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レンの後悔

レン side


 ……はぁ。

とうとうケイゴとジュリアンは婚約してしまった。


 今さら後悔したって遅い。

そんなこと、分かりきってる。

それでも――もし、あの頃に戻れるなら。

婚約していた頃に戻れるなら、今度こそ絶対に手を離さないのに……。



   ※※※※※


「……ん? あれ? ここ、どこだ?」


「お目覚めでいらっしゃいますか、レン様。

本日はポーツ家のジュリアン嬢との初顔合わせでございます。

どうか大人しくなさってくださいませ」


 執事のヤン爺が、相変わらずの長説教を始める。

……いや、ちょっと待て。


 ヤン爺って、確か三年前に亡くなって――

っていうか、目の前のヤン爺、妙に若くないか?


 違和感に気づいて、自分の顔をペタペタ触る。

嫌な予感がして、鏡を見る。


……は?


「俺、若返ってる!?」


「レン様、今さら何を……七歳でいらっしゃいますよ?

ご自分の年齢も分からなくなるとは、情け――」


「ヤン爺! このままだとジュリアンとの顔合わせに遅刻するぞ!」


「なっ!? そ、それはいけません!」


よし、説教回避。


   ※※※※※ 


「おっ、ジュリアン! 久しぶり!」


 ……怪訝な目で見られた。


 あ、そうか。

この時点じゃ、まだ俺たちは初対面だったんだ。


 それにしても――

ちっちゃい頃のジュリアン、可愛いな。

魔女メイクもドリル縦ロールもしてないし。


「レン様……私とお会いしたこと、ありましたか?」


「いや、初めて……かな?」


 自分でも歯切れが悪いのが分かる。

幻滅されたかもしれない。


「なぁ。お前、将来は俺と結婚しろよ」


「……はい?

私たちは将来を誓い合う運命だと、そう言われておりますが……」


 嬉しくて、胸がじんわり熱くなる。


「ケイゴって奴からは逃げろ。いいな?」


「えっ、ケイゴ様……?」


「お前と結婚するのは俺だ。

ケイゴは悔しそうに見守る役だからな!」


 あまりにも突拍子のない話に、完全に困惑している顔だ。


「……でも、レン様。

私、貴方の婚約者に選ばれて……とても嬉しいです」


 その一言で、全部が報われる。


「ジュリアン。俺は、お前をずっと愛するよ」


 我ながらマセガキ全開だと思う。

ジュリアンは真っ赤になって俯いた。


「……私も、レン様を愛しますわ」


 ――その瞬間。


 胸がいっぱいになって、気づいたら涙が溢れていた。


「えっ!? レン様、どうされたのですか?」


 突然、耳鳴りがして、頭が割れるように痛む。

気づけばベッドの上で目を覚ましていた。


……夢、か。



   ◇ ◇ ◇


 ……そして、今日は結婚式当日の朝。


 今日からジュリアンは、俺の手の届かない場所へ行く。


 ノックの音が響く。


「レン様、ジュリアン様のお支度が整いました。

ウエディング姿、ご覧になりますか?」


 少しの緊張と、どうしようもない虚しさを抱えたまま頷く。


「……馬子にも衣装、だな」


「少しはお世辞でも綺麗って言いなさいよ!」


「相変わらず勇ましいな。

ケイゴを尻に敷きそうだよな」


 ギロッと睨まれた。


「最初に会った頃は、もっと紳士的で優しかったのに。

今じゃ悪態ばっかり」


「優しかった? 記憶違いじゃないか?」


「……やっぱり忘れてるんだ。

初めての顔合わせで言ったじゃないですか。

『俺はお前をずっと愛する』って」


 ズキリ、と胸が痛む。

涙が止まらない。


「えっ!? レン、どうしたの?」


「……なんでもない」


 あの時、俺は本当にお前に会ってたのかもしれない。

夢じゃなかったのかもしれない。


 誰も信じなくてもいい。

俺は、時間を越えてお前に会いに行ったんだ。


 ジュリアン――

どうか、幸せになれ。


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