白い日後の苦悩!<前>
ちょっと長くなりそうなので、前、後編に分けます、すません。
バレンタインデーは、そりゃそりゃ悲惨だった。
何が楽しゅうてあの集団の中で聖なる日を迎えなければならなかったのか。俺は問いたい。全人類に問いたい。そりゃもう1日中でも問いただしてやるさ。間違っているのは並に生れた俺なのか!?…と。
いや、そういうのはまだいいんだ。奴等、顔だけはすげーから。ま、純也は俺と同じ位だが……あれ?俺今年0(智裕が投げてよこした大量のちょこれいとー共はカウントしない)だったのに、アイツ1こもらってなかったか…?…しかも、背ぇちっちゃくて可愛らしい子に………。そ、そうだ。そうだった。俺ってば、嫉妬の余り付せんびっちり純也の鞄に張り付けたんだった。
……問題は、そこからだ。
苦痛の聖・バレンタインも終盤の放課後。いつも通り、4人にほぼ連行されるようにして帰路についた訳だが。
「ハニー!」
にっこり笑った桃時に、口元に強烈な匂いのする布を押し当てられた。
「……も、桃時…お前もか……!!」
俺はブルータスって色黒かな…とか思いながら気絶した。
……おかしい。体がヌメヌメっと、ヌルヌルっとする。おまけになんだかほの温かい。俺はうっすらと目を開けた。
「おや、ダーリン。目が醒めましたか?」
一瞬誰だか分からなかった。
「…あ、木野か。眼鏡無かったから分からんかった。」
「眼鏡は邪魔でしたのでね。……貴方を舐めるのに。」
……は!?
と、言い返す間もなく、頬をぬるりと舐められた。何故!?何故俺べろんべろんされちゃってんの!!?
取り敢えず木野を引剥がそうとするが、手が動かない。縛られているらしい。……ヤバくないか?
そういえば腹の所とかすーすーして寒い。何故だろうと顔を下に向ける。
「……な、なにしとるですかお前等!!」
そこには、あー言いたくない言いたくない言いたくない!取り敢えず身の毛もよだつゆうな状況、とでも言っておこう。
「なにって。」
「俺とじゅんやんがハニーの乳首にチョコ塗ってベロベロ舐めてるだけやんかー。」
詳しく説明すんなああああああああああああああああああああ!!身の毛がよだっちゃうだろーが!!
「つーか桃時、じゅんやんってなんだよ……毎回呼ぶ度にあだ名かえんのやめて欲しいんだけど。」
「ええやん。かわええやん、じゅんやん。」
「いや、だからそーゆう問題じゃなくてな…。」
そんなどーでもいい話しながらも俺にハケでちょこれいとーみたいな茶色い液体……ぜってぇちょこれいとーではない!世の男性の夢と希望はこんな物じゃない!!…取り敢えずそれを塗るのはやめて欲しい。
本気でやめて欲しい。木野は俺の唇にちゅるちゅるするのをやめて欲しい。
まあ、ズボンを脱がされなかったのが唯一の救いか。いや、感謝しろみたいな目で見るのやめろ。俺の事思って…みたいになっているが、本当に俺の事思ってんなら今すぐこの行為をやめて頂きたい。
すげーイライラする、そして木野の隙間から下の状況を見てしまった。……死にたくなってきた。いや、死ぬのは無理、消えて無くなりたい。
「……や、山下君は何をやっているのかね…?」
俺の両足は、目の前に座り込んでいる山下に、何故か茶色い五本指ハイソックスをはかされていた。……ちげぇ。世の男性の夢と希望だ。
「大丈夫ですよ、ご主人様。俺、一度舐めて綺麗にしましたから。」
綺麗にしてからなら人の足を夢だらけにしていいのか。……夢だらけってなんだ。もういい。こんなの夢じゃねぇ。只のちょこれいとー、です!
「……それで?これからどーするつもりなんだ?」
木野が耳に生暖かい物を塗ってる気がするが全力でスルーする。桃時と純也もなんだかそんな風だが全力でスルーする。
「もう一度、舐めて綺麗にして差し上げます。」
山下は頬を赤く染めながら、真直ぐな目でこっちを見てきた。すまん。男の上目遣いには全く萌えん。
山下は言い終るか終らないかで、俺の右足の親指を咥え込んできた。
「ちょ、冗談はよし子さん!!やめなさい、全力でやめなさい!!」
俺が叫ぶと、山下はやけにあっさりと口を足から放した。
「………ご主人様…誠や蓮斗やじゅんやんは良くて、俺はダメなんですか…?」
「いや、だからなんで山下までじゅんやん!?」
「もうお前等全員やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
………まあ、そーゆう事があったわけだ。もう一秒たりとも思い出したくないぜ…。
……あれから何があったかなんて聞かないでくれ。取り敢えず、多分皆さんの御想像の通りだ。もうダメだ。終り的な意味でダメだ。
「……で? 俺にそんな気億は無い。あったかも知れんが無い。無いったら無い!!」
舞台は勝ち組男子だけの祭日、白い日も過去ったある日の放課後イン夕暮れの教室。いや、俺帰りたいんだが。
「酷い、ひでぇよ、勇二! 俺達一人一人からじゃ迷惑だって思ったから妥協して勇二にプレゼントしたのに!」
ひでぇのはどっちだ!!!
