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おまけ!!!

 藤村桜の朝は早い。

 毎朝五時半には起床して身支度を整える。

 それから台所に向かい、朝食を作り始める。

 朝食は簡単に目玉焼きとトースト、焼きあがったパンを皿に載せてその横にジャムを置いておく。目玉焼きはそれぞれが好きな具合に焼き上げていく。


 父は完熟、それに少々醤油をかける。この時に醤油をかけすぎてしまうと父は顔を若干顰める、良く見ないと分からない違いだがそこには大きな違いがあるのだ。ちょうど良ければ父は口元に笑みだって浮かべる。

 母も完熟だが醤油が少し多めにする。ここで少しでも少なくなると母は自分で醤油を付け足すのだ。それでは塩分過多になると何度言っても「大丈夫大丈夫」と言ってドパドパかけてしまう。


 そうして二人の分を焼き上げると次に兄の分を作る事にする。ここは勝負の時だ。

 兄が好きなのは半熟。いや完熟と半熟の間の極僅かな違いを求めてくる。これを焼くには卵の黄身の大きさから予測して自信の目と経験から作るしかない。兄に喜んでもらうためにはその一瞬を見極めなくてはならないのだ。

 焼きやがる一瞬を感じ取り桜は一気に目玉焼きをフライパンから皿に移し変える。

 そしてその出来栄えをじっくりと見る。

 形は崩れてないか、黄身は白身の中心に来ているか、どの程度のこげか等々、自分の中で定められている十数目になる項目にチェックを入れていき満足気に一回頷くと桜は皿を兄の席に置く。



「おはよ、今日もありがとうね」

「おはよう母さん」



 そこで母が台所に入ってくる。

 時間をチェックすると六時十分、次の行動に移るのに丁度良い時間帯だ。



「ちょっとシャワー浴びてくる」

「はい、行っていらっしゃい。何を考えてるか分からないけど静かにね」



 シャワーに行くという桜に余り関係のない事を注意する母を置いて桜はそれに返事をせず口に微笑を浮かべながらバスルームに向かっていく。

 桜はさっさと脱衣所で服を脱ぐとそれを若干分かりにくいところに隠すようにして置く、そしてタオルを手に取るとバスルームへと入り軽く髪を洗い身体を洗う。そのまま持ち込んだタオルで身体や髪を拭きながら気配を消し、息を潜める。


 そうやっていると誰かが脱衣所に入って来た。

 桜はその気配の主を探ってみるが、どうやら目的の人物らしい。

 桜は口に大きな笑みを浮かべるがそれを慌てて両手を使って顔をほぐすとタオルで体の前面を隠してバスルームから脱衣所へと繋がるドアを開いた。


 桜は考えていた、どうやったら自分の事を妹としてではなく異性として武が見てくれるのだろうかと。

 その結論は「自分が成長した姿を実際に見てもらう」というモノだった。

 だがしかし、相手の前でただ脱いでさぁ私の裸を見てと言ったのではただの変態の痴女ではないか。兄の好みはそういったものではなく、清楚な人が好みな事は今までのリサーチの結果分かっていた。たまたま掃除に入った兄の部屋でそういう本があったので興味本位で見てみると女性らしい体型ではなく、スレンダーな方がいい事も把握済みだ。

 その点で言えば自分は合格ラインだろう。若干悔しい気もするが好きな相手の好みの体型なのだからと桜は自分自身に言い聞かせた。


 さてここまで相手のせいへ(ゲフンゲフン)事を調べたのだから後は見せるだけ。しかしその見せ方というのに桜は苦戦した。


1.武が帰ってくるちょっと前に自室のドアを少しだけ開けて中で着替えてみた。覗かれる事は無かった。


2.夏場にタンクトップにショートパンツという薄着で行動してみた。チラ見すらされなかった。


3.プールに誘って水着を着た。桜がナンパされすぎて二人とも疲れ果てた。


4.ミニスカートを着てソファーの上で体育座りをした。何事も無いかのように隣でテレビを見始めた。


5.ゴキブリが出たと武の部屋に下着で飛び込んだ。桜に目もくれずに桜の部屋に飛び込んだ。これはこれで嬉しいが目的と違う。


 こうして間間にチラリズムを盛り込んだりしてイロイロ試してみたのだが兄である武には効果が見られなかった。

 しかし今回は違う。

 タオルは存在しているが自分は裸だ。

 それにもし相手がこれでもダメだった場合、彼女は最後の手段としてこのタオルを持っている手さえも離す気でいた。



(今回はもらった!)



 桜はこの後に待っている武との濃厚で熱々で甘甘な時間を思い浮かべてしまい口元を緩めながらも脱衣所へと飛び込んだ。

 そして目の前には目的の人物である武。

 しかも天が彼女に味方をしたのか武も丁度良くこちらを向いたではないか!

 今が今までで最大のチャンスである。


 桜は少し息を吸い込むと口を大きく開けてそれを腹から押し出すようにして



「きゃ「どうわぁ!」ぁぁぁ?」



 大きな悲鳴を上げようとしたのだがその前に武が大きく声を上げて後ろを向く。

 その武の思わぬ声に驚いてしまい桜は悲鳴を上げそこなってしまった。

 そしてそのまま二人は止まったまま動かない。時間だけが無常にも過ぎて行ってしまう。


 桜は桜でどうして良いのか分からなくなってしまい混乱していた。

 そもそもこういった場面の場合には女である自分が悲鳴を上げるべきなのだ、それにも関わらず自分の悲鳴を遮り、自分から視線を逸らすとは、まるで自分の方が変質者の用ではないかと桜は考える。


 武は武でなぜそこに桜がいるのかが分からず混乱した。

 タオル一枚で出てきた妹は何時もと違って若干頬などが上気していて赤くなっていたり、髪も濡れていて色っぽくなっていたりといつも最近大人っぽくなってきて自分の好みど真ん中になってきた妹を視界に入れないように努力してきたというのにそれに拍車がかかった姿を見せ付けられて武は普段見せないシスコンっぷりを脳内で存分に発揮していた。



「と、とりあえず服を着てくれないか」

「う、うん」



 桜は服を着ながら今回の武の反応について考える。

 今までにない反応ではないかと。

 今までであれば自分に対して反応をするということは一切無かった、それなのにも関わらず今回は不本意ながらも悲鳴を上げながらそっぽを向いた。

 これは照れていると考えるべきなのだろう。

 そう考えると桜は段々と上機嫌になっていく。


 服を着終わり、武を自分の方に向かせると武は綺麗に土下座をしながら謝ってきた。

 それにちゃんと脱衣所で服が無いかどうか確認していから入ってきてよねなどと軽く怒った振りをしながら終らせると怒った体を振り撒きながら朝食の場に入っていった。

 今日は何時もよりも朝食がおいしそうだ。



「アンタはおかしい」



 朝、高校に行ったときに友人に今朝の事を話すとそう言われた。

 一般的だと思うんだけどな。

~お詫び~



 まことに勝手ながら第一話からすべてを書き直すことにしました。

 いつ頃になるか分かりませんが一旦更新中断しようと思います。



 因みに今回の話は適当に考えていたものを活動報告に書き起こしたものをこちらに掲載しただけです。


 たまに活動報告でも短編やら思いついたネタやらを書いていたりしますw

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