表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/35

2

「それで、実際問題なにがあったの?」

 芽衣は陽にそう尋ねた。

 聞きたいことがある、と芽衣からの呼び出しを受けた陽は、大学の校舎の屋上で彼女とともに階段に座り、コンビニで買った昼食を食べていた。年末なので大学は開いているが、人っ子一人おらず、がらんとしていた。

「なにって……昨日言った通りさ。ロックフォードの誤認逮捕だよ」

 そう言うが、早口になってしまい、語尾が上ずってしまった。

昨日はインターホン越しで話したから上手く誤魔化せたものの、いざ会って話すと陽は動揺を隠しきれなかった。

「ふーん……」

 じとーと半目になり、芽衣は陽を睨んだ。

「な、なんだよ?」

 もうなんと返されるかわかっていたが、陽は一応そう尋ねた。

「昔から嘘が下手くそよね、あんた」

 やっぱりな。陽は心中そう思いながら、

「悪かったな。俺だって何があったか未だによくわかってないんだよ。頭もまだ痛いし……」

「頭……? ロックフォードの連中になにかされたの!?」

 芽衣は陽の額に手を当てた。

 陽はそれを払いのけつつ、

「バカ。聞くなよ」

「どうしてよ?」

「いつか話すからしばらく待ってろ、と言いたいんだ。整理がついたらすぐに話すからさ」

 陽はそう言って立ち上がった。

 芽衣は呆然としている。

「陽、隠し事にリスクはつきものだからね? わかってる?」

「わーってる」

 陽はそう返事をし、階段から立ち上がって「そろそろ帰ろうか?」と尋ねた。

「先に降りてて。あたしはもう少しここにいるわ」

 芽衣は頭を抱えつつ言った。


                 ※


「何が『安心して生活していい』だよ……。あのロシア野郎……」

 大学の中庭を渡り歩きながら陽は思わず呟いていた。

 昨日、イヴァンに言われたことを改めて思い返す。

 彼らはロックフォード社が極秘裏に造っている人間兵器(ヒューマノイド)を調査しているらしい。なにも、ロックフォード社が最強の人間兵器(ヒューマノイド)、通称『最高傑作(マスターピース)』と呼ばれるモノを製造しているということだった。

 それは、ロックフォード社の秘密データベースにアクセスしていた陽も、初耳の情報であった。

 そういうことでいちいちショックなど受けていられないのだが、陽はそれでも彼らに協力するのに懐疑的だった。

 何せ、彼らは『裏のアメリカ』、『クーデターメイカー』と評されるCIAだ。そんな強大な勢力に加担するなど、下手すれば取り返しのつかない事になるのは陽にも想像できた。

「ロックフォードに一泡吹かせたいのは山々なんだがな……」

「一泡吹かすどころじゃないさ。君の協力次第では、だがね」

 不意に何処かから声が聞こえた。

 顔をあげると、そこにはイヴァンがいた。昨日の禍々(まがまが)しい黒の戦闘服とは打って代わり、深青のジャケットに黒色のジーンズとカジュアルな格好だった。

「イヴァンさん……」

「どうしたんだ? 悪霊でも見たような顔して」

 イヴァンはそう言って自嘲気味に笑った。

「どうもこうもないですよ。どうしてくれるんですか、僕の生活」

「ふむ。その様子だと上手く行ってないようだな? でもネットワークを駆使して、俺らのチームに志願したのはお前のほうだぜ? 今さら恨み事はなしってことだ」

「そりゃあ、そうですけれど――」

「おい! イヴァン!」

 不意に声がし、イヴァンと陽はそちらの方に振り向いた。

 若い黒人男性が手を振りながら、こちらに向かってきた。

「彼はどなたで?」

 陽がイヴァンに聞く。

「レイ・マクドネル。俺の相棒だ」

 イヴァンが陽にそう説明し、

「彼は宇佐美陽。例のハッカーだ」

 とレイの方にも紹介した。

「よぉ!」

 レイが握手を求め、手を差し出す。

「よろしく、レイ・マクドナルド」

 陽が手を握りながら挨拶をした。

「マクドネルだ」

「マクドナルド」

「マクドネル!」

「マクドナルド……。なんだかファーストフード店みたいな名前だね?」

「わかった、もういい」

 レイが諦め、そしてイヴァンの方に向き直った。

「イヴィー、そろそろ時間だ」

 と言い、

「フェネクスがそのガキも連れて行けと言っている」

 と陽の方を見やった。

「さっそく任務なんですか?」

「あぁ。君に任せてもらいたいのは、昨日言ったマスターピースのデータについてだ」

 イヴァンが周囲を確認し、尾行している者が居ないか詮索すると、陽の方に顔を寄せ、

「自宅に戻って準備しておけ。午後一七時に、六本木ヒルズの○○公園で会おう」


                 ※


芽衣は暫く屋上で考えに浸っていたが、考え続けていても埒が明かないと思い、階段を使い中庭に降りた。

階段を降りてすぐ手前のベンチに陽は座っていた。

「陽、ごめんね。待ったでしょ?」

 陽は芽衣の方を振り向くと、

「いいや。大丈夫よん」

 と言った。

いつもの冗談めかした口調は相変わらずであったが、その顔には明らかに暗い表情が浮かんでいた。

「どうかしたの?」

 芽衣が聞く。

陽は立ち上がると、

「なんでもない。ただの考えすぎだよ。行こうよ、芽衣」

 と言って、中庭の出口に歩いて行った。

 その背中が、遠く離れていく気がして、芽衣は不安が湧き上がってくるのを感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