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祥と翔~友達発親友経由xx行き~  作者: 桐生夏樹
第七幕 日々是練習
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第四曲 戯れ


 スタジオってスゴいよな。


 家に帰ってからも僕の中でスタジオの熱気が冷めやらぬ状態だった。心地よい緊張感に包まれて演奏を行うのは溜まらない。祥と出会えて本当に良かったと心から思う。彼が僕の唯一と言っていいくらいの『長所』を見つけてくれたから、今の僕があるのだ。


 家に帰ってベースを取り出し、チューニング後に『POWの達也さん』から貰ったミニアンプをシールドでベースに繋ぐ。ここまでの動作は家に帰ってからのルーティンになっている。特にチューニングの最中は幸せな気分だ。


 ブリドリのメンバーである喜びと誇り。まだライブデビューはしていないけれど、彼らと音を共有できるなんて、これ以上の幸せがあるのだろうか。


「かーけーるちゃあああん!」


「な、なに?!」


 姉さんに後ろからいきなりぎゅーっと抱きつかれた。力いっぱい身体を締め付けられる……く、くるしい……


「かわいい弟を愛でてるのだよう。可愛いなあ……もー結婚しようよ~」


「ちょっと止めて! おっぱいが背中についてるよ!」


「あはは。服脱いで生でおっぱい押し付けてあげようか?」


「や、め、ろ!」


 まったく。

 いつもこの調子なんだよな……早く彼氏でも作って弟離れして欲しい。まあ、この自由奔放なところが姉の良いところではあるのだけれど。そうそう、姉さんは僕のことを『しょう』では無くて『かける』って呼ぶんだ。そりゃあ家族だから本名で呼ぶよな。


「はああ……かけるたんは冷たいなあ……そこがまたいいんだけどねー」


「はいはい」


「もー怒らないでよ~ところでさーあ? ブリドリに、また女の子が入ったらしいじゃない」


 情報が早いな。また玲子がSNSで姉さんにチクったのか。全く迷惑な話だ。


「ああ……2人入ったよ。同級生とバイトの先輩」


「そのバイトの先輩って、慶女らしいじゃない。名前教えて!」


「えっと……弘子さんか……『白旗弘子しらはたひろこ』さんだよ」


「へえ! ひろちゃん! まじかっ!」


 弘子さんの名前を聞いて歓喜する姉さん。知っているのか……? 弘子さんは東京の高校に通っているから、姉さんは知らないはずだよな……あれ? ところで、姉さんって高校どこだっけ?


「え? かおりちゃん、弘子さんのことを知っているの?」


「知っているも何も、去年、生徒会で一緒だったよ。私が3年生の時に、ひろちゃんは1年生。1年間しか被らなかったけれどね。可愛い後輩だよ」


「一緒……香ちゃんって高校、慶蘭女子けいらんじょしだっけ?」


「ひっど! 姉の卒業した高校覚えていないなんて、ありえない!」


 姉さんが怒って僕にヘッドロックをかけてくる。確かに、この前弘子さんの制服を見た時に、『どこかで見たことがある』って思ったんだけれど、姉さんの制服だったのか。……と言うことは、姉さんも一流高校の出身……大学も上位だから、当然と言えば、当然か。


「香ちゃん痛いよ! それにおっぱいが! おっぱいが!」


「思春期かっ! そんなにおっぱいが欲しければこうしてやる!」


 姉さんは僕の前に周り、頬を両手で挟んで自分の胸に強く押し付けた。豊満な胸に僕の顔が埋もれて息が出来なくなる。姉さんの腕は僕の頭の後ろで、しっかりとホールドされている。


「ひゃめふぇきゅるしい……」


「あん! かけるちゃん動かないで。感じちゃうよ……」


「ひゃめて!」


 僕は叫んで、姉さんを両手で思い切り突き放した。全く、弟で感じないで欲しいよな。モテない訳じゃないんだから、ほんと早く男作ればいいのに。


「もう翔ちゃんったら……つれないんだからあ……」


「欲求不満なんじゃない?」


「えっ?! 欲求不満解消してくれるのっ?!」


「違う! 解消してくれるって……どんだけだよ。そうじゃなくてさあ……弟にすることじゃないってこと」


 姉さんと話していると調子が狂う。何かと理由をつけては逆セクハラしてくるし、本当に困ったものなのだ。練習したいから早く出ていってくれないかな。


 まずは話の方向を修正するか。姉さんの性格から言って、『出ていけ』と言っても素直に出て行ってくれないことはわかっている。


「あ、あのさあ……弘子さんって、どんな人だったの?」


「ああ……ひろちゃん? そうねえ……一言で言えば、真面目を絵にかいたような子……かな。生徒会の仕事も真面目にこなしてくれたし、信頼のおける子だったな」


「ふーん……そうなんだあ、今、生徒会長やっているらしいよ」


「あ、そうなんだ! やっぱりね~人望が、かなり厚い子だったからなあ……」


 人のつながりってわからないもんだな。世界は狭いって言うけれど、まさか弘子さんが姉さんの後輩だったなんて。姉さんの悪影響を受けていないかが凄く心配だけれど。


「ちなみに姉さんは、生徒会で何をやっていたの?」


「……ん? 生徒会長だよ?」


 姉さんは事もなげに言い切った。

 なんだって?! こんな近くにも凄い人が居たなんて!


「うそっ?!」


「嘘ついてどうするのよ? 信じられないのなら、ひろちゃんに聞いてみたら?」


「わかった。聞いてみる」


「信じられないのっ?!」


 姉さんが生徒会長なのを信じられない訳では無いけれど、学校では猫被ってるってことなんだろうな。


 弘子さんに会ったら、学校での姉さんが、どんな感じか聞いてみよう。そもそも、弘子さんは俺が弥勒寺香みろくじかおりの弟だってわかっているのかな。今まで、そんなこと言われたことが無かったし、良い機会だから聞いてみよう。


「練習したいから、もう出ていってよ」


「ええ~翔ちゃんのベース弾いてるところ見たい~」


「嫌だよ! 出て言ってよ!」


「冷たいなあ……わかったわよ。でもライブには絶対行くからね! 覚悟しておいてね!」


 --バタン!


 どんな捨て台詞だ……姉さんは、いつも僕の味方をしてくれるし、様々な場面で助けてくれる頼りになる存在だ。けれど、ブラコンすぎるのは勘弁して欲しいのだよな。


 僕は姉さんが部屋から出たことを確認して、やっとベースの練習に入った。


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