第四曲 理津美参入?!
『片瀬理津美をブリドリのキーボードとして迎え入れる。ちなみに片瀬は経験者だから次のライブは基本的にフル出場だ』
祥の宣言に今度はチビトリオが割って入る。トリオじゃないか。驚いていたのは玲子と直美だけだから。
「えっ?! 理っちゃん! 聞いてないよ! 翔ちゃんだけじゃなくて理っちゃんもブリドリ入るってどういうこと?!」
「理っちゃんてキーボード弾けるのかぁ知らなかったよ~スゴいなあ♪」
熱くなっている玲子と突っ込みどころがおかしい直美の両極端な反応に少し笑ってしまう。
理津美は直美の言葉に複雑な顔で笑いながら2人の質問に答えた。
「うーん……翔ちゃんが勧誘された次の日に祥くんから誘われたの。だから、まずは翔ちゃんの答えを聞いてから返事するってことにしたんだけど彼の中では翔ちゃんがOKしたら私がブリドリ参入OKって都合良く解釈したみたいね」
裏で祥と理津美で、こんなやりとりがあったのか。賭けの対象にされているみたいで複雑な気分だ。続けて理津美は直美の質問にも答えた。
「あと、キーボードと言うかピアノは小さいころからやっていたし中学の時はバンドのヘルプでお手伝いさせて頂いたこともあったの。直ちゃんには言っていなかったかもしれないね」
「ふええ……そうなのかー理っちゃんすごいねえ♪」
感心している様子の直美だが、まだ玲子は納得していない様子だ。
「私も理っちゃんがキーボードしてるなんて知らなかった。それなのに祥くんが知っているのはどうして?」
「ほら、私と祥くんは同じクラスじゃない? たまたま音楽の授業でピアノの伴奏を先生から頼まれたことがあったの。その後、祥くんが私のことを凄く誉めてくれたのがきっかけかな。」
理津美は勉強は勿論、運動神経も良い。それに加えて楽器も弾けるとか凄すぎるだろ。でも、理津美の言葉だとバンドに入るかは僕が参入して初めて考えるってことだろ? まあ、彼女の話し方からして既に了承している感じだけど。
感心していた直美だが、少し浮かない顔をしている。
「翔ちゃんと理っちゃん……2人がブリドリ入ったら忙しくなるよね。ちょっぴり寂しいなあ……」
直美は隣に座っている理津美を見ながら悲しげな表情で話した。まあ、僕はともかくとして、中学の頃から仲良しの理津美がバンドを始めたら少なからず会う時間が減ってしまうことは間違いない。
しかも今、突然事実を知らされている状況に戸惑いもあるはず。それに理津美と玲子、直美は別クラスだから会わない時間がさらに増える。その分、逆に僕と会う時間が増えることになるんだよな。僕としても2人から理津美を奪っているようで複雑だ。
祥は、落ち込んでいる直美に声をかけた。
「石川もスタジオにいつでも遊びに来いよ。もちろん川名もね。」
「え~? いいのぉ? お邪魔にならないかな?」
「邪魔になんてならないさ。むしろ女の子が増えたって、うちのメンバー喜ぶしモチベーションも上がりそうだ」
祥の言葉にボーカルの拓人が、ウンウンと深く頷く。特にさっきまで暗かった拓人の目がキラリと光っていた。
「祥の数々のファインプレーに嬉しくてヨダレ出そうだわ! 可愛い女の子と3人も仲良くなれるなんてドキドキするぜ! しかも1人はメンバーなんて! たまんねぇ!」
「おい。本音がこぼれ出てるぞ」
盛る拓人に哲太が止めに入った。話は纏まりそうに思えたが、まだ玲子は何か言いたげな表情をしている。そんな空気を感じ取って祥は玲子に声を掛けた。
「どうした川名? 他に何か言いたいことはあるかい?」
祥は玲子の目を真っすぐに見つめた。さすがの玲子も顔を赤くして照れているようだ。まあ、祥ほどのイケメンから見つめられるなんて滅多にないだろうし仕方のないこととは思うが。僕とは良く睨み合いをしているけど、あれは怒りで顔を赤くしている感じだしな。
玲子は1回深呼吸をして、覚悟を決めて祥に自分の思いを伝えた。
「私も何か楽器できないかな?」
祥は玲子の言葉を聞いて「うーん」と腕組みをした。




