第7話 突然の刺客
彼女ら4人は、あの時の現実の友情を、想いを取り戻した。ただ、1人を省いて・・・。
レイ、ジンと和解した翌日の午前8時・・・。「ふああ・・・、おはよう。」私は、あくびをして言った。「おはよう。」男3人は、同時に言った。ケイは料理を作っていた。「悪いなカヨ。冷蔵庫勝手に開けた。」「うん。ありがとう。」レイとジンは、テーブルの椅子に腰かけていた。ジンは眼鏡をかけタブレットを見て、レイは相変わらず銃を点検をしていた。私も椅子に腰かけた。
「ふっ・・・。」それを見て私は、少し微笑んだ。「どうした?」ジンは、こっちを向いて言った。「いや、スラム街にいた頃を思い出したのよ。」私たち4人は、同じブラジルのスラム街の出身だ。私たちは、スラム街で何度も危機を退いてきた。「・・・もう一人いたけどね。」レイは、呟いた。もう一人の名前は、ガイ・チャコブスキー。・・・現在は、エスペランザに入っている。「まさか、敵側につくとはねえ。」私は、寂しく言った。
「よし!出来たぞ。」ケイは、作った料理を運んできた。「そう言えば、ゲートはいつ開くの?」朝食を食べ始めた。「予定では、この世界の時間で今日の午後だよ。」レイが答えた。「そっか。」と他愛のない話をゲートが開くまで続けた。
そこから、9時間後の午後5時・・・。「あと、2時間か・・・。」ケイは、ため息交じりに呟いた。すると、「ん?」チャイムがなった。「郵便でーす。」モニターには郵便配達員が映っていた。「・・・郵便なんて頼んでたのか?」ケイは、何かを感じたかのように言った。「・・・頼んでないわよ?」私がそう言った瞬間、空気が一変した。
私は、玄関前で例の布を左手に持ちもう片方の手でドアノブを握った。他の3人は、私の少し後ろで武器を構えていた。私は3人とアイコンタクトを取って、3人はうなずいた。そして、ジンは眼鏡を外した。ドアノブをゆっくりと回した・・・。
すると、ドスッとドアを刃物が貫いた!「!?」一同は驚いたが、構えを解かなかった。今度は、窓ガラスの割れる音がした!と同時に、3人の軍隊のような格好をした男が入ってきた。そして、3人に襲いかかってきた!それを各々、受け止め窓から出ていった。それを軍服の男たちは追いかけていった。玄関の前にいる男は、ドアを切り裂いて開けた。「お届けに上がりました~♪」男が陽気な声で入ってきた。
入ってきた男は、すぐさま私に向かって槍で攻撃してきた。それを布を巻き付けた左手で受け止めた。「その声は?」私は、嫌な予感がした。「あらら、バレたか・・・。」男は帽子をとった。「ガイ!?」金髪にドレッドヘアーのガイだった。「・・・何であんたが来るのよ。」私は、舌打ちをした。(しかも、前より強い・・・!)私は、冷や汗をかいた。
(聞く暇もなかったわね・・・。まぁ、これで遠慮なく戦えるけど。)ケイたちが出て行って私は、少しほっとしていた。私は、ガイに左手で殴りかかった。それをガイは、私の左こぶしの軌道の外にすり下がった。「どうした?いつもの余裕がないぞ♪」ガイは、楽しそうに言った。「・・・相変わらず舐めた口調ね。」私は、鼻で笑った。「お前も相変わらず口が悪い・・・なっ!」ガイは、彼から見て左足で膝蹴りを入れてきた。それを私は、右手で受け止めた。
「なっ!?」私は、ガイの驚いた顔を左手で掴んだ。「ここは狭いでしょ?」そのまま、窓の外に出て屋上に片手で上がった。屋上についたとき直ぐさまガイは、恐らく刃渡り30センチあろう槍で刺してきた。それを予測した私は、すぐさま布を両手で広げ刃を受け止めた。(さすがに頑丈ね・・・。)私は、感心した。
ガイも予測していたように槍を縮こませた。左手に持ち替え、そのまま私に振り下ろした。私は、それを左手でガイの手首をそらして凌いだ。だが、「なっ!?」左手に縮こませた槍がなかった!棒は、右手に握られていた。「しまった・・・!」そして、棒を槍に変形させた勢いで、私に刺してきた・・・!
