19話
19話
緊急事態で書き物が途中になってしまった。
一遍に全部書き切るのは難しい。毎日少しずつ書いていった方が良いかもしれないな。
それよりも気になった物がある。
クリシュナのスキル欄には潜影というスキルがあった。
潜影って何だろう?
「ねえ、クリシュナ。潜影ってどんなスキルなの?」
「ん~?せんえー?」
「そう、潜影」
「じゃあやってみるの!おそとにいくの。」
クリシュナが洞窟の外に向かって元気に駆けていく。
さっきまで死にそうだったようには見えないな。出鱈目過ぎる。
「ごしゅじんさま、のわ、はやくくるの!」
動かないでいたら怒られた。
いつの間にか、ノワールがノワって呼ばれてる。ノワールって言いにくいのかな?
「あるじー、のわー、おそといこー」
レイラにも呼ばれてしまった。仕方ない行こう。
「はいはい。今行きますよ。行こうノワール」
「そうですね。行きましょう」
レイラの後について洞窟の外に行く。
洞窟の外に出て先に出たクリシュナを探す。
あれっ?いない?
クリシュナが外に出てからほとんど時間はたっていない。
それなのにどこを見ても姿が見えない。
かくれんぼか?
目視では見つからないので気配感知を使うことにした。
暗視と同様に気配感知の索敵範囲も向上している。
見つけた!正面の木の根元だ!
正面にある木に近づいて根元を見る。
クリシュナはいない。何にもいない。
何もいないのに反応はある。なんで?
おかしい。他にはクリシュナっぽい反応がない。
「クリシュナがどこにいるのかレイラには分かる?」
「うー?わかんなーい」
わかんないのか。
ノワールなら分かるかもしれない。
ノワールに聞こうと思いノワールの方に視線を向けかけた時だった。
木の影の中から何かが飛び出してきた。速い!
完全に油断していた。何かが俺の顔に向かって飛んでくる。
小手で受けとめようと右手を出すが間に合わない。
ドゴッと鈍い音がして、額にハンマーで殴られたような衝撃を受けて後方に吹き飛ばされる。
2メートルほど吹き飛ばされて背中から地面に落ちた。
かなり痛い。痛いが態勢を整えないといかん。
咳き込みながら立ち上がり腰の得物を構え飛んできた物体を見る。
「いたいのー。おかおいたいのー」
そこには痛い痛いとゴロゴロ転がるクリシュナがいた。
痛いのは俺も一緒だ。
この世界に来て最初のダメージが味方の攻撃とは思わなかった。
「大丈夫ですか?」
「まあ大丈夫。かなり痛いけどね。それよりクリシュナは大丈夫なのか?」
「いたいのー」
まだ転がってる。なんかものすごく痛そうだ。
自分から突っこんできたくせにダメージ受けすぎじゃないか?
かわいそうなのでポーションをかけてやる。
あっ起き上った。
「いたくなくなったの。ありがとなの」
「ありがとなのではありません!御主人を攻撃するなど何を考えているんですか!」
なんかノワールがめちゃくちゃ怒ってるよ。
毛が逆立ってる。
「ご、ごめんなさいなの。びっくりさせようとしただけなの」
「のわ、こわいよー」
レイラまでビビッてるよ。
レイラを抱き上げ撫でながらノワールに言う。
「そんなに怒らなくてもいいんじゃない?まだ子供なんだしさ」
「御主人は甘すぎますよ。子供の間にしっかり群れの順位を覚えさせなくてはいけません。それに一歩間違えば御主人が死んでたかもしれないんですよ!」
俺に毎朝フライングボディプレスをしていたノワールの言うことでもないような気がする。
「そうかもしれないけどさー。うーん……とりあえずノワールに任せるけど、あんまり強く言い過ぎたらダメだよ」
「わかりました。お任せ下さい」
かわいそうだけどクリシュナのことはノワールに任せる。
説教を続けるノワールから離れてレイラを地面に下ろした。
一瞬のことでよくわからなかったが、クリシュナが影から出てきたように見えた。
レイラも同じことが出来るはずだ。
「クリシュナが何かしていたみたいだけど、レイラにも同じことが出来るのかな?」
「うん。できるよー」
そう言うとレイラは俺の影の上に立つ。次の瞬間にはレイラの姿が消えた。
消えたというよりは、落とし穴に落ちるように影の中に吸い込まれていった感じだ。
クリシュナの時と同じように気配感知を使うと反応がある。やはり姿は見えない。
影を触ったり叩いたりしてみるが違和感はない。へー、面白い。
「レイラ出て来てくれる?」
「うにゅ?あるじー、すごい?すごい?」
影から顔だけ出したレイラが言う。
体の一部だけ影から出すことも出来るのか。生首みたいだな。
「レイラはすごいね~」
とりあえず撫でながら褒める。
「えへへー。レイラすごいー」
どんな影にも入れるのか?
影を叩いても平気そうだったから攻撃も効かないのかもしれない。
自分の影を強めに叩きながらレイラに聞く。
「これは痛い?」
「いたくないよー」
やはり痛くないようだ。
「影の中にいる時は攻撃を受けないのかな?」
「さっきのはへいきー。すきるはだめー」
スキルはダメ。スキルの影響は受けるってことか。
気配感知には反応があったもんな。なるほどね。
潜影が無敵なら、この子達の親が簡単に死ぬわけないもんな。




