定数削減法案で「比例代表31減案」と共に出された「サンラグ式」とは何か?
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。今回は衆議院の議員定数削減が当初の45減から31減になったことと、新しく比例代表の議席配分方法である「サンラグ方式」について語っていこうと思います。
議員定数削減は維新の会の「改革のセンターピン」と言われることのようなので必ずこの法案は成立する公算が高いものと思われます。
質問者:
自民党と維新の会との約束で「45議席減」のはずなの、にどうして「31議席減」の案が浮上しているんでしょうか……。
また、衆議院で3分の2以上持っているので、自分たちの都合の良い案で再可決すれば良いのに意外としない印象がありますけどそれはどうしてなんでしょうか……。
筆者:
これは例年秋にある「自民党総裁選」との関係があると思います。
ここで再可決を連発してしまうと、「独裁政治」と言われてしまい、総裁選で高市総理が再選できないリスクがあるんです。
そのために、衆議院再可決と言う「伝家の宝刀」は来年の総裁選まで抜かない可能性が高いと思っています。
「31議席減」と言う人口減少数に応じた議席減数であれば、国民民主党が参議院で賛成に回れば大きく前進するので有力視されているという事です。
https://www.sankei.com/article/20261006-VCUDNINBVJIW7GZWBZA2YM2GMQ/
一方で維新の会が「45議席減」に拘りそうな雰囲気があるので、この辺りの調整が必要なものと思われます。
https://www.asahi.com/articles/ASVB62VKYVB6UTFK00FM.html
質問者:
なるほど……。再可決は総裁選まで事実上の「お預け」でそれまでの間は野党との調整が大事という事ですか。
筆者:
野党の方が議席減少率が大きいので反発の声が強いわけなのですが、それを取り込む工作というのが自民党が行い続けているという事ですね。
今後は野党がどのラインで多く賛成がもらえるのか? そのラインを探り続ける作業だと思います。
ただ、維新の会もせっかく大臣ポストを貰ったのにここで反対するの? と言う感じもするので維新の会の方が折れる可能性の方が遥かに高いと僕は思っています。
◇「サンラグ方式」とは現行の「ドント方式」とどう違うのか?
質問者:
比例代表の按分方法としてサンラグ方式って全然聞き馴染みが無い用語なんですけど……どういう議席按分方法なんですか?
筆者:
20世紀のフランスの数学者アンドレ・サン=ラグ氏にちなんで名づけられたもののようで、
現状のドント方式は議席を割る除数が1から順に増えていくのに対し、サンラグ方式では1,3,5、7と言う感じで増えていくために規模がより小さい政党に議席が配分される可能性が上がるとされています。
北欧などの地域で比例代表制度として採用されていることが多いようで、日本にも採用がこの夏から検討されていました。
具体的にどのような差があるのか? について、サンラグ方式を提案しているチームみらいのサイト https://team-mir.ai/artifacts/senkyo/proposal.html から画像をお借りしますが、
このように、3議席目を配分する際にドント方式ではA党は166に対して、サンラグ方式では100になっているので他の正当に配分しやすくなるのです。
※新聞などでは「サンラグ方式」と表記されているので本稿もそう書いていますが、「サン=ラグ方式」と表記されることもあります。
質問者:
野党の議席配分が増えるのであれば問題無いのではありませんか?