「お前等ああああああああああ! あれの何がプレゼントですかああああああああああ!! ふざけてるなら死んでくださいいいいい!!」
さようなら!! 今までどうもありがとうございました!
「そ・れ・に!! ありゃ完全にお前等が楽しんでただけじゃねーか!! しかも最後に一人づつディープキ、キ、キ、キ……スさせやがって!!」
因みに山下はやらなかった。まあ奴の良識からではなく、顔が近付いた時点で何故か鼻血噴いてブッ倒れたのだが。何がしたかったんだか。
「ハニーも気持ち良さそうだったやんか。」
「お前がしなかったら帰さんって言ったんだろおおおおおおおおおおお!!!」
桃時テメェ、一番長くやりやがって!! 窒息死するかと思ったわ!!!
…しかし桃時さん、テクニシャンでした! ……もう嫌だ。何てこった、男のキスの上手さを体験して比べる日が来ようとは。
「あー…取り敢えず場所変えませんか? もうすぐ門が閉まってしまいます。」
「え!? 嘘、もうそんな時間!? ゴメン、俺用事あるから帰らなきゃ!」
マジか。よっしゃ! 一人減ったぜ!
「あー、残念。俺もや。」
なんと!! お前もか!
「僕は無いんで、ダーリンと尋貴と3人で帰りましょうか。」
何でもいいから早く帰らせろ。俺見たいテレビあんだよ。
校門で桃時と純也と別れた。…あれ? 俺帰りたいんですが。帰るには純也と同じ電車に乗らなければならないのですが。
「じゃ、いきましょうか、ダーリン。」
「まいりましょう、ご主人様。」
……敬語に囲まれてみた。
つーか、俺の意見とか人権とかは無視なのか。酷いぞ! お前等それでも人間か!
「いや、俺も帰りたいんだが。」
「…どこに行きましょうか…? ダーリン、何処か行きたい場所ありませんか?」
「ご主人様…鞄、俺がお持ちします…。」
はーい、無視ですか。無視ですか! 傷ついたぞ、俺様とーっても傷ついた!
「もう知らん!」
俺はクルッと振り返りその場から脱兎のごとく勢いでガシッ
「行く場所無いんで、折角ですからここからは一番近い尋貴のアパートに行きましょうか。」
「放しなさい木野コノヤロー!」
「えっ! か、片付いてないから無理だって!」
山下は顔を赤くして俯き、でも、とかうう、とか意味が分からん言語を発している。つーか俺は無視か。またか。
「男入れるのに片付いてるも何も関係ないでしょう…。女ですか、貴方は。」
「うう。」
山下は俺と木野を交互にちらちら見て、折れた。
「仕方ない…。」
俺達は、山下の部屋に行くことになった。…いや、俺マジ帰りたいんだけど。母さんキレるって。
ドン。
「うぎゃ!?」
山下の家に行くのに駅を出て歩いていると、顔面になんか当った。つーか当てられた。つーかマジに殴られたような。
俺はぶつかった(希望)奴に非難の目を向ける。
「……あ? なんか文句でもあんのか。」
「……ナイデスゴメナサイ。」
怖い人達キタアアアアアアアアアア!!!
これじゃこっちは迂闊に手を出せねぇ。つーか出したらヤバい。ヤられちゃうよ。いや、殺されるの方の意味で。
「ん? その端っこの、金描の山下か?」
金描!? 菌病じゃなくてか? なんだその変な通り名は。まるで不良だ。
「…ああ? 黙れ。ご主人様に話しかけんな。触んな。」
気付いた時には、山下は既に俺ぶん殴った奴(現実)の胸倉を掴み、般若の如く形相で、……うん。まあ、うん。そうだ、忘れてた。コイツ元不良だった。
「しかもお顔に……! ………殺ス。」
あのー、俺帰っていいですか?
その三十分後。つまり今。取り敢えず俺は困っていた。
腰に抱き付いて甘えた声を出す山下とか肩にもたれて耳元に囁いてくる木野とかまあ普段の悩みはそんな感じじゃないか。……しかしだな、今回はちょっとばかり特殊だ。
「…………。」
……この、並々と詰まれた不良さん達を、俺はどうすれば良いのだろう?
全くもって予想GAYだが、山下は強かった。普通なら「ぎゃはははは何だよご主人様って!」位、相手が言える余裕があって当然だ。しかしだな。
「瞬殺……。」
なんか俺、すげー奴に関わっちまったんじゃねぇだろうか。
「まあ、ひとまず片付きましたし、尋貴の家に向かいましょうか?」
流したー!! ママァ、怖いよこの人達、むしろ日常茶飯事的な空気がムンムンとしてくる!!!
「にしても、貴方方は付いてますね。蓮斗がいなくて。……じゃあ、出発しましょうか。」
桃時何者おおお!!?
…俺は深く追及しないことにした。だって危険なにおいがするんだもん!
……え? だもんとかキモい? ………すまそん。