一方その頃、3人は・・・。「やれやれ・・・。力仕事は苦手なんだけどな・・・。よいしょ!」レイは、ため息をついて、麻酔銃で気絶させた軍服の男を拘束した。「これで下級兵だったけ?こりゃ、大変だな・・・。」この先のことを考えて、ため息をついた。立ち上がり、拳銃の空になった弾倉を捨て新たに装填した。「さて、今の時刻は・・・あと30分か。」18時30分だった。レイは、ゲートが開くカヨの付近へ軍服の男を引きずって向かった。
「クソッ!!」拘束された軍服の男だと思われた女は、歯を食いしばってジンを睨んだ。「・・・悪いな。うちのボスに殺すなって命令されてんだ。」ナイフに仕込んだワイヤーを外し、刃と持ち手を装着した。「ふざけるな!殺せ!」女は、大きな声を上げた。「・・・周りに聞こえたら面倒だぞ。」女は、顔を真っ赤にして無言で怒った。
「それに、お前たちは今回の作戦で捨てられるだそうだ。」ジンは冷静に言った。「何を・・・!」女は、荒げそうな声を抑えながら言った。「本当だよ。」と言ってジンは、女を担いだ。「おい!何をする!?」女は暴れまわった。そのまま、カヨの元へ急いだ。
「便利だな、この斧。」ケイは、2つに分けた片手斧を見ながら感心したように言った。「これで、電気流れたり、両刃になったり、ワイヤーで鎖鎌みたいにできるもんなあ。」ケイは、2つに分けた斧を1つに戻した。「よし、こいつを運ぶか・・・。」ケイは、斧の電流で気絶した軍服の男を担いだ。「・・・意外と重いな。」カヨのもとへ向かった。
一方、カヨは・・・。「はぁ・・・!はぁ・・・!」私は、左腕に出来た刺し傷を押さえていた。「俺がマジシャンだったの忘れてただろ?」ガイは、槍についた血を振り払った。「えぇ・・・。とんでもないミスね・・・。」私は、息を切らしていった。(しかも、体がなまってる・・・。)自分に嫌気がさした。
さっきほどの、フェイントは何とか防げたのだが、そこからガイが少し本気をだし猛攻撃が始まった。あまりにも速い攻撃を防ぐのがやっとだった。そうしてやっとできた隙をついて殴りかかった。そこまでは良かったのだが、フェイントにつぐフェイントをされ、今の状況に陥った。
「・・・ガキの頃は、お前と喧嘩するといつも負けてたなあ。」ガイは、懐かしそうに言った。「・・・ウィンモの時も私の方が上だった。」私は、鼻で笑いながら言った。傷口の近くで布を括りつけた。「その状態で冗談言えるか?普通?」ガイは、呆れたように言った。「さて・・・、続きを始めましょうか。」私は、深く呼吸をして空手のように構えた。ガイは、槍を両手で持ち、刃を自分の前方下に向けて構えた。そして、私とガイは走り出そうとした。
すると、私とガイの間にワイヤーでつながれた斧とナイフが飛んできた。私とガイは、動きを止めた。「助けに来たぞー。」ケイが棒読みで言った。ケイとジンは、斧とナイフを元に戻した。「意外と来るの早いな。さすが♪」ガイは、楽しそうに言った。「・・・どうする?この状況で戦うのか?」ジンは、相変わらずの真顔で言った。
「ああ言ってるけど、どうする?」私は鼻で笑いながら言った。「そうだな・・・。確かに分が悪いな。」ガイは、槍を棒状に変形させた。「ガイさん・・・!申し訳ございません・・・!」ジンに担がれている女はそう言った。「別にいいよ。もうお前たちは用済みだ。」ガイは、さっきまでの楽しそうな笑顔が一変して、冷たい真顔になった。「なっ!?ガ、ガイ様?」女は、騒然としていた。
