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クリスマスの約束

作者: 西葫芦
掲載日:2017/07/28

 空も地面も区別のつかないほど全てが灰色に覆われた場所に、私は一人突っ立っていた。上着三重と下服二重に厚い手袋、スヌードを身に着けていた。気温は零度を下回り、まさしく極寒と言えよう。

 なぜ私がこんな所で棒のように突っ立っているのか。一人の女学生との待ち合わせがあったからである。本来、私のような二次元の世界にしか居場所のなかった人物は現実世界に何も期待はせず、自由奔放にその十七年という人生を歩んできた。しかし、数か月前にとある女学生が近寄って来たのだ。彼女は私と同じような人生を歩んできたと言う。互いの趣味が合い、沢山の話をし、いつしか好意を持つようになっていた。そして今日、彼女を誘ったのだが、何故か来ないのだ。本当に訳が分からない。

 右手の厚い手袋を外した。寒さが手を襲い、一瞬のうちに冷たく感覚を麻痺させる。その手を下服の右側のポケットの中に突っ込み、スマートフォンを取り出す。時間は九時半。待ち合わせ時間は九時、三十分も待っていた。メールのアイコンを親指で軽く押し、『待っています』とメールを女学生に送った。待つこと数十分経つが一向に返信が来なかった。


 私はついに、自分の立場というものを理解した。それは待ち合わせ時間に来なかった時点で分かっていた。しかし、自分が自分のためにそれを無意識に否定していたのである。

 私は不格好なフォームでその場を駆け出した。泥沼に変化した道を蹴り、真っ白い世界の一本道を「早く、早く」と自分の心に嘆きながら走った。体全体の感覚がなくなったとしても。

 自宅へ着いた。二重ロックされている扉を開け、家の冷え切った廊下を早々と歩き、自室の扉を強く開けた。そして勢いのままに寝台へと飛び込んだ。

 私しかいない家からは、無邪気に泣く子供のような声だけが響いていた。

 その日の夜、女学生から一通のメールが届いた。長く空白の続いた先には『ごめん』があるだけだった。


 それ以降、私は女学生とは一度も会っていない。

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