第4話 思い出した戦場
彼女は忘れている、自らの罪を。この偽りの平和ゆえにか、それとも・・・。しかし、この平和もいつかは終わりを迎える。
彼女の説明から数日後より・・・。私は今、慶君とデートをしている。繰り返していることを思い出してから、あの夢を見なくなった。見なくなったのはいいのだが、何故かとても嫌な予感がする。
「佳代、どうした?」慶君が心配そうに話しかけてきた。「ああ、ごめん。何でもない。ちょっと、考え事してた。」私と慶君は、カフェに居る。ちなみに、今の時刻は四時である。
「・・・そうか?大丈夫ならいいけど。」慶君は、拍子抜けしたように言った。「で?ええっと、何だったけ?ああ、そうそう・・・。」すると、カフェの入り口から明らかに苛立っている男が現れた。
「お客様、ご注文はござ・・・。」と店員が話しかけた瞬間、悲鳴が上がった。「テメエら全員、動くな!」店員は撃たれ、私たちは男にテープで縛られ人質となった。私と慶君が店に入ってから、約三十分後のことである。
数時間後・・・。男は、イライラしていた。どうやら男は、政治のことに熱心で、警察に総理大臣に代わるように電話しているようだ。だが、警察が応じる訳もない。それに、男はイライラしているようだ。
「クソッ!ふざけんな!」男は、店のテーブルを蹴り上げた。そして、男は私たちを睨んだ。「・・・こうなったら、あれをするしかないな。」男は、何か思いつめたように言った。私の感じた嫌な予感は、これではないかと思った
男は、警察に電話をした。そして、自分の提案を飲まなければ三十分置きに射殺するといった。言葉通りまた一人、射殺され悲鳴が上がった。。「次は、三十分後だ。人質が全滅するまで続ける。」男は、携帯を切った。
(このままじゃ、慶君も私も死んでしまう・・・!)すると、また世界が止まった。「私の出番かしらね?」彼女が現れ、相変わらず感情のこもっていない口調で言った。
「あ、あなたは!?」私は、驚いたように言った。「グレイスでいいわよ。」「え?」私は、唖然とした。「私の名前よ。」唐突にグレイスは言った。「あ、はい。よろしくグレイス。・・・じゃなくて!」私は、首を横に振った。
「あなた、この状況でよく冷静で居られるわね。」「ええ、誰かさんのおかげでね。」私は、皮肉たっぷりに言った。「で、何か用?」私は話を戻した。「あなたを助けようかと思ってきたのよ。」と男に触ろうとしながら言った。すると、グレイスの手がすり抜けた。
「なっ!?」「私あなた以外は、触れないのよね。」グレイスは、私のほうに近づいてきた。「だから、あなたに頑張ってもらうためにきたのよ。」グレイスは、しゃがみ込んで言った。「それはどういう・・・。」「言葉通りの意味よ。」グレイスは、私の顔を撫でながら言った。
「あなたは、救われて欲しかった・・・。」グレイスは、心なしか悲しそうな顔をしたように見えた。「何を言って・・・。」と同時に失っていた記憶の一部を思い出した。悲しく、残酷な記憶を―――。
「はっ!?」気がつくと世界が元に戻った。(あ、今捕まってるんだった。)記憶をもとに、男がこちらを見ていない隙にテープをほどいた。「おい!何してんだよ!」慶君は小声でそう言った。「大丈夫。私にいい考えがある。」そして、テープをそれぞれ半分にちぎって両手首、両足首に巻き付けた。
「ちょっと!」わざと、男に聞こえるように声を上げた。「静かにしろ!ぶっ殺すぞ!」男は、予想通り私に近づいてきた。「次はお前だ。」と銃口を向けた瞬間、銃を握っている腕をつかみ、掴んだまま男の後ろに回った。
「な!?」そして、男の肩に乗り首を両足で締め上げた。「どう?少しはさっきの二人の気持ちわかったかしら?」「ガァ!!」男は、もう片方の手で殴ろうとしたがそれを掴んだ。「まあ、こんなものじゃないけど・・・。」そのまま、後ろに倒れるなどして抵抗したがその後気絶した。そして、人質は解放され男は逮捕された。
その一部始終を見ていた者達がいた。「やっとお目覚めかよ。」フードを被った大柄な男が鼻で笑いながら言った。「全く悠長なもんだねえ。」同じ格好をした、しゃがみ込んでいる少年が嫌味を言った。佳代に危機が迫っていた―――。
彼女に危機が迫っている。これは、神の意思か?何者かの陰謀なのだろうか?どちらにせよ、その危機は影で大きいものが動いているに違いない。果たして彼女は、この危機を乗り切ることができるのだろうか。