「何?あなたたちのやり方だと殺すの?」私は質問した。「それは、俺の自由だろ?と思ってたけど・・・。」ため息をついた。「・・・お前たちが保護したみたいだし、帰るよ。」と言った瞬間、ガイは走り出した。「待て!ケイ!」ガイを追いかけようとしたケイをジンが止めた。ケイは、ジンを不満気に睨んだ。「・・・気持ちは分かるが、今の俺たちじゃどうしようもないだろ?」ジンは、私の方を見て言った。私は、頷いた。ガイは家々の屋根上を駆け抜けた。
ガイは、屋根から降りた。そして、右耳に付けているマイクを走りながらオンにした。『・・・何?』エスペランザ本部いる女が無愛想に言った。「何って報告だよ。」ガイは、不機嫌そうに言った。『どうだった?任務は?』女は、確認するように言った。「任務は、完了した。あの3人は連れていかれたが・・・。」ガイは、そう言った。『そうなんだ。良かったの?殺さなくて・・・。』女は、そう言った。「メインじゃないからいいんだよ。それに面倒な作業をしなくて済んだ。」ガイは、冷たい口調で言った。
『メインの方はどう?』女は、話を変えた。「ああ、カヨの戦闘データの採取は成功した。」ガイは、カヨの戦闘データが記録された記録器を取り戻した。『お疲れ様。大変だったでしょ?』女は、同情したように言った。「まあな。カヨの本気は、撮れなかったけど。」ガイは、記録器の立体ホログラムを展開した。『問題ないわね。これでカヨをある程度攻略できる。』女は、安心したように言った。
「そろそろ、目的地に着く。リン、ゲートを開けてくれ。」ガイは、そう言った。『はーい。じゃあ、また後で・・・。』リンと呼ばれた女は、そう言って通信を切った。ガイも切れたのを確認し、マイクをオフにした。「・・・何でこんな汚れ仕事ばかりなんだよ。」ガイは、不満気に呟いた。
視点はカヨたちに戻り・・・。「レイのやつ遅いな・・・。」ケイは、ため息交じりに呟いた。「聞こえてるよ!」私たちは、マンションの下を覗いた。「あなたって意外と地獄耳なのね。」私は、嫌味に言った。「うるさいな!いいから、こいつを上げるの手伝ってくれよ。」レイは、息を切らしながら言った。「・・・お前、運動音痴だもんな。」ジンは、少し微笑んで言った。そして、3階建てのマンションから飛び降りた。「おかげで筋力超増強剤を使うハメになったよ。」やれやれといった感じで、首を横に振った。
「よいしょっと!」レイは、マンションの屋上によじ登った。「ふう・・・。やっとついた。ん?」ジンを見つめてレイは、止まった。「・・・どうした?」ジンは、聞いた。「その人は起きてんだね。」ジンの担いでいた女は、うつむいていた。「まあ、いいや。そっちは、ちゃんと拘束しないとね。」拘束用のロープを取り出し、ケイが担いできた男に近づいた。「・・・そういう趣味?」「ほっとけ!」カヨの鋭いツッコミにレイは、動揺していた。
それから数分後、外の世界へのゲートが開いた。私たち4人は、ゲートの中に入り消えていった。ゲートを通り過ぎながら、私は後戻りできないことを実感した。と同時に、この先に巻き起こる闘争を覚悟した―――。
彼女らは、戻ってゆく。現実世界に、滅ぶ寸前の世界に戻ってゆく。今までの物語は、全て序章に過ぎない。そして、物語はここから始まる。