鶏・草原・ココア
少年の好きな食べ物は鶏肉だ。
そして将来の夢は、巨大な鳥を養殖して、それを食べることだ。
そのためには大きな敷地が必要となるため、現在大学院でその品種改良の研究をしながらアルバイトで資金を貯めている。
研究の成果として、放し飼いのほうがわがままボディに育つということがわかってきたため、買った土地は全て草原として整備する予定だ。よく『山を買う』的なもので『草原を買う』というような発想だ。
どのくらい大きな敷地になるかはわからないが、そのへんのドームを3つ分もあれば足りるだろうと考えている。場合によっては海外に移住することも考えに入っているとか。
『金魚は、水槽の上に明るめのライトを取り付けることによって食欲が増し、巨大化する』
そういう情報を得た少年は、ニワトリ小屋の天板にライトをつけたりして成長を促そうとしたが、明るすぎて睡眠がとれないらしく、人間で言うところの『睡眠不足』になってしまったようで、弱ってしまった。また失敗である。
研究とは、失敗を積み重ねて成功するものであるため、この程度ではめげない。
小学校のころには、ほとんどの人がめんどくさがっていた飼育係を率先して引き受け、ニワトリと他の生物を比べては、どうすれば成長を促すことができるのかということを、その当時にできた手段で色々と試したりもしていた。
中学・高校では、生物の先生と共に部活動で様々な研究や試行錯誤を試していた。部の全国大会では、常に上位を狙える位置に入り込んでいた。
そんな少年を他人は『変人』と呼んでいたが、当の本人は全然気にすることはなく、むしろ余計なことに時間を取られなくて楽、とまで思っていた。
大学へは、部活動での成績が評価され、特別推薦という枠で進学を決めた。
そして将来の夢に向けて、鳥に関する生態系から育成、繁殖、改良などの様々な手段を研究するグループに参加することとなった。
とある教授の下で共に研究することになった少年は、今日も大学の研究室で、鶏肉の次に好きなココアを飲みながら研究に励むのだった。