第5話 気に食わない来客
彼女は、彼らと再会した。しかし、それは因縁の再会であった。さて、彼らは一体何が目的なのだろうか。
カフェでの強盗から数日後・・・。「佳代ってあんなに強かったんだな。」「え?何のこと?」私は、聞いてなかったかのように言った。「それに・・・。」私の筋肉質な腕を見ながら、慶君は言った。「何よ?」私は、慶君を睨んで、両手を腰に当てて言った。「・・・何て言ったけかな?」慶君は誤魔化すように言った。
すると、「イテッ!?」突然、慶君が首を抑えた。「どうしたの?」私は、心配しているように言った。「何か痛みが・・・。」慶君はよろめき、気を失った。「慶君!?」私は、慶君に駆け寄った。
「・・・もう来たの?」私は、閑静な住宅街を見渡した。「意外と速いのね?」辺りはシーンと静まり返った。「・・・そろそろ出てきたら?」私は、溜息をついて言った。その時、私は臨戦態勢に入った。
「へえー。そんなに記憶を取り戻したんだ?」黒い服にフードを被った少年のような男が、馬鹿にしたように言って現れた。「おかげさまでね。・・・レイ・チェンチー。」私は、皮肉めいて言った。「じゃあよ。俺達と遊ぼうぜ。」同じ格好をした、大柄の男が現れた。「もう十分遊んだと思うけど・・・?ジン・クレイトン。」私は、空手のように構えた。
「レイ、それは何?」レイの持っている銃を見て言った。「ああ、これは最新の超小型弾丸拳銃だよ。って言っても、作ったのは僕けど・・・。」銃をポケットにしまった。「ちなみに、そこにいるケイを撃ったのは、この超小型ドローン・・・イッテ!」レイは、ジンに拳骨をうけた。「うるさいぞ。レイ。」「殴ることないだろう・・・。」レイは、頭を押さえてて言った。
「・・・つまらない漫才は終わった?」私は、呆れたように冷たく言った。「ああ。やっとな。」ジンがそう言った瞬間、空気が変わった。「あんたたち何しに来たの?」私は質問をした。「嫌だって言ったらどうする?」レイは、鼻で笑いながら言ったが顔は笑っていない。「説明してくれるの?」私は、ジョークのように言った。「力づくが好みかな?」ジンはそう言った。
しばらく、3人は静まり返った。「さて、そろそろ始めようか・・・。カヨ・グレイス。」青髪で辮髪のレイと緑髪でツーブロックにオールバックのジンは、フードをめくった。そして、レイはアイコンタクトを取って構えた。「な!?」レイとジンは同時に驚いた。私は走って、二人の顔を掴んだ。そのまま、走り抜け路地裏へ曲がった。
それをされている中、レイは銃を二丁、ジンはナイフを二本、それぞれ持った。それに気づいた私は、二人を地面に叩きつけた。二人は、頭から血を流したが怯むことなく銃弾を放ち、ナイフで切り付けてきた。が、私はそれを体を後ろにのけぞって避けた。その時、手を放したのでレイとジンはすぐさま立ち上がった。「強いな・・・。」「そうだね・・・。」二人は、額の血を拭って言った。「あんたたちもね。」私は、銃弾とナイフによるかすり傷の血を拭った。「そりゃどうも!」二人は、同時に言った。
ジンは真っ直ぐ走り出し、それを追いかける形でレイが走り出した。その数秒後、ジンは左にレイは右に旋回した。ジンが切り付けてきたがそれを私は、全て凌いだ。
一方でレイは、私の周りを回って撃つチャンスをうかがっていた。が私は、レイのいる向きに合わせて、ジンを凌ぎつつ向きを変えた。このコンビの得意戦術だ。私は戦いながら、自分の過去を思い出していた。
今から、2年前・・・。私は、もともとアメリカ軍に入っていた。・・・ということになっている。実際は、極秘裏に作られた裏組織の元ナンバー3の幹部だった。その組織の名は、世界中立保全組織、WNMO。名前の通り、世界中のありとあらゆる組織を軍事的、政治的、経済的に監視・保全・する中立組織だ。ちなみに、ジンはナンバー5、レイはナンバー4と慶君、本名ケイ・ロイドはナンバー6だ。
隠しきれないほど強大になった時があった。その後、世界中の人々に気づかれてしまった。それを利用したウィンモのトップは、これからの平和のために世界を一つにすると言い出した。それを計画として実行した。実行し始めた頃まではよかった。その計画によって実際に救われた人々、国々は存在した。しかし、反論を無視したり、デモを弾圧するなど、人々の意見を無視するところがあった。それについて、組織内で何度も揉めていた。そんな時、事件は起きた。
ウィンモの若い上級兵がアフリカで、クーデターを起こした人々を射殺したという事件が起きた。そこから、第三次世界大戦へとなってしまった。大戦は、1年以上続いた。これにより、ウィンモの幹部13人、下級兵、上級兵が半数の50万人が死亡した。他国の全滅した軍隊や犠牲者を含めれば世界の人口の半数が犠牲となった。しかも、使用された衛星兵器、人工衛星による攻撃によってアフリカ全土は人の住めない土地となってしまった。
これで終わりかと思われた。信用を失ったウィンモは、その後も強行を続け、組織内でその強行を進めるトップ側と反対するナンバー2側に分かれ全面戦争をした。私とケイは反対側、ジンとレイは推進側についた。結果は、反対側の完全敗北に終わった。私とケイを省く幹部、下級兵や上級兵は、全て死亡した。ケイは重傷を負い、私は死亡した幹部たちのおかげでケイと共に撤退できた。という、記憶は覚えているのだが、どうして死を繰り返していたのかは思い出せないでいた。
「・・・あんたたち、本気出してないでしょ?」ジンのナイフが私の首元で止まり、レイの銃口が後頭部で止まった。「何故そう思うんだ?」ジンがレイと同じく、手を引っ込めて言った。「あなたたちに殺意を感じないからよ。」ジンはレイの目を見た。「やっぱり、演技は苦手だな・・・。」レイは、ため息交じりに言った。「もう一度、言うわよ。あんたたちは何しに来たの?」私は、睨んで言った。「そう睨むなよ・・・。」へっ・・・と乾いた声でジンは笑った。レイは私の前に移動した。「君を迎えに来たんだよ。」・・・は?「何を言ってるの?冗談でしょ?」私は、動揺した。
「だから、迎えに来たんだよ。」レイは続ける。「うちのボスが世界を救って欲しいんだってさ。」訳が分からない。「ボスって、あなたたちのリーダーはウィンモの・・・。」「そっちじゃねえよ。」ジンは言った。「じゃあ、誰が?」私は、混乱していた。「君の父上だよ。」レイは言った。「親父が!?どうして?」私は更に混乱した。「時が来たんだよ。」ジンは言った。「君は、世界で唯一の希望だ。だから・・・。」ジンとレイは突然、頭を下げた。「どうか、世界を救って欲しい。」レイは言った。その日、私は自分の今の状況を思い出した―――。
彼女は、また一つ思い出した。ここに来た理由、意味を思い出した。