筆者:
ところが、そもそものお話として比例を減らしている時点で多少与党の議席数に不利になったとしても与党の方に利益があるんですよ。
こちらは45議席減次点の試算ではありますが静岡朝日テレビが試算した議席数のドント方式とサンラグ方式の比較です。https://news.yahoo.co.jp/articles/dc442ce78503377c8435bda69bf186787b6654b3
実際の26年2月の衆議院選挙の結果の与党議席占有率76%と比べて、ドント方式は80%、サンラグ方式では79%と上がっている状況には変化がありません。比例代表を減らすことがそもそも問題なんです。
質問者:
小選挙区で自民党が圧倒的に強い構図が変わらない限りは議席占有率は変わらないという事ですか……。
筆者:
そもそも小選挙区制度は僅差で負ければ全て「死票」になり民意が反映されなくなります。
それを反映されやすくするのが比例代表制度です。
とは言え小選挙区制度も人口による区割りになっているので、将来的には人口が減っている地域はこれ以上減らすと1議席も持てないような様相になってしまいます。
田舎の声が届かなくなればより過疎化が進むでしょうし、田舎の社会問題は解決しないでしょう。
質問者:
費用削減効果も45議席だと30億円ぐらいしかないようですからね……。
筆者:
皆さん居眠り議員や働いていない議員を落選させたいと思っているでしょうけど、
そう言う人に限って選挙だけは強かったり、比例代表名簿で上位だったりしますからね。
議員定数は感情論で語るのではなく民主主義がどうなるのか? と言う側面で考えて欲しいですね。
◇議席減+サンラグ方式で一番割を食うのは参政党だが……
質問者:
ちょっと先ほどのサンラグ方式の議席配分の画像で気になったんですけど、参政党さんは45議席減った場合、元の15議席からドント方式では9議席、サンラグ方式では7議席や6議席にまで減るという事じゃないですか……。
筆者:
要は、比例代表の各地区ブロックの2議席目に当選していた方が落選してしまうという事です。それがギリギリであった地区が多く、この制度の割をより受けているという事です。
またチームみらいがこの方式を提案したわけですが、参政党と同規模でありながら減る議席数は最小限にとどめています。1人しか当選しない地区が多かったためだと思われます。
自らの状況に有利な制度を提案しているわけですから”上手くやっているな”と言う印象がありますね。
また、参政党支持者と言うのは高市政権を支持する傾向にあるので参政党が当選しにくいとあれば、自民党に投票する可能性と言うのも出てくるんです。
人は誰しも「自分の票を死票にしたくない」と言う思考で行動したいですからね。
https://www.asahi.com/articles/ASKBN562SKBNUTIL03N.html
自民党としては参政党とは支持者が被っているために、力をつける前にここで叩き潰しておこうという考えがあっても不思議では無いです。
参政党が正義とも思わないですし、国粋主義的なところは評価できないんですけど、それでも「ライバルを潰すための露骨なプラン」だなという印象がありますね。
質問者:
なるほど……もしかするとそいう言う発想でサンラグ方式が採用されるかもしれないという事なんですか……。
筆者:
結局のところ選挙制度や選挙資金に関することは議員自身が決めることが出来ますから、政権側に有利になるように制度設計されても仕方がないことだと思います。
そもそも、参政党も他の党と並んで「審議拒否」とかいうしょうもないことを26年の通常国会でやらかしていますからね。
自らの存在価値を否定する愚行をしでかしているわけですから、不利な制度であっても甘んじて受け入れるしかないと思いますし、反対する主張の正当性を国民から評価される可能性も低いと思います。
質問者:
審議拒否は本当に愚かなことだと筆者さんは何度もおっしゃっていますからね……。
※審議拒否についてはこちら https://ncode.syosetu.com/n5921mk/
筆者:
国民が法案の問題点を知る機会が野党によって減らされ、奪われているわけですからね。
愚行以外の何者でもないでしょう。与党のやり方に問題があろうとも国会を運営しているのが与党な以上、その範囲内でやるしかないと思いますよ。
しかし与党も維新の会が議員定数削減が「改革の一丁目一番地」だと思っている時点で極めて低レベルで、これを与党にしなくてはいけない状況も鑑みると「政治家全体が終わっている」と言わざるを得ないと思います。
むしろ、議員数が減れば国民の声が届きにくくなるので、その点は本当に間違いの無いことです。
ですが、野党がその正当性を主張することを自ら愚行を続けることでアピールしきれていない――与党も野党も酷すぎるから日本が良くならないのだという事を如実に示している一連の流れだと思いますね。




