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アンナの正体

「では、お嬢様。本日より学園に通われますので、こちらへどうぞ」


 促されて馬車に乗り込むと、間髪入れずに妹も乗り込んできた。

……うん、やっぱり並ぶと分かる。


 私が“薔薇”なら、アンナは“小動物”。

守ってあげたくなる系の、計算された可愛さだ。


「お姉さま、おはようございます。

今日も……けばけばし――いえ、とても素敵ですわ!」


……今、ケバいって言った?

言ったよね?


空耳?

いや、空耳アワーでも今のはアウトじゃない?


あれ?

アンナって、こんな性格だったっけ?


 確か、乙女ゲームでは清純無垢なヒロイン枠。

男女問わずチヤホヤされて、天然で無自覚に好感度を上げる――

そんな設定だったはずなんだけど。


「お姉さまは、本当にレン様とご結婚されるおつもりなのですか?

正直に申し上げて……お二人は、まったくお似合いではありませんわ」


……はぁ?


可愛い顔して、よくそんなこと言えるわね、この女。


「アンナは、レンに気があるの?」


「別に、そういう意味ではありませんわ。

ただ……同じポーツ家の人間なら、私の方が相応しいのではないかと疑問に思っただけですの」


ねぇ。

あんた、本当にヒロイン?

それとも性悪令嬢の間違いじゃない?


別に私は、レンとアンナがくっついたところで痛くも痒くもない。

むしろ断罪回避できるなら大歓迎なんだけど。


 なのに、ここまで露骨に牽制してくるとは……。


「じゃあ、レンとアンナが結婚すればいいんじゃない?」


私がそう言った瞬間、アンナは目を見開いた。


そんなに驚く?

だって私は、断罪を回避できれば万々歳だもの。


アンナがレンを欲しいなら、婚約者なんて即辞退しますけど?


「な、何を仰っているのですか?

お姉さまは……レン様がお好きですわよね?」


「うーん。

好きってほどでもないわよ?

アンナが欲しいなら譲ってあげるわ。

私のお古で申し訳ないけど……ふふっ」


思わず口角が上がる。


 困惑した顔をするアンナを見て、内心スッとした。


あのね?

あんたみたいな小娘に負けるほど、私は甘くないの。


 知ってる?

私の中身、三十路のおばちゃんだから。

場数が違うのよ、場数が。


「お姉さま……痩せ我慢は体に悪いですわよ?

いつもレン様にくっついて、離れないではありませんか。

お好きな気持ちを隠しても、誤魔化せませんわ?」


いやいや、誤魔化してないし。


むしろこれからはレンを全力で避けて、

学園生活をエンジョイする予定なんですけど?


何なら、アンナに丸ごとくれてやるわよ。


「とにかく、私の代わりにアンナがレンと結婚して差し上げて」


 アンナはプルプルと肩を震わせながら、私を睨みつける。


「……レン様は、お姉さまには勿体ないですわ」


はいはい。

要するに、レンを狙ってるってことね。


……これ、このままいくと。

私、やっぱり断罪される運命なんじゃない?


   ◇ ◇ ◇


 学園に到着すると、アンナは馬車を降りた途端、

急に瞳を潤ませ、わなわなと震えだした。


「お姉さま……申し訳ありませんでした……」


え?


ポロリ、と一粒の涙を流しながら、突然の謝罪。


 私は思わず、ポカーンと立ち尽くした。


……え、なにこれ。


もしかして――

これが“苛めイベント”ってやつ?


私を悪役に仕立て上げる、断罪ルートの布石!?


 一人で盛り上がり、健気ヒロインムーブを続けるアンナを

半ば呆然と眺めていると、背後から聞き慣れた声が響いた。


「――何をしているんだ!」


……あ、来た。


断罪イベント、第一幕開演の音がした気がした。


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