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第二曲 僕なりの結論


『バンドのメンバーにはならない』


 僕が断りの言葉を言い終わるや否やチビトリオから非難の声が次々と上がる。


「断るとかありえない!」

「ええー? うそー断っちゃうんだぁ?」

「この流れで何故?」


 半面、拓人、哲太は『しょうがないか』と言う表情で僕を見ている。彼らもブリドリ立ち上げの時は、今の僕と同じような境遇だったろうし気持ちがわからないでもないのだろう。ただ、祥一人だけは、余裕の笑みを浮かべている。


「なぁ弟? それだけで終わらないよな? もう少し詳しく君の見解を教えてくれるかな」


 祥は、僕の目を見て、心を見透かすかのように発言を促した。まったく、やり辛いな。


「うん。結論は、さっき言った通り、バンドのメンバーにはならない。僕はベースどころか楽器を弾いたことがない。そんな状態でバンドメンバーになるなんて言えないし、せっかく皆が築いてきた音を崩したくない」


「うん。なるほどね。それで?」


 祥は、僕の答えを想定していたかのように相槌を打つ。彼が作った台本を読まされているかのような気持ちになった。


「うん。それで。だけれども……ベースはやってみたい。だから、最初はブリドリ、『A Brief Dream To You』の正規メンバーでは無くて、最初はメンバー候補生と言う感じでベースを教わりたい。教えてください」


 言った。

 僕の気持ち伝わったかな。チビトリオもホッとした様子だ。


「なんだぁ紛らわしいな。最初からそう言えばいいじゃない!」

「ふ~ん……べーすはやるのかぁ……そっかあ……」

「まあ……翔ちゃんなりに悩んだのだろうし、納得できる答えではあるかな」


 拓人、哲太も『なるほどね』とうなずいている。

 ただ、祥だけは憮然とした表情だ。なんだ? 想定している答えじゃなかったのか? それとも想定している上で納得がいかないのか?

 僕は恐々と祥に聞いてみた。


「この結論でどうかな?」


 怖くて祥の顔を見ることができない。


「い、や、だ! いやだいやだ! 俺はスグにでも弟とバンドが組みたいんだ! 候補生とか言う上下関係じゃなくて仲間としてバンドを組みたいんだ! 俺は認めない!」


 祥は隣から僕の両肩を掴んで強く揺さぶった。

 祥の容姿端麗でクールなキャラと真逆な感じで駄々っ子のようだ。ギャップ萌えどころの騒ぎではない。拓人、哲太もびっくりしている。そして哲太が慌ててフォローに入った。


「しょうがないだろ。翔くんだって、悩んで出した結果だし、いきなり正規メンバーなんてプレッシャーにしかならないぞ。落としどころとしては妥当じゃないか?」


 哲太の大人の対応に救われた。だが、依然として祥は納得の行かない表情をしている。


「落としどころとか、妥当とか意味わかんねえ! 弟とライブするまで、『A Brief Dream To You』は活動を停止する!」


「ええ?!」


 祥の想定外の決断に当然ながら一同は驚きの声を上げた。これ、ヤバくないか?



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