運命じゃなかった二人は
あ、佐々木さん。」
「ん、何?」
「急なんだけど、今日の放課後に委員会の集まりやるらしいんだ。大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。何処?」
彼は同じ委員会の横井君。
今年初めて同じクラスになって、同じ委員会になって。
今まではあんまり印象のない人だったけど、一緒に仕事をしてみると彼は凄くいい人だった。
あまり社交的とは言えない、友達のいない私にも気さくに話しかけてくれて。今ではその縁で何人か友達ができた。私の学校生活を明るくしてくれた人。
気づけば私は自然と彼に惹かれ始めていた。
「横井君は休みの日とか何してるの?」
「そうだなあ、最近だと釣りにハマってるんだ。興味なかったんだけど親父に無理やり連れていかれて、やってみたら結構面白くてさ。」
「佐々木さんって字キレイだよね。」
「え?そう?あんまり言われたことないよ。」
「そうなの?なんか凄く読みやすいんだよね。」
他愛ない会話。もう一歩進んでみたいような気もするけど、私には今くらいの関係が心地いい。
このままの関係が続けばいいのに。そしていつかもう少し進んだ関係になれたらな。
私が誰かのことをここまで想うことは初めてだった。だからこれはきっと運命なんだ。
そんなことを思っていた私は、今思えば呑気だった。
確かに横井君は目立つタイプではない。恋愛という意味で競争の激しい人ではないと思う。
でも、私ですら彼の良さに気づいたんだ。
「佐々木さん、横井君の話、聞いた?」
「横井君がどうかしたの?」
「横井君、菅井さんと付き合い始めたらしいよ。」
「え?」
菅井さんはクラスの中心にいるようなタイプの女子。明るくて、社交的で。勉強はあまりできないみたいだけど、先生とも仲が良くてよく喋ってる。
成績がいいだけの私なんかよりずっと先生にも気に入られている。
可愛くて、友達も多くて。
私にとって雲の上のような人。
そっか・・・、横井君、菅井さんと付き合ったんだ。
嫉妬、なんて感情はわいてこない。だって菅井さんはとても素敵な人なんだもん。私なんかが嫉妬するなんて滑稽だ。
それから数日後、横井君と菅井さんが一緒に下校するところを見かけてしまった。
私はそれを見て、諦めを通り越した感情に襲われた。
だって二人はとってもお似合いで、まるで運命で結ばれたみたいに見えて。私なんかが入ることなんてできないって、わかっちゃったから。
私の初恋は、こうして終わりを告げた。自分自身で終わりを認めたんだ。
それから数カ月
横井君と菅井さんは色々あって別れたらしい。
横井君は私の好きだった横井君とは少し変わってしまった。
女の子の扱いが上手くなったって友達はみんな褒めてる。「扱い」か・・・。
優しくて気さくなのに、どこか女の子に遠慮があったあの横井君はもういない。
菅井さんを知って、横井君は変わってしまった。
今、菅井さんはサッカー部の谷崎君と付き合っている。
谷崎君はよく喋る積極的な人でクラスの中心的なグループの一人。
二人はまるで運命に祝福されているようにお似合いに見える。
ねぇ、どうして?
どうしてあなたは運命に愛されているの?
どうしてあなたは、彼を殺して、私を絶望させて
そんなに笑顔でいられるの?




