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梟の懐疑  作者: 蛸屋 匿
第一章 神殿
1/5

1 生まれ直して

 ――また、道を外した。

 体を貫かれた感覚を最後に、意識は浮上する……。


 繰り返される夢は、三文小説のように薄っぺらい。

 くだらない夢を見せられているうちに、赤子の中に自我が芽生えた。自分が赤子であることを客観的に理解することが可能になった。

 それを機に、夢は変わる。次の夢で、自分はフクロウだった。限りある自然の中で生きていたのだが、捕らえられ、生まれ故郷より遠い場所で売りに出された。人間に買われたあとは狭いマンションの一室で暮らすが、ストレスで死ぬ。なんて哀れな人生か。


「あぅ」


 大きく腕を伸ばすと、赤子の手が見える。人間として生まれたことに安堵しつつ、辺りを見回した。石造りの牢屋には、十人ほどの子供がいた。己は、その中で最もおさない。生まれて一年ぐらいの赤子だった。

 子供たちは受動的で、もっと言えば目が死んでいる。自我が生まれた赤子は、何度か接触を試みたのだが、成果はあがっていない。

 また、牢屋にやってくる世話係との接触も、失敗に終わっている。粗末な食事を用意するだけで、人間らしい情は見当たらない。


「……」


 これでは、フクロウの記憶と何も変わらない。まだ夢の中の方がましと思うほどに。あの夢のように『ストレス』で死ぬのではないか? と考えつつ、自分も受動的になれば、四年という月日が経過した。



 カーン。

 競売人が打ったハンマーの音で、彼は目覚めた。辺りを見て状況を把握する。どうやら、四年が経ち、ある程度の成長をしたことで売りに出されたようだ。あの空間は、人身売買の商品を置いておく倉庫のような場所だったのか。どうりで、子供の入れ替わりが激しいわけだ。お粗末な環境にも納得がいった。

 ――胸くその悪い場所だな。

 冷静に考えながら、始まってしまったオークションを見守った。


「本日の目玉商品は、禁色をまとった少年になります! 薬の投与はなし。躾はなくとも歯向かうことを知らない、無垢な子供で――」


 つらつらと並べ立てられる言葉を聞きながら、会場を見回した。中は全て石造りとなっており、中心に商品(自分)と競売人の立つステージがある。薄っすらと見える客たちは、同じようなローブをまとっていた。商品である彼の紹介を終えると、次は値段を刻み始めた。一五〇から始まり、二〇〇、二五〇と叫び続ける競売人の喉は震えていた。興奮で赤くなった顔は狂気的でもある。

 金額は留まるところを知らず、競売人が酸欠で倒れるんじゃないかと思った頃、ようやく買い手が決まった。金額は七〇〇を少し上回ったぐらい。その桁は……今、考えることではないだろう。

 この先にあるのが、さらなる地獄だったとしても、ストレスで死ぬだけだ。そんな風に考えていた彼は知らない。最後の夢が、彼の人生を指し示すことを。終わるにはまだ早いということを。


どうぞよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

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