表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/33

婚約者との対面

「たとえお嬢様が誰であっても、私の息子の命の恩人に変わりはありません。

今後は、お嬢様の為にこの身を捧げる所存です」


……重い。

いや重すぎるでしょ、それ。


 ソラの覚悟に、私は思わず背筋を伸ばしてしまった。

だって“身を捧げる”って、最悪の場合、命ごと差し出す覚悟ってことでしょ?


そんなの、ちょっとどころじゃなく困るんだけど。


「ソラ、命は大事にして頂戴!

私なんかの為に身を捧げなくてもいいから!

ただ、いつでも私の味方でいてくれればいいわ。

それで十分……いえ、それ以上よ。貴方は私の友達一号なんだから」


 その瞬間、ソラの顔に刻まれた皺が、さらに深くなった。

感極まったようなその表情を見て、私は内心ほっとする。


……どうやら、本気で仲間になってくれたみたいね。


さて。

問題はここからだ。


これから私は、何をすべきなのか。


「ソラ、とりあえず確認させてちょうだい。

私は今、何歳? 学園には通ってる?

それと……婚約者は、やっぱり第二王子のレン様かしら?」


 乙女ゲームの世界。

その時点で、私の未来には“断罪イベント”が用意されている可能性が高い。


 もちろん、回避できるならそれが一番いい。

でも、物語の抑制力とかいう理不尽な力で、強制的に断罪→追放ルートに入る可能性も否定できない。


 最悪の未来を想定して、今から動いておかないと。


「お嬢様は現在十四歳。半年後に十五歳になられます。

学園には昨年から通われております。

現在は長期休暇中で、来週から新学期が始まります。

レン様とは、お嬢様が七歳の頃から婚約されております」


……なるほど。


 断罪イベントから逆算すると、今はまだ約一年と少し前。

猶予はある。けど、余裕はない。


 レンとは、今のところ表面上は円満。

でも――問題は妹のアンナだ。


 アンナが学園に通い始めた途端、レンはあっさり骨抜きにされる。

そういう展開だったはず。


そして、その妹が学園に来るのが……来週。


 つまり、残された時間は一年程度ってわけね。


どうにかして、私に非がない形で婚約破棄してもらわないと。


……というか、そもそも原因はレンの浮気でしょうが!

それなのに、なんで私が断罪されなきゃいけないのよ。


乙女ゲーム、理不尽すぎない?


「ソラ。

レンって、貴方から見てどんな男かしら?」


え?

と、ソラが思いきり間の抜けた顔でこちらを見る。


「……お嬢様を、政略結婚の相手として見ていらっしゃるように感じます。

ただ……お嬢様は昔からレン様を深くお慕いでしたので。

見ていて、お二人の気持ちに温度差を感じておりました」


……だよね。


嫌われてはいない。

でも、特別でもない。


 私はレンが好きで。

その想いが報われないから、嫉妬して、拗れていく。


まさにテンプレ乙女ゲー悪役令嬢ムーブ。


「……そう。教えてくれてありがとう」


 私が視線を上げると、ソラはどこか悲しそうな顔でこちらを見ていた。


「これからお嬢様は、どうなさるおつもりですか?」


「決まってるじゃない。

レンとの婚約破棄よ」


 ソラは口をぱかっと開けたまま、完全にフリーズしていた。

数秒後、ようやく我に返ったのか、ゆっくりと口を閉じる。


「……お嬢様は、レン様をお慕いですよね?」


「それは……色々あるのよ。

これ以上の詮索は、し・な・い・で・頂戴!」


「あ、そういえば……

レン様からお見舞いのお手紙が届いておりました。

机の上に置いてあります」


「ありがとう」


 机の上の手紙を手に取り、ざっと目を通す。

そして、盛大に溜め息。


快方見舞いの言葉と一緒に、こう書いてあった。


――明日、見舞いに伺う。


……は?


 こっちの都合、完全無視なんだけど?

これだから王族ってやつは……横暴にも程があるわ。


「ソラ。

レン、明日来るって書いてあるんだけど?」


「左様でございますか。

では、すぐに準備を整えます」


 こうして私は、

避けられない“レンとの面会イベント”を迎えることになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