プロローグ
プロローグ
「ここは……どこなんだ?」
正面には巨大な水たまり。海か?いや……うっすら向こう岸が見えるから湖か。
右を見れば延々と続く砂浜。左側には岩壁がある。高さは数十メートルは軽くあるだろう。
一番の問題は後ろを向いた時だった。
そこには黒い大きな狼がいた。さっきから動物の息遣いみたいなのが聞こえてると思ったんだよな。
狼との距離は2メートル。どう考えても逃げられない。
いつもと同じ朝だったはずなのに、なんでこんな事になってんだ?
朝起きた所から思い出してみよう。
ピピッピピッピピッ……。
目覚ましの音が聞こえる。もう5時か。
ピピッピピッピピッ……。
ぼふっ。
「イタッ!」
いつも通り俺の布団の上に落ちて来た愛犬ノワール。
慣れてはいるが結構痛い。
はぁ、もう起きなきゃならんのか。
散歩行きたいのは分かるんだけどもう少し優しい起こし方をして欲しい。
「ねえノワール、いつも言ってるんだけど、テーブルから俺の上に飛び降りるのやめてくれない?」
「ワンッ!」
「いつも返事はいいよね。全くやめないくせに!まあいいや、用意するからちょっと待ってて」
まず目覚まし止めて布団から起き上がり……やばい、11月ともなると布団から起きるのも辛すぎるな。さぶ過ぎる。
まあ夏なら夏で、暑過ぎる。とか文句は言うけどね。
そんなことより着替えだ。
用意しておいた服に着替える。
よっしオッケー。
ノワールに朝ごはんとぬるめのお湯をあげる。
ノワールが食事している間に、仏壇に線香と水を供えて両親に朝の挨拶をする。
そしてコートを着て時計をつける。
次に食事の終わったノワールにリードをつけて、いつもの散歩用リュックを持った。
「じゃあ行こうかノワール」
「ワンッワンッ」
近所迷惑だ。
訴えられたら負けそうだ。
注意だけはしとこう。
「早朝なんだからちょっと静かにしようね」
「ワンッ」
うん、分かってないな。
俺はダメ飼い主だな、と反省しながら玄関に向かう。
玄関でブーツを履いて外に出た。
時刻は5時20分か。まだ月と星が見えてる。真っ暗だ。
夏ならこの時間はもう太陽出てて明るいんだけどな。
ドアに鍵をかけて……戸締りよし。
さてどこに行こうかな?
家の近所には結構大きな公園がある。
まずはその公園に行く事にした。
それにしてもウチのワンコは朝から元気だね。
尻尾フリフリ、あっちに行ったり、こっちに行ったり。
ちょっと落ち着いてくれませんかね。
公園に入り広場を歩いて行く。
いつもなら公園内に犬を連れた人が何人かいるのに、今日は1人もいない。
そういえばウォーキングしている人も今日は全然いなかった。
なんでだろ?
普段こんなことないんだけどな?
そんな事を考えながら広場の中心に向かって歩いて行った。
広場の中心辺りまで行くと突然広場が強烈な光に包まれた。
あまりの眩しさにとっさに手で顔を覆い目をつぶった。
そして目を開けた時には冒頭の状態だったわけだ。