日頑張ってね! 楽しみにしてるよ!」


「はいはい」


--バタン!


 姉さんが鼻歌を歌いながら出て行った。

 ライブ当日で緊張している僕の気持ちをほぐしてくれようとしているのかな。……いや違うな。目が本気だった。



 さあ、準備をして会場に向かわなきゃ。今日は現地集合……と言っても場所は学校だ。学校内の具体的な場所は『当日のお楽しみ』とか言って教えてくれなかったのだけれど、例の格技場では無いのかな。畳がいいとか何とか言っていたみたいだし。


 ライブの支度をして家を出ると、まだ時間はあるのに気がはやって駆け足になってしまう。走っているとベースケースのストラップが肩からずり落ちてきて何回も背負いなおす。


「しょーちゃあん!」


 後ろから僕を呼ぶ声がする。走りながら振り向くとチビトリオの3人が僕のことをバタバタと追いかけてくる姿が見えたので、足を止めて彼女たちの到着を待った。


「し……翔ちゃん。まだ……時間に余裕あるのに、そんなに……走らなくたって……大丈夫だよ……ハァハァ」


「なんか落ち着かなくて、無意識に走っちゃってたよ」


 理津美が息を切らせて、僕のことを非難する。そこまで言うのだったら、そんな息を切らせてまで、ワザワザ僕に合わせて走ってくることないのにな。ゆっくり来ればいいのに。


「で、どうなのよ? ライブへの意気込みは?」


 玲子が、背伸びをしてマイクを握った風の手を、僕の目の前に差し出し問いかけた。その勢いに僕は思わずりながら答える。


「ど、どうって。僕は一曲だけだし何とかなるさ……たぶん……」


「たぶん……って、しっかりしなさいよ!」


 横に居た理津美は、僕の背中を叩き激励した。まあ、理津美の方が担当する曲は僕より全然多いから何か言いたくなる気持ちもわかるけれどね。


「りっちゃんは、今日、全曲弾くんだよね?」


「んーフルフルでは無いかな。キーボが無い曲もあるし……って翔ちゃんリハ見ていなかったの?」


「あ……そうだっけ? ごめんごめん」


 自分のことが精一杯で、ベースの弘子さん中心に見ていたから理津美まで気が回らなかったのが正直なところだ。


 きっと今日のライブはほとんどの時間をステージのそででみることになると思うけれど、間近でみるライブの迫力はどんなものなんだろうか……まあ、その分裏方の仕事も率先してやらなければいけないから落ち着いて見れないかな。


 学校に到着すると他のメンバーが既に集まっていた。予定した集合時間よりも大分早いのに皆気合いが入っているのだな。


「弟~! 遅いじゃないかあ!」


「集合時間よりは大分早いだろ! 放せよ!」


 当り前のように祥が抱き着いてくる。もう人目とか関係ないんだな……冗談ぽく振る舞ってはいるけれど……冗談だよ、な?


「あ、あのう……これ、良かったら受け取ってくれないかなあ?」


 直美が赤くなって照れながら祥に大きな紙袋を手渡した。同じ紙袋を理津美と玲子も持っている。さっきから気づいてはいたけれど理津美がライブで使う道具を皆で持っているのかと思ってた。


「んーなになにー?」


 ガサゴソと祥が袋の中身を漁っている。この場で大荷物を渡すってなんだろう。お菓子とか、お弁当とかか、な……?


「なになに……? うわおっ!」


 祥の後ろから袋の中を覗き込んでいた拓人が両手を上げて歓声をあげた。紙袋から出てきたのは……服……? 弘子さんが祥から紙袋を奪って中を覗き込んだ。


「ちょっと貸して! あっ! これ今日の衣装?!」


「そ、そーですう……もし良かったら……」


「うわー助かるー! 今日は制服ライブって聞いていたから、私だけ皆と学校違くて、一人で違う制服って浮いちゃうかなって思ってたんだよね~早く着替えたい!」


「私たち3人で頑張って衣装を作ったんですよー。とは言っても。りっちゃんが、ほとんどやってくれたのですけどー」


 出来上がった衣装を見て跳びあがって喜ぶ弘子さん。言われてみれば確かに弘子さんだけ慶女けいじょの制服だから、少し抵抗あったかもな。でも僕は慶女の制服って可愛くて好きだけどな。


 へえ……チビトリオも、ただのにぎやかしだけでは無くて、やる時はやるんだな。もしかしたら弘子さんの気持ちを汲んでのアイデアだったのかもしれない。


 --ん?


『こんにちは。久しぶりですね。祥くん』


 背後から男が祥に向かって声をかけた。


 --誰だ?


